本の紹介―尖閣問題 政府見解はどう変遷したのか2020年09月19日


笘米地真理/著『尖閣問題 政府見解はどう変遷したのか』柏書房 (2020/2/27)
 
 本書は尖閣諸島問題に関する専門研究書。啓蒙書ではないので、この問題に詳しくない人が読むのは大変だろう。900ページあまりの大著。このうち本文は500ページ強で、資料として日本政府の国会答弁などが300ページ弱。これに、参考文献、あとがき、などがつく。
 著者は、日本政府の国会答弁を基に、沖縄返還前後に日本政府が尖閣を領有していった過程を明らかにして、2016年に、『尖閣諸島をめぐる「誤解」を解く―国会答弁にみる政府見解の検証』を上梓した。本書では、上記に加えて、明治政府が沖縄を領有した過程や、日清戦争期に尖閣を領有した過程を明らかにしている。研究方法は、日本政府の公文書を元にしているので、日本政府の立場の解明が主眼となっている。尖閣問題というと、琉球と明・清の関係や、明治以降の民間人の尖閣開発などに関心がもたれる向きもあるが、そのようなことは本書の研究対象ではない。
 本書は研究成果なので、参考文献も詳細で、また、類似の各研究に対する、適否の言及も多い。

 ページ数も多く、読むのは大変だが、尖閣問題に対する日本政府の態度に関しては、本書が決定版だろう。

参考のため、目次を記す。
はじめに
凡例 尖閣諸島について
尖閣諸島に関する年表
序章
第一章 尖閣問題の起源日本、米国、「二つの中国」
 領土問題の理論的射程国益とは何か 
 国共内戦から「二つの中国」の対峙 
 講和条約における台湾条項と沖縄条項 
 一九七〇年までの関係各国の国益と外交政策ーゼロ年としての一九七〇年
第二章 政府見解の変遷一九七〇年に尖閣の領有権を明言
 一九七〇年までの国会答弁 
 一九七〇年九月における外務大臣による尖閣領有権の明言
第三章 一八八五年~一八九五年における尖閣領有過程の検証
 一八九五年における尖閣編入の閣議決定
 新たな領有根拠の不在と戦勝に乗じた尖閣領有
 領有根拠とならない一八九六年における勅令第一三号
第四章 米国の「中立」政策の背景と「先占」による領有「物語」の完成
 尖閣諸島の主権に関する米国の「中立政策」 
 領有権を根拠づける沖縄での資料収集
 「先占の法理」と「棚上げ」
第五章 日本政府による実務対応と中国側の対応
 政府見解と実務対応のダブルスタンダード
 自民党政権と民主党政権における実務対応の差異
 中国の領土政策と国連海洋法条約
 中国が解決した中越、中印、中ロ等の国境画定事例
 「固有の領土」論と沖縄をめぐる歴史的経緯
第六章 「尖閣問題」の起源としての琉球帰属問題と中国の沖縄政策
 琉球帰属問題をめぐる日清問交渉再考
 日清両国間互換条約および分島改約交渉の再検討
 「尖閣問題」の起源としての沖縄帰属問題 
 第二次世界大戦後の中国側の琉球・沖縄政策 
第七章 安保新時代における尖閣諸島問題
 新ガイドラインに盛り込まれた
 米国の中立政策と安保条約第五条
第八章 政治的解決へ
 「新たな棚上げ論」による現状凍結へ 
 公共政策としての「尖閣問題」の政策的課題
資料
参考文献
あとがき
索引

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