東京大学(理系)数学入試問題 ― 2020年02月27日
今年の東大には、凡人がサボっていてもできるような問題はなかった。
問1は、日ごろから受験勉強に取り組んでいれば易しかったと思う。また、日ごろさぼっていても、もともと秀才ならば、難なく完答できただろう。
問4は、ごちゃごちゃしていて、手際よくまとめないと、隘路に落ちるだろう。こういう問題は、漸化式型で考えるとすっきりすることが多い。問4の(2)は途中計算間違いすると、たいてい整式にならないから、整式になったら、おそらく計算間違いしていないと思ってよいので、精神的には楽だ。
そういうことで、問1、問4の解答例を示します。
問1
<解答> 注意)(1)(2)の解答はもう少し上手に書かないと減点の可能性があります。
(1) 解答方針
f(x)=ax^2+bx+cとする。
a<0とすると、f(∞)=-∞となるので、x>pとなることに反する。
よって、a≧0
同様にして b≧0、c≧0
(2) 解答方針
f(x)=ax^2+bx+c,g(x)=bx^2+cx+a,h(x)=cx^2+ax+bとする。
a>0,b>0,c>0とすると、f(-∞)=∞,g(-∞)=∞,h(-∞)=∞なので、
pをどのように定めても、それより小さいxにたいして、f(x)>0,g(x)>0,h(x)>0となることがあるので、題意に反する。
よって、a,b,cの少なくとも一つは正ではないので、(1)から、少なくとも一つはゼロである。
(3)同じことだから、c=0とする。
あきらかに、a=0,b=0,c=0ではないので、同じことだからa>0とする。
ここで、d=b/aと書くと、3つの不等式は以下となる。
① x^2+dx>0
② dx^2+1>0
③ x+d>0
ここで、d≧0であるから、②式は常に成り立つ。
また、①③の両方を満たすxの範囲はx>0である。
よって、p=0
問4
(1)
<考え方>
an,2を評価するとき、n-1を選択したものと、選択しないものとに分けると、an-1,2とan-1,1の式で書けることがわかる。
<解答>
まず、a2,2=2
n≧3のとき、次式が成り立つ。
an,2=an-1,2+2n-1 an-1,1
=an-1,2+2n-1(20+21+・・・+2n-2)
= an-1,2 + 4n-1 - 2 n-1
よって、
an,2= a2,2 + 42-22+43-23+・・・+4n-1 - 2 n-1
=(4n-3・2n+2)/3
(2)
<考え方> (1)の考え方を踏襲する。
<前半の解答>
an,0=1 とする
an+1,kのなかで、nを選択したものと選択しないものとを考えると次式が成り立つ。
an+1,k=2n・an,k-1+an,k
fn(x)=Σ(k=0~n)an,k・xk
fn+1(x)=Σ(k=0~n)an+1,k・xk + an+1,n+1・xn+1
ここで、an+1,k=2n・an,k-1+an,kおよび2nan,n=an+1,n+1をつかうと、
fn+1(x)=(1+2nx) fn(x)となる。
すなわち、fn+1(x)/ fn(x)=1+2nx
<後半の解答>
an,0=1 とする
an+1,kのなかで、0を選択したものと選択しないものとを考えると次式が成り立つ。
an+1,k=2k-1・an,k-1 + 2k・an,k
fn+1(x/2)= 1+Σ(k=1~n)an+1,k・xk/2k + an+1,n+1・xn+1/2n+1
= 1+Σ(k=1~n)an,k-1・xk/2+Σ(k=1~n)an,k・xk + an+1,n+1・xn+1/2n+1
= (1+x/2)fn(x)
すなわち、fn+1(x)/ fn(2x)=1+x
(3)
<考え方> (2)で導いた式を使う。
<解答>
(2)で、以下の式を導いた。 ただし、n>kとする。
an+1,k+1=2n・an,k+an,k+1
an+1,k+1=2k・an,k + 2k+1・an,k+1
この式で、an,k+1を消去すると、次式となる。
an+1,k+1/ an,k = 2k(2n+1-1)/(2k+1-1)
n=kのときは自明に上式が成り立つ。
