東京大学理系数学入試問題2022年03月01日

  
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東大理系・数学問1はごくありふれた問題。一見したところ、教科書の練習問題程度の感じがするが、実際に解いてみると、積分計算が難しいので、数3の練習問題に取り組んでいないと無理。東大理系を受験する生徒なら、たいていできたのではないかと思います。

解答方針
(1)は普通に微分して増減を調べればよい。θ=π/4のときに最小値となることがわかる。
(2)は式の後半の積分をまともにするしかない。部分積分してlog(cos)をなくしたあと、1/cosの積分が現れるので、三角関数の積分に慣れていないとできない。東大に限らず上位大学理系を受験するならば、この程度の計算はできるようにしておきたい。

本の紹介-ブロートン北太平洋航海記2022年03月02日

 
ウィリアム・ブロートン/著、吉田俊則/訳『ブロートン北太平洋航海記』東洋書店新社 (2021/9)
 
 幕末に、日本近海を航海調査測量したブロートンの航海記。
 ブロートン一行は、1795年3月、イギリスを出港した後、喜望峰を回ってオセアニアを経由して、翌年ハワイに至る。その後、北アメリカ西海岸に至り、再びハワイを経由して、1796年9月に岩手県沖、さらに北上し虻田沖にて松前藩士で虻田場所地行主の酒井栄と会談するも意志疎通ができなかった。その後、絵鞆から、北海道東方沖を通って、歯舞諸島、千島沖を通って、中千島のブロートン島に至る。島名はこの時にちなんでつけられたもの。その後は、太平洋を南下し、琉球、台湾などを測量し、マカオに到着した。
 翌年、1797年は、台湾・宮古に至るもそこで難破し、再びマカオに戻り、その後はスクーナ船で、澎湖・台湾・尖閣・慶良間・沖縄を通り、日本の太平洋岸を北上し、再び絵鞆に至り、今度は、北海道西岸を通って、タタール海峡に入り、海峡最狭部入口に到達する。しかし、水深が浅く、塩分濃度も低く、海流も少なく、遠くに陸地も見えることから、サハリンと大陸との間は、船舶通行不能と判断し、9月16日に引き返した。その後は、大陸沿岸から朝鮮半島沿岸を通って、吐噶喇列島・尖閣諸島を経由して、マカオに帰還した。
 航海の途中、薪水や食料の補給で上陸し、地元民との交流があるが、結構煙たがられていることや、そもそも言葉が通じないこともあって、人的交流には苦慮している。それから、経度の測定のためには、正確な時間が必要となるが、時計の時間補正に苦労している記述が随所にみられる。

京都大学・理系 数学入試問題2022年03月03日

京都大学理系の問6は、東大理系の問6と雰囲気が似ている。ただし、東大のは「場合の数」を絡めているので、数え落としが多い。この問題は素直に考えればよい。東大の問6に比べて、どちらが難しいか、似たようなものだろうが、こちらの方が点は取りやすい。
 
問題 6
 数列{x(n)},{y(n)}を次式で定義するとき、{x(n)-y(n)}をもとめよ。
 x(1)=0 x(n+1)=x(n)+n+2×cos(2πx(n)/3) (n=1,2,3,…)
 y(3m+1)=3m,y(3m+2)=3m+2,y(3m+3)=3m+4 (m=0,1,2,…)
 
方針:
 このような数列は、一般的にどうすればよいのか、分からないので、最初のいくつかを求めて、考えてみることだ。一般解が推定できれば、後は数学的帰納法を使えばよい。
 なお、数列は、x(n+1)-x(n)≒nなのだから、典型的な階差数列に近いものに感じる。
 
 x(1)=0
 x(2)=3
 x(3)=7=3*2+1
 x(4)=9=3*3
 x(5)=15=3*5
 x(6)=22=3*7+1
 x(7)=27=3*9
 x(8)=36=3*12
 x(9)=46*3*15+1
 x(10)=54=3*18
となる。普通はx(4)ぐらいまで見ればわかるはずだが、cosの項があるために、3回ずつで様子が異なるので、x(10)まで調べた。
 x(1)=3*0 x(4)=3*3 x(7)=3*9 x(10)=3*18
このためz(m)=x(3m+1)/3とすると、z(0)=0,z(1)=3,z(2)=9,z(3)=18 であるから、x(3m+1)=z(m)*3=m(m+1)*(9/2)と推定できる。
 
