産経新聞・舩杉力修島根大准教授の説(竹島問題)2020年09月15日

2020.9.14産経ニュースに『19世紀の英地図も竹島を日本領、女王に捧げる高い精度』の記事がある。
https://special.sankei.com/a/society/article/20200914/0001.html
我田引水記事を書くとしても、もう少し、まともな記事を書いてくれないのだろうか。
 
 産経の記事によると、『日本固有の領土でありながら韓国が不法占拠する竹島(島根県隠岐の島町)について、日本領と明示した19世紀の英国製の地図が現存することが島根大の舩杉力修准教授(歴史地理学)の調査で分かった』とのことだ。
 
 産経の言う地図とは、1881年に出版されたKeith Johnstonの英国製の着色された地図(CHINA and JAPANと思われる)で、この地図は版を重ねており、eBayのオークションで1860年代から1890年代の版が出品されることも多い。ただし、版によって、着色は異なるところがある。
 
 産経が記載している地図では、隠岐・本州は桃色、四国は黄色、九州・対馬は青色、朝鮮は橙色、竹島と鬱陵島は青色で塗られている。日本の各地や朝鮮半島がいろいろな色で塗られ、竹島は九州と同じ色で塗られているので、産経の記事では、竹島は日本の領土とされていると軽率に判断しているようだ。地図の色塗りを小学校で習わなかったのだろうか。
 世界には多数の国・地域があるが、色の数は限られているので、すべてを違う色で塗ることはできない。では、どう塗るかというと『隣接する異なる国・地域は異なる色で塗る』。このため、隣接していない国・地域が同じ色で塗られていたからと言って、同じ国であるとはならない。隠岐に近い竹島が隠岐の領域ならば隠岐と同じ色で塗る、違う領域ならば違う色で塗る、九州から遠い地域は同じ色でも違う色でもどうでもよい。これが地図塗の基本である。
 産経の記事には地図の一部しか記載されていないが、 Keith Johnston地図「China and Japan」の1881年版が以下に公開されている。
https://www.loc.gov/item/2006458431/
 この地図を見ると、浙江省と山東省が九州と同じ青色で着色されているが、だからと言って『九州は中国固有の領土である』と解釈することはできない。
 
 産経が紹介した地図では、竹島は隠岐とも朝鮮半島とも異なる領域で、鬱陵島と同一の領域であることが分かる。この地図で、竹島・鬱陵島が日本の領土と考えているのか、朝鮮の領土と考えているのかは、地図の表示からは分からない。当時、鬱陵島は日朝間で朝鮮の領土であることが確定していた。もし、この事実を地図作成者が知っていたならば、竹島も朝鮮領と認識していたことになる。
 
 Keith Johnstonの地図には「CHINA and JAPAN」のほかに「JAPAN」もある。現在eBayに出品されているJAPAN地図には鬱陵島や竹島は記載されていない。また、1枚の地図に「JAPAN」「COREA」が記載されている地図もある。この地図ではJAPANの部分に朝鮮半島の一部と鬱陵島・竹島が無着色で記載されており、着色された日本とは明らかに異なる。「COREA」地図には鬱陵島や竹島は記載されていない。
 
 ところで、私の手元には、1876年ドイツ・Stielerのロシア地図がある。この地図では鬱陵島・竹島ともに日本領となっている。
http://nippon.nation.jp/Takeshima/Ullundo/Stieler.jpg
 この地図だと、『19世紀の独地図も竹島を日本領』ということができるが、朝鮮領であることが確定している鬱陵島を日本領としているので、要するに、この地図の国境線が誤りだったことを示しているに過ぎない。
 地図表記で『鬱陵島が朝鮮領でも竹島は日本領』と主張するのならば、竹島と鬱陵島が異なる色で着色されているか、竹島・鬱陵島間に国境線がひかれた地図を探す必要があるのだけれど、なかなか無いですよ。
   
『やさしい竹島問題の話』は以下をご覧ください。
http://nippon.nation.jp/Takeshima/YasashiiTakeshima/index.html

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