京都大学(理系)数学入試問題 ― 2020年02月28日
京都大学は、ときどき、とてつもなく難しい問題が出題されるが、今年はそのようなことはなかった。ただし、教科書の練習問題だけで十分なことはなくて、それなりに受験勉強に取り組んでいないと、どの問題も解けないと思う。
問1はどう考えるのかによって、難易に差がでる問題。問2は難しそうな雰囲気だけど、こけおどし。こういうふざけた問題は、出題しないでほしい。問4は京都大学の整数問題なので、とてつもなく難しいのではないかと身構えたら、単に条件を分ければよい簡単な問題だった。
問3、問5は文理共通。
そういうことで、問1、問2、問4の問題と解答例を示します。
問1
<問題>
a,bは実数でa>0とする。zに関する方程式
z3+3az2+bz+1=0
は異なる3つの解をもち、それらは複素平面上で一辺の長さが√3aの正三角形の頂点となっているとする。この時、a,bの値と、方程式の3つの解を求めよ。
<コメント>
この問題は、どのように考えるのかによって、難易度に大きな差が出る。ここでは、幾何的直観を使って、極力計算量を少なくすることを試みた。
<解答>
方程式の3つの解をα、β、γとする。ここで、αは実数解であるとする。
最初に三角形の重心を考える。α+β+γ=-3aであるから、3つの解の重心は-aである。
よって、3つの解は-aを中心とする半径aの円周上にある正三角形となる。
-aを中心とする半径aの円周上にある実数は0または-2aなので、αは0または-2aである。しかし、方程式のゼロ次項はゼロでないので、0は解ではない。
よって、α=-2a
3つの解は、-aを中心とする半径aの円周上にある正三角形なのだから、
β=-a+aω、γ=-a+aω*
ただし、ωは-1の三乗根の虚数解。ω*はωの複素共役。
以上、ここまでは全く計算をしていない。以下、a,bの値や解を求めるためには若干の計算が必要。
ここで、ω+ω*=1、ωω*=1を使う。
αβγ=-1であるから、a=1/3√2
b=αβ+βγ+γα=3a2
あとは省略。
問2
<問題>
pを正の整数とする。α、βはxに関する方程式x2-2px-1=0の2つの解で、|α|>1であるとする。
(1) すべての整数に対してαn+βnは整数であり、さらに偶数であることを証明せよ。
(2) 極限 lim(n→∞)(-α)nsin(αnπ) をもとめよ。
<コメント>
一見するとかなり難しそうだけれど、単なるこけおどしで、易しい問題。確実に点を取るようにしたい。
<解答>
(1) α+β=2p αβ=-1 を使う。
n=1,n=2のときは自明。
あとはαn+βn及びαn-1+βn-1が偶数の整数であることを仮定して、数学的帰納法を使えばよい。
(2) 難しそうだけど、単なるこけおどし。
題意から、-α=1/β -1<β<0
また、(1)からsinαnπ=-sinβnπ
βn=xと書くと、-1<β<0より、n→∞のとき、x→0なので、求める値は
lim(x→0)-sin(πx)/x=-π
問4
<問題>
正の数αに対して
α=3βγ (β、γは整数で、γは3の倍数ではない)
の形に書いたとき、B(α)=βとする。例えばB(32×5)=2である。
m,nは整数で、以下の条件を満たす。
1≦m≦30 1≦n≦30 nは3で割り切れない
このようなm,nについて、f(m,n)=m3+n2+n+3 とするとき、
A(m,n)=B(f(m,n))
の最大値を求めよ。またA(m,n)の最大値を与えるような(m,n)を全て求めよ。
<コメント>
m,nを3で割った余りについて場合分けすればよい。考え方も、やることも難しいことはない。
<解答>
以下、a,b,cは整数とする。
1) n=3b+1 のとき
f(m,n)が3の倍数となるのはm=3a+1である。
このとき、f(m,n)=27(a3+a2)+9(a+b2+b)+6なので、
A(m,n)=1
2) n=3b+2のとき
f(m,n)が3の倍数となるのはm=3aである。
このとき、f(m,n)=27a3+9(b2+1)+15b となるのでbが3の倍数のときはA(m,n)≧2となり、bが3の倍数でないときはA(m,n)=1となる。
