本の紹介ー不平等ではなかった幕末の安政条約 ― 2020年01月28日

鈴木荘一、関良基、村上文樹/著『不平等ではなかった幕末の安政条約 関税障壁20%を認めたアメリカ・ハリスの善意』 勉誠出版 (2019/7)
日米修好通商条約、あるいは安政5条約は不平等条約であったと小中学校で習った記憶がある。
実際には日本が課すことができる輸入関税は20%程度と、当時の国際社会では高率であったため、日本にとって有利な条約になっていた。現在でも、関税率は一方的に定めることができるわけではないので、日米修好通商条約で関税率が定められたことが、特に日本に不利益ということはなかった。
日米修好通商条約では、日本で日本が米国から輸入するときと、日本で日本が米国へ輸出するときの関税が定められ、また、日本に滞在する米国人には領事裁判権があることが定められた。しかし、逆の場合の関税や、米国に滞在する日本人の領事裁判権は定められていない。このため、不平等との指摘も一理あるが、条約締結当時、日本が米国に輸出入する主体となることや、米国に滞在する日本人の存在など考えられなかったので、これらのことが条約に定められていないのは仕方ないだろう。当時、日本には近代的裁判制度がないので、米国人の領事裁判権が定められたのも当然だろう。
日米修好通商条約では、日本に有利な関税率にすることに成功したが、その後、長州藩の下関戦争敗戦や尊王攘夷による開港延期などの影響で、幕府は改税約書の締結を余儀なくされ、この結果、関税率は日本に不利な5%となった。
本書は、日米修好通商条約締結交渉や、ハリスの態度などの史実を示し、日米修好通商条約が決して日本に不利な条約ではなかったことと、その後の薩長などによる攘夷運動の結果、不利な条約を締結せざるを得なかった状況が説明されている。
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