ワリエワの違反薬物は極めて微量2022年02月20日

 北京オリンピック、フィギュア女子・ワリエワ選手のドーピング違反が話題になっている。
 
『スポーツ仲裁裁判所の公表では、尿中から検出されたトリメタジジンの濃度は2.1ng/mL。(日本海テレビ)』
『ワリエワ選手の尿サンプルが検出されたトリメタジジンの濃度は1ミリリットルあたり2.1ナノグラムと分析された。これはサンプル汚染と判明した他のスポーツ選手と比較して、およそ200倍にあたる(Yahooニュース)』
  
 このような記事があるので、ワリエワの尿から検出された量は2.1ng/mlなのだろう。サンプル汚染の200倍との報道によって、ものすごく多い量であるかのような言説があるが、これは大間違いだ。理想状態ではサンプル汚染は、ゼロなのだから、この値の何倍であっても、服用量が多いことにはならない。ただし、検出計器の誤作動の可能性は、ほぼないだろう。
 
 では、心臓病等で、トリメタジジンを服用している人と比べたらワリエワの尿中濃度は多いのか少ないのか。
 トリメタジジン(バスタレルF錠)は、1回3㎎を1日3回服用するので、1日の服用量は9㎎である。トリメタジジン(バスタレルF錠)の説明書によると、6mg服用後48時間以内に尿中に排泄される量は平均60%である。多めに見積もって、1日の排出量が60%とする。また、1日の尿量は1リットルとする。1日服用量9㎎の60%が1リットルの尿に排泄させるのだから、尿中の平均濃度は5.4mg/Lであり、単位を変換すると、5400ng/mlとなる。ワリエワの尿中トリメタジジン濃度は、通常服用者の2000分の1以下となる。
 ワリエワがトリメタジジンをいつ服用したのか分からないが、もし、検査の直近だとしたならば、服用量は、通常1日服用量の1/2000程度と推測される。
 
 一般人が尿の薬物検査を受ける機会は少ないが、覚醒剤取締罰則違反容疑で、警察に尿検査をされることがあるかもしれない。尿を提出すると、警察は簡易キットを使って覚醒剤の有無を検査する。簡易キットの検出限界は1mlあたり数百ナノグラムである。簡易検査の結果、陰性ならば通常無罪放免、陽性・偽陰性ならば詳細検査をすることになる。ワリエワの尿から検出されたトリメタジジンの量は、覚醒剤使用で逮捕される量の1/100程度以下ということになるので、極めて微量だ。

 覚醒剤使用で逮捕される薬物量に比べて、極めて微量にもかかわらず問題となるのは、刑法犯とスポーツの違いだろう。刑法犯では「疑わしきは被告人の利益に」との原則があるため、警察もいい加減な検出で逮捕することはできず、十分な証拠が必要となる。これに対してスポーツは所詮、金儲けの興行なので、興行主・スポンサーの利益が最大の目的だ。このため「疑わしきは興行主の利益に」がスポーツの大原則なのだろう。
 
 以上、医薬品についても、スポーツについても、無関係な私が、簡単に考察してみました。間違いがある場合、ご指摘いただければ幸いです。

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