2-1) b=0のとき
f(m,n)=27a3+9 であるから、A(m,n)=2
2-2)b=3のとき
f(m,n)=27(a3+5) であるから、A(m,n)≧3
2-3)b=6のとき
f(m,n)= 27a3+9×47 であるから、A(m,n)=2
2-4)b=9のとき
f(m,n)= 27a3+9×127 であるから、A(m,n)=2
b≧12はn>30となり不適。
以上よりb=3でa3+5が3の倍数のときにA(m,n)≧4となり、それ以外のときはA(m,n)≦3となる。
a3+5が3の倍数となるのは、a=3c+1と書けるときである。ただし、1≦m≦30 であるから、0≦c≦3。
また、このとき、a3+5=27c3+27c2+9c+6なので、この値は常に3の倍数で9の倍数ではない。
以上より、A(m,n)の最大値は
A(m,n)=4
このとき、c=0,1,2,3 b=3
すなわち、m=3,12,21,30 n=11
名古屋大学(理系)数学入試問題 ― 2020年02月29日
この大学は、時々、超難問が出題されることがあるが、今年はそういうことはなかった。問1は典型的な問題。問2は素数が関係する問題で、場合分けが必要。しかし、3つの素数の積なので、大変ではない。問3は積分の抽象議論になれていれば易しい問題だが、単なる計算練習のみの受験生には歯が立たないだろう。問4は問題文を読んでいません。
4問で試験時間150分なので、数学が得意な受験生は時間が余って困ったことだろう。
そういうことで、問2と問3の解答を書きます。
問2
(1)
題意から明らかにm>1である。
a=2でb,c=m2+1,m4+1の場合は、明らかにa2<bcとなる。
a= m2+1で、b,c=2, ,m4+1の場合は、a2<bcは容易に示される。
a= m4+1で、b,c=2, ,m2+1の場合は、a2>bcなので、求める解ではない。
よって、a=2, m2+1
(2)
(x+y){(x+y)2+y2}=2(m2+1)( m4+1) である。
右辺は異なる3つの素数の積であるから、左辺は互いに素の数の積である。
明らかにx+y≠1であるから、x+yは2, m2+1,m4+1のいずれか、または、それらの積である。
① もし、x+y が2, m2+1,m4+1の2つ以上の積であるとすると、
(x+y)2≧{2(m2+1)}2> m4+1となる。
一方、x+y が2, m2+1,m4+1の2つ以上の積のときは、{(x+y)2+y2}≦m4+1でなくてはならず、このようなx、yは存在しない。
② x+y が2, m2+1,m4+1のどれか1つとする。
x+y=aとすると、(x+y)2+y2=bcであり、a2<bcが成り立っている。
よって、x+y=2 or x+y= m2+1
ここで、x+y=2とすると、x=1,y=1となって、(x+y)2+y2=bc=5となるので不適。
x+y= m2+1とすると、(x+y)2+y2=2(m4+1) となる。
これを解くと、y=m2-1、x=2
問3
(1)
0≦x≦2πで、f’’(x)>0であるから、この範囲でf’(x)は増加関数。
0≦x≦π/2のとき、x<π-x<π+x<2π-xとなるので、
f’(x)<f’(π+x) f’(π-x)<f’(2π-x) が成り立つ。
F’(x)=f’(x)+ f’(π-x)- f’(π+x)- f’(2π-x)<0
一方、F(π/2)=0であるから、0≦x≦π/2のときF(x)≧0となる。
(2)
積分区間を[0, π/2] [ π/2, π] [ π, 3π/2] [3π/2,2π]にわけると、求める積分は、次式となる。
∫F(x)cos(x)dx ただし、積分範囲は[0, π/2]。
よって、(1)より、この定積分の値は正である。
(3)
g(x)=-f’(x)とおくと、f’’(x)>0となる。
∫g(x)sin(x)dx=-∫f’(x)sin(x)dx=[-f(x)sin(x)]+∫f(x)cos(x)dx=∫f(x)cos(x)dx>0
ただし、積分範囲は[0, 2π]