本の紹介-新宗教を問う2021年03月21日

 
島薗進/著『新宗教を問う』筑摩新書 (2020/11)
 
 さすが新宗教問題の泰斗による執筆と感心した。日本の新宗教の概要を知るために最適な本と言える。かなり詳しく、いろいろな新宗教について触れられており、創価学会・霊友会・大本教のような主要な新宗教はかなり詳しい。また、新宗教が日本で盛んな社会的な背景の説明も詳しい。
 本書は一般読者を対象に、日本の新宗教の全体像を明らかにするもの。新書なので、特に専門的な内容はないが、巻末には参考文献もある程度詳しく記載されており、より進んだ学習にも役立つ。逆に言えば、これまでよく知られていたことを上手にまとめた本で、特に面白い内容があるわけではないかもしれない。
 
 新宗教の中で、最も勢力があるのは創価学会だ。本書の第一章・第二章は創価学会の概要と歴史に焦点を当てている。
 このあと、第三章では霊友会系(霊友会の他、立正佼成会・孝道教団・妙智会教団・仏所護念会・妙道会など)を解説し、第四章では、大本・大本事件と大本系として成長の家・世界救世教・真光系・MIHOなどの主要教団を解説している。現在、自民党に深く食い込んでいる右翼組織の日本会議は生長の家がベースになっている。生長の家・教祖の谷口雅春は戦時中に強度な天皇崇敬を鼓舞していたため、戦後になると公職追放にあっているとのことだ(P123)。
 日本で、これほど新宗教が隆盛したのは、社会状況に依存している。戦後、創価学会や霊友会系・大本系などが大きく発展した理由を以下のように概括している。
 
 新宗教が成長した時期は、国民が連帯意識をもち、強さや豊かさという広く共有された目標に向かって前進する時代だった。それが「進歩」と感じられたのだった。・・・前を見て成長をすると意識された時代に、新宗教は大きく成長した。大本と、生長の家、世界救世教などを合わせた大本系の教団、霊友会、立正佼成会、妙智會などを含んだ霊友会系の教団、そして創価学会がこの時期に発展した代表的な教団で…ある。(P130,131)
 
 このほか、PL教のように、修養団体として拡大した新宗教もある。一燈園のような新宗教や京セラ・ダスキンのような企業も修養団体的側面を持つとのことだ。
 
 本書では、このほか、明治以前の新宗教の萌芽として富士講などの各種講や、明治以降に拡大発展した天理教・金光教さらには国柱会などを説明し、日本の新宗教の特徴として現世利益的であるとの指摘がなされている。
 ただし、1970年代以降に拡大した、オウム・真如苑・統一教会・エホバなど、いわゆる新新宗教と言われた新宗教では、現世利益よりも来世あるいは別の世での利益を説いており、これまでの新宗教とは異なった性質を持っている。これら新新宗教の中には社会との軋轢を起こすものも多い。ただし、真如苑は社会との軋轢を起こしているとは言えないし、本書では以下のように書かれており、旧世代の新宗教と新世代の新宗教を併せ持っているようだ。
 
 真如苑のこうした「顕幽一如」の信仰のあり方は、現世主義的ではあるが、超越的な領域が重視され、信徒らが超越界との直接交流に関わる度合いが大きいという点で、それまでの新宗教とは異なっている。これが一九七〇年代以降に真如苑が成長を続けた要因の一つと考えられる。だが、真如苑のあり方を全体として見ると、それまでの新宗教とは異なる新しさを、全面的で劇的な転換の結果とみるのは適切ではないだろう。(P240)

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