本-法華経とは何か など2021年02月07日

 
植木雅俊、橋爪大三郎/著『ほんとうの法華経』筑摩書房 (2015/10)
植木雅俊/著『法華経とは何か その思想と背景』中央公論新社 (2020/11)
 
 『ほんとうの法華経』は二人の対談形式。両書とも、特に読むことを薦めない。
 
 これらの本は何の目的で書かれたのだろう。
 法華経は日本で一番ポピュラーなお経。日本の法華経は、鳩摩羅什が漢訳したものなので、原書のサンスクリット文のものと、多少のニュアンスの違いが生じるのは仕方ない。著者の植木はサンスクリット版法華経を翻訳し、漢訳法華経との違いを解明している。
 これらの本は法華経の概要をサンスクリット版に基づき解説し、所々で、漢訳との違いに言及している。しかし、サンスクリット本と漢訳本の違いは小さく、新書本を読んで法華経概要を理解する人に、どれだけ必要なことだろうかと疑問に思った。
 
 著者は「小乗仏教」の用語を「有部」の意味で使っているようだ。釈迦の教えにより誕生した仏教は「初期仏教」「原始仏教」などと呼ばれる。初期仏教はその後「上座部」「大衆部」に分裂した。これらは、その後さらに分裂し、最終的には20程度になった。これらを部派仏教と呼ぶ。部派仏教の中で、最有力だったのが「説一切有部」で略称が「有部」である。大乗仏教は部派仏教時代に成立し、自分たち以外を「小乗仏教」と賤称した。当時、最有力が「有部」だったため、「小乗仏教」の用語が「有部」を特に指している場合もあった。
 現在、日本で「小乗仏教」というと、「南伝仏教」あるいは「上座部仏教」を指す。著者が「有部」思想を批判するならば、普通に「有部」の問題点とすればよいところを、「小乗仏教」と書いているため、読んでいると「上座部仏教」の問題であるかのような気がしてくる。普通に「有部」と書けばよいのに、あえて分かりにくい表現を使っており、感心しない。
 
 そういう問題点はあるが、法華経の入門的解説書として特に悪い本であるということはない。しかし、法華経の入門的解説書など、世にいくらでもあるので、あえて本書を読む必要はないと感じた。

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