本の紹介-検閲官 ― 2021年07月17日

山本武利/著『検閲官 発見されたGHQ名簿』 新潮社 (2021/2)
敗戦によりGHQに占領されると、米軍は日本の出版物や日本人の親書など、幅広く検閲した。このうち、郵便検閲が最大規模だった。検閲官は日本語の手書き文字が読めて、英語で報告ができる人であることが必要なため、日本人有識者が検閲官になったケースが多い。検閲は米国の命令で、日本国民を監視することだったため、検閲官となった日本人が、検閲について語ることは少なかった。
本書は、検閲制度や、検閲の実態に触れた後、検閲をした日本人の何人かに検閲をした時の心境などを尋ねたものを記載している。検閲官をした人も、老境に達し、多少は当時を語る気になった人もいるのだろう。ただし、検閲終了後何十年もたってからインタビューをしたところで、どれだけ真実を語るのだろうか。検閲をした日本人は、その後、要職についている場合が多い。こういう人が、真実を語ると考えること自体、無理があるのではないだろうか。
本書の中心は、当時の検閲官の心情のレポートであるが、残された郵便物から郵便検閲の実態を解明した研究もある。
裏田稔/著『占領軍の郵便検閲と郵趣』郵趣サービス社(1982)
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