本-FACT FULLNESS2020年10月17日

 
ハンス・ロスリング 他/著『FACTFULNESS(ファクトフルネス)』日本語訳(2019/1)日経BP
 
 ずいぶん話題になっているようなので、一応読んでみました。
 400ページ余りの本。論旨も一貫していて、文章は読みやすく、行の間隔も若干大きく、内容も高度ではないので、本の厚さの割には、すぐに読み終える本です。逆に言うと、この内容ならば、50ページ程度のブックレットでよかったのではないかと思います。
 
 本の内容は、貧困、人口、教育、エネルギーなど、世界にまつわる知識により、真実と多くの人が考えていることが、実は誤解であることを示している。
 たとえば、
 『質問12 いくらかでも電気が使える人は、世界にどのくらいでしょう?』
 『A 20% B 50% C 80%』
 この質問の正解Cを正しく選択した人は、国により異なるが、およそ15%~30%と、少数とのことだ。
 このように、間違える原因と間違わないための方法を示しているわけだが、この本を読んだ限りは「まあそんなものですか」と一応納得はする。
 でも、この調査は、統計的に信憑性の高いランダムサンプリングをしたのだろうか。年代層や教育レベルに偏りはないだろうか。日本人を対象とした調査の場合、質問は、この通りの文言だったのだろうか。いつの調査なのだろうか。もちろん出典を掲載してあるが、一般には入手が困難で、検証は困難だ。
 誰だって、世界中の地理認識が最新のものに更新されているわけではないので、多少は古い知識に基づいていることは当然のことだろう。古い調査で、古い知識を聞いたならば、それは古い認識になっていることは当然だ。
 ネットで、ざっくり調べたデータでは、インドで電気が利用できる世帯割合・人口割合は、2001年で56%、2011年で67%、2016年で77%と着実に増加している。ここ20年、BRICs諸国は、急激に変化した。急激な変化に関する知識に関連した調査は、細心の注意が必要だが、この本の調査は、どのように行われたのか、本を読んだ限りは、良く分からない。
 
 著者が言うように、データや報道を人々が誤解する可能性はあるだろう。しかし、単に知識が古いだけという場合もあるだろう。著者はスウェーデン人であるが、ヨーロッパの辺境国に住む老人たちが、近年のアジアの発展を知らなくても驚かない。そういう状況と、データや報道理解の問題とが正しく分けられているのか、本書を読んでも良く分からなかった。

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