千葉大学数学入試問題2020年03月03日

千葉大学の数学入試問題は学部・学科によって決められた問題を解くようになっている。問10は医学科・数学科の問題。問11は医学科の問題。例年、これらの問題だけが難しいが、今年も取りつきにくかったり、難しい問題だった。特に、問11(3)は、自分の能力を信じて進まないと正解にたどり着かないだろう。



問10
有理数a,bに対して、(a+bi)2の実部と虚部が整数ならば、a,bは整数であることを証明せよ。ただし、iは虚数単位である。

<解説>
この問題は普通に考えればそれほど難しくはないが、類題を解いたことがある受験生は多くはないだろうから、とっつきにくかったと思う。

<問10の解答>
a,bが有理数の時、
a=m/k b=n/k m,n,kは整数で、m,n,kの最大公約数は1、kは正の整数と書ける。
(a+bi)2=p+qi (p,qは整数)とする。
この時、次式が成り立つ。
m2-n2=pk2
2mn=qk2   ②
ここで、k≠1とすると、k=rs (rは素数、sは正の整数)と書ける。
このとき、②の右辺はr2の倍数だから、m,nのどちらかはrの倍数。
同じことだから、mがrの倍数とする。
よって、①式より、nもrの倍数となる。
これは、m,.n,kの最大公約数が1という条件に反する。
よって、k=1である。
すなわち、a,bは整数である。



問11(若干、問題の表現を変えている)

0≦x≦1で定義された関数fn(x)を次のように定める。
f1(x)=0 fn+1(x)=∫0x{1-fn(t)}2dt  (nは正の整数)
また、f(x)=x/(1+x) とする。

(1)
nが正の整数の時、次の不等式が成り立つことを証明せよ。
 0≦fn(x)≦1 (0≦x≦1)

(2)
以下の式を証明せよ。
 nが正の奇数の時、fn(x)≦f(x)  (0≦x≦1)
 nが正の偶数の時、fn(x)≧f(x)  (0≦x≦1)

(3)
 lim(n→∞) fn(x)  を求めよ。

<解説>
(1)は易しい。(2)も普通に考えれば問題ないだろう。(3)の解がf(x)であることは、(2)から容易に推定できる。でも、それを証明するのは難しい。

(1)数学的帰納法を使えば容易に証明できる。

(2)
fn(x)≦f(x) (0≦x≦1)のとき、fn+1(x)≧f(x) (0≦x≦1)となる事を示す。
{1-fn(x)}2≧{1-f(x)}2となり、
∫{1-f(t)}2dt=f(x)であるから、fn+1(x)≧f(x)が成り立つ。
同様に、fn(x)≧f(x) (0≦x≦1)のとき、fn+1(x)≦f(x) (0≦x≦1)となる。

n=1の時、求める不等式は成立する。
あとは、数学的帰納法により、求める不等式が証明できる。

(3)fn(x)はf(x)の上下をふらふらしている数列なので、収束値はf(x)に決まっているということは、容易にわかるだろう。

ここでは、標準的に、fn(x)-f(x)を評価する。
gn(x)=fn(x)-f(x)と書く。
gn+1(x)=∫0x{1-fn(t)-1/(1+t)}{1-fn(t)+1/(1+t)}dt
よって、|gn+1(x)|≦2|∫0xgn(t)dt| ・・・(*)
(ここで、1-fn(t)-1/(1+t)=gn(t)および、gn(t)の符合はtによらないこと、さらに、 0<1-fn<1、0<1/(1+t)<1 を使った。)

(*)式の右辺の係数が1よりも小さいと簡単だったのだけど、2になったので、さらに考察が必要。

|g2(x)|=x-x/(1+x)≦x
(*)式により、|g3(x)|≦2∫0xtdt=2×x2/2
|g4(x)|≦2∫0x2×t2/2dt=2^3×x^3/3!/2
一般に
|gn+1(x)|≦2^n×x^n/n!/2<2^n/n!→0(n→∞)
よって、lim(n→∞) fn(x)=f(x)

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