解答 
x(3m+1)=m(m+1)*(9/2) とする。ただし、m=0,1,2,…。この数列が題意を満たすことを数学的帰納法によって示す。
最初にm=0の時は題意を満たす。
次に、、
x(3m+2)=m(m+1)*(9/2)+3m+1+2=m(m+1)*(9/2)+3m+3
x(3m+3)=m(m+1)*(9/2)+3m+3+3m+2+2=m(m+1)*(9/2)+6m+7
x(3m+4)=m(m+1)*(9/2)+6m+7+3m+3-1=m(m+1)*(9/2)+9m+9=(m+1)(m+2)*9/2
よって、x(3(m+1)+1)=(m+1)(m+2)*9/2となって、
数学的帰納法から、x(3m+1)=m(m+1)*(9/2)である。
また、当然に、上で求めたx(3m+2),x(3m+3)も解である。
  
x(3m+1)-y(3m+1)=m(m+1)*(9/2)-3m=(1/2)(3m)(3m+1)
x(3m+2)-y(3m+2)=m(m+1)*(9/2)+3m+3-3m-2=(1/2)(3m+1)(3m+2)
x(3m+3)-y(3m+3)=m(m+1)*(9/2)+6m+7-3m-4=(1/2)(3m+2)(3m+3)
結局、
x(n)-y(n)=n(n-1)/2

京都大学・理系 数学入試問題2022年03月03日

 京大、東大とも、簡単ではないけれど、それぞれ特徴がある。東大は計算量も多く、高度な思考力も要求されるが、日ごろ受験勉強に取り組んでいれば何とかなるだろう。京大は計算量はそれほどでもないが、問題3など、解答方針が思いつかないかもしれない。

問題3  (累乗を^と書きます)
n^2+2,n^4+2,n^6+2の最大公約数を求めよ。ただし、nは正の整数。

考え方
 日頃、問題集に取り組んでいても、正解が思いつくとは限らない難しい問題。
 ここでは、最大公約数がrだったら、どんなことが成り立つだろうかと考えた。
 すなわち、rがn^2+2の約数だったとしたら、6はrの倍数でなくてはならないことを最初に示す。
 
解答
n≧2の場合を考える。
n^2+2 がrの倍数とする。ただし、rは正の整数。
このとき、n^2=rN-2 (Nは正の整数でrN≧6)と書けるので、
n^4+2=rN(rN-4)+6となる。この値がrの倍数の場合は、6はrの倍数である。
よって、n^2+2,n^4+2の約数は、1,2,3,6以外にはない。
n=1のときも、n^2+2,n^4+2の約数は、1,2,3,6以外にはない。(n=1のときは、1,3が約数です)

最初に、2がn^2+2,n^4+2,n^6+2の約数であるための条件を探す。 
 nが偶数の時は、n^2+2,n^4+2,n^6+2はすべて2の倍数であり、nが奇数の時は2の倍数ではない。
次に、3がn^2+2,n^4+2,n^6+2の約数であるための条件を探す
 n=3k+3 (kは0または正の整数)のとき、n^2+2は3の倍数ではない。
 n=3k+1,n=3k+2(kは0または正の整数)のときn^2+2,n^4+2,n^6+2はすべて3の倍数である。
 
以上より、次のようにまとめられる。ただし、kはゼロまたは正の整数とする。
 n=6k+1のとき、最大公約数は3
 n=6k+2のとき、最大公約数は6
 n=6k+3のとき、最大公約数は1
 n=6k+4のとき、最大公約数は6
 n=6k+5のとき、最大公約数は3
 n=6k+6のとき、最大公約数は2

