本の紹介-その虐殺は皆で見なかったことにした ― 2021年02月19日

舟越美夏/著『その虐殺は皆で見なかったことにした』河出書房新社 (2020/11)
著者は共同通信の記者。
トルコではエルドアン大統領の体制で、クルド人に対する大規模虐殺が続いている。本書は、エルドアンのクルド虐殺のうち、南東部の町ジズレの虐殺を取り扱ったもの。
本書では、生存者の手記や取材をもとに、ジズレにおけるクルド人虐殺の模様を詳細に明らかにしている。国際社会でエルドアンの虐殺を取り上げたのはロシアであるが、本書の最後の章で、西側社会が、この虐殺に対して関心を払わず、エルドアンに迎合している状況を記す。
タイトルは「その虐殺は皆で見なかったことにした」となっているが、本書の記述の大半はジズレでのクルド虐殺の実態であり、欧米各国が虐殺の責任追及をしない状況の記述は少ない。
トルコと言えば、アルメニア人へのジェノサイドを起こしたアタテュルクを、建国の父として尊崇している国である。ヒットラーのユダヤ人ホロコーストはアタテュルクの真似をしたものだとする説もあるほど、トルコは異民族大虐殺国家なので、今回のクルド人虐殺は、トルコの犯す、いつもの犯罪のような気がする。本書には、トルコ兵が命令とはいえ、どうして虐殺をしたのかを解明しようとしている記述がある。しかし、トルコ人はもともと人権意識が低い『劣等民族』であり、このような虐殺が平気で行えるのではないか。本書を読んでいると、そのように感じた。