本の紹介―国境は誰のためにある? ― 2020年01月30日

中山大将/著『国境は誰のためにある? 境界地域サハリン・樺太』清水書院 (2019/12)
本書は樺太国境の変更と、それに関連した住民の問題を取り扱ったもの。
樺太は、幕末以降、以下のように領有関係が目まぐるしく変わり、それに伴う住民の移動も起きている。
日露雑居→ロシア領→南北で日露が領有→一時、日本が北樺太を占領→南北で日ソが領有→ソ連領
本書は100ページ強の薄い本ではあるが、大学の講義のような内容で、文献の記述も豊富なため、より高度な学習のための入門としても便利。
ちょっと興味が持てた記述
日本では『山海経』が<樺太日本固有領土論>の根拠として挙げられることがありますが、その際に挙げられる一文は、実際には『山海経』には見当たりません。(P37)
樺太について言えば、ソ連、特にサハリン現地の日本政府機関は日本人住民の<引揚げ>には消極的であったと言われています。そのりゆうとしては、ソ連人の移住が進む前に日本人の引揚げだけを先行して完遂させてしまえば、サハリンが一気に過疎地になってしまい、日本が残した各種工場設備やインフラの引き継ぎができなくなってしまうおそれがあったからと言われています。(P93)
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