謹賀新年2020年01月06日

あけましておめでとうございます。
遅ればせながら、新年のご挨拶を申し上げます。

新年早々、ウイルス性結膜炎にかかり、ほとんど目が見えませんでした。いまは、痛みもなく、小さい文字以外はだいぶ見えるようになりました。

本の紹介ー学校に入り込むニセ科学2020年01月14日

 
左巻健男/著『学校に入り込むニセ科学』(平凡社新書)(2019/11)
 
 水にきれいな言葉をかけるときれいな結晶ができで、汚い言葉を帯びせると汚い結晶になると主張する、へんてこりんな偽科学がある。「水伝」というようだ。またEM菌と称する偽科学もある。真偽のほどは定かではないが、安倍首相や明恵夫人はこれらの偽科学信奉者と伝えられる。
 主に小学校教師らが授業の進め方などを自主研究する団体に「TOSS」がある。TOSSは偽科学と関係ないはずであるが、TOSSの主催者・向山洋一との関係で、教育指導に偽科学が入り込んでいる。

 本書では、これらの偽科学がTOSSを通じて、学校教育に入り込んでいる実態を説明している。
 水伝・EM菌・親学自体の説明もある。親学とは、元成長の家活動家で日本会議の高橋史郎氏の提唱する道徳教育論。

本の紹介―韓国併合110年後の真実2020年01月22日

 
和田春樹/著『韓国併合110年後の真実 条約による併合という欺瞞』 (岩波ブックレット NO. 1014)(2019/12)
 
 110年前、日本が韓国を併合したのは不当・不法であるとの見解と、合法であるとの見解がある。韓国政府は不法説を、日本政府は合法説をとっているが、日本の研究者にも不法説は多い。
 本書は、不法説をとる歴史学者・和田春樹氏による、韓国併合の歴史解説。本書は、ブックレットの性質上、一般読者を対象としたものであって、歴史学上の研究論文ではない。
 
 近年、右翼的学者の中には併合の実態を知らぬままに、条約の形式があることをもって、合法であると説明する向きもある。歴史事実を知ることなしに、不法か合法かの結論だけで満足するのでは、あまりに脳がないので、本書によって、史実を知ったうえで、合法・不法の判断をすべきだ。

本の紹介ー不平等ではなかった幕末の安政条約2020年01月28日

 
鈴木荘一、関良基、村上文樹/著『不平等ではなかった幕末の安政条約 関税障壁20%を認めたアメリカ・ハリスの善意』 勉誠出版 (2019/7)
 
日米修好通商条約、あるいは安政5条約は不平等条約であったと小中学校で習った記憶がある。
 実際には日本が課すことができる輸入関税は20%程度と、当時の国際社会では高率であったため、日本にとって有利な条約になっていた。現在でも、関税率は一方的に定めることができるわけではないので、日米修好通商条約で関税率が定められたことが、特に日本に不利益ということはなかった。
 日米修好通商条約では、日本で日本が米国から輸入するときと、日本で日本が米国へ輸出するときの関税が定められ、また、日本に滞在する米国人には領事裁判権があることが定められた。しかし、逆の場合の関税や、米国に滞在する日本人の領事裁判権は定められていない。このため、不平等との指摘も一理あるが、条約締結当時、日本が米国に輸出入する主体となることや、米国に滞在する日本人の存在など考えられなかったので、これらのことが条約に定められていないのは仕方ないだろう。当時、日本には近代的裁判制度がないので、米国人の領事裁判権が定められたのも当然だろう。
 日米修好通商条約では、日本に有利な関税率にすることに成功したが、その後、長州藩の下関戦争敗戦や尊王攘夷による開港延期などの影響で、幕府は改税約書の締結を余儀なくされ、この結果、関税率は日本に不利な5%となった。
 
 本書は、日米修好通商条約締結交渉や、ハリスの態度などの史実を示し、日米修好通商条約が決して日本に不利な条約ではなかったことと、その後の薩長などによる攘夷運動の結果、不利な条約を締結せざるを得なかった状況が説明されている。

本の紹介―国境は誰のためにある?2020年01月30日

  
中山大将/著『国境は誰のためにある? 境界地域サハリン・樺太』清水書院 (2019/12)

 本書は樺太国境の変更と、それに関連した住民の問題を取り扱ったもの。
 樺太は、幕末以降、以下のように領有関係が目まぐるしく変わり、それに伴う住民の移動も起きている。

日露雑居→ロシア領→南北で日露が領有→一時、日本が北樺太を占領→南北で日ソが領有→ソ連領

 本書は100ページ強の薄い本ではあるが、大学の講義のような内容で、文献の記述も豊富なため、より高度な学習のための入門としても便利。
  
ちょっと興味が持てた記述
 日本では『山海経』が<樺太日本固有領土論>の根拠として挙げられることがありますが、その際に挙げられる一文は、実際には『山海経』には見当たりません。(P37)
 樺太について言えば、ソ連、特にサハリン現地の日本政府機関は日本人住民の<引揚げ>には消極的であったと言われています。そのりゆうとしては、ソ連人の移住が進む前に日本人の引揚げだけを先行して完遂させてしまえば、サハリンが一気に過疎地になってしまい、日本が残した各種工場設備やインフラの引き継ぎができなくなってしまうおそれがあったからと言われています。(P93)

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