本の紹介―「オウム」は再び現れる2020年03月04日

  
島田裕巳/著 『「オウム」は再び現れる』(2018/12)中公新書ラクレ
  
 宗教学者の著者は、オウムを擁護したとの非難を受け大学教授のポストを追われることになった。その後、本の執筆数が増えている。新興宗教を話題とした一般向けの啓蒙書が多いので、一般人が新興宗教の概略を知るうえで、参考になる本が多い。
 
 本書は、オウム真理教を話題とした本。内容は、「オウム真理教が出現した背景」「阿含宗との関係及び仏教との違い」「麻原と弟子との関係」「弟子たちが犯罪に走った原因」が示され、最後に、オウムのような団体が今後も日本社会で生まれうると警告している。
 
 オウム真理教が出現した背景では、オカルトブームやノストラダムスの大予言のような終末論が日本社会に広がっていたことを指摘する。
 弟子たちが犯罪に走った原因に、犯罪を指示された弟子たちの資質を問題にしている。すなわち、「オウム信者には気軽な気持ちで言われたとおりに行動する傾向がある」「自分たちの行動がどういった結果を引き起こすのかを事前にはまったく考えずに、ただ指示に従う」(P161)人たちだったために、犯行に走ったとのことだ。なぜ、簡単に指示に従ったのかというと「指示を下されたとき、それを断ることが面倒だったため、従ってしまったのではないだろうか」(P163)としている。
 事の善悪を考え主張することが大変だから、多少悪いことがあるとわかっていながら、会社の命令に従う人は珍しくないだろう。オウムの人たちは、一般日本人の資質を、より多く備えていただけだったのかもしれない。そう考えると、「オウムのように大きな問題を起こす組織が再び現れる可能性は十分に考えられる。それが、宗教いう形をとるとは限らない。もっと別の形をとることだって有りうるだろう。」(P204)とする著者の考えはもっともなことだ。

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