東北大学理系数学入試問題2022年03月03日

 東北大学は、かつては難問が出題されたが、近年はそんなことはなかった。ところが、今年の問2は難しい。今年の主要大学入試問題の中で、一番難しかったと思う。この問題は決して、奇をてらったようなものではなく、普通に高校の範囲で解けるのだけれど、時間内に正解に到達するのは、かなり困難だろう。良問というべきなのか、意地悪問というべきなのか。完答した生徒はどれほどいただろうか。
 ただし、(1)は易しいので、部分点は確保したい。
 
問題
 aを実数とする。
 f(x)=(x^2+3x+a)(x+1)^2 を考える。
 
(1) f(x)の最小値が負になるときのaの範囲を求めよ
(2) a<2とする。このとき、f(x)には極小値を2つもつ。これをα1,α2(α1<α2)とするとき、f(α1)<f(α2)を示せ。
(3) f(x)は x<β において単調減少し、かつ、x=βでf(x)が最小値となる。このようなβが存在するための、aの範囲を求めよ。。

解答 
 
(1)『最小値が負』ということは、要するに『f(x)が負の値になることがある』ということである。
f(x)={(x+3/2)^2+a-9/4}(x+1)^2となるので、
a<9/4のとき、f(-3/2)は負の値となる。
よって、この時は最小値が負となる。
逆にa≧9/4とすると、f(x)は常に正またはゼロであるから、f(x)の最小値はゼロである。
以上より、求める範囲はa<9/4

(2)(注:a<2はα1<-1<α2となる条件)
f’(x)=(x+1)(4x^2+11x+2a+3) である。
g(x)=4x^2+11x+2a+3とする。
a<2のとき、g(-1)<0であるから、g(x)=0の解をβ1,β2(β1<β2)とすると、β1<-1<β2 となる。
 注)2<a<9/4のときは、β1<β2<-1 となる
よって、g(x)=0の二つの解がα1、α2である。
ここで、h(x)=x^2+3x+a   i(x)=(x+1)^2   f(x)=h(x)×i(x)  と書く。
α=α1 または α=α2 とする。
g(α)=0であるから、4α^2=-(11α+2a+3)が成り立つ。よって、
4h(α)=α+2a-3    4i(α)=-3α-2a+1
したがって、h(α2)-h(α1)=(α2-α1)/4 >0
一方、 i(α2)-i(α1)=-3(α2-α1)/4<0  であるから、0<i(α2)<i(α1)

ここで、h(α2)≧0とする。i(α2)>0であるから、f(α2)≧0である。(1)より、f(x)の最小値は負であるから、このときf(α1)<0である。
すなわち、f(α1)<0≦f(α2)が成り立つ。
次に、h(α2)<0とする。このとき、h(α1)<h(α2)<0と、0<i(α2)<i(α1)から、、f(α1)<f(α2)<0 が成り立つ。
結局、f(α1)<f(α2)となる。

(3)a>9/4とすると、(1)から、x=-1で最小値0をとることが分かる。
f'(x)=(x+1)(4x^2+11x+2a+3) であるから、g(x)=4x^2+11x+2a+3=4(x+11/8)^2-(11/8)^2+2a+4とする。
2次方程式g(x)=0の解の判別式をDとする。D<0とa>73/32は同値である。
 
よって、a>73/32のとき、f'(x)はx<-1で負の値となり、f(x)はこの範囲で単調減少となる。
 
a=73/32のときg(x)は重解を持つ。この解をγとすると、g(γ)=0,g(x)>0(x≠γ)であるから、x<-1のとき、f(x)は単調減少である。
 
9/4<a<73/32のときは、g(x)=0が異なる2つの解を持ち、少なくとも一方は-1よりも小さいから、x<-1の範囲で、f(x)が増加関数の時がある。
 
a<2のときは、(2)より、β=α1とすると、x<βのとき、f(x)は単調減少かつ、βで最小値となる。
 
2≦a<9/4のとき。g(x)=0の解をβ1,β2(β1<β2)とすると、β1<β2≦-1 となるので、β=β1とすると、x<βのとき、f(x)は単調減少かつ、βで最小値となる。

a=9/4の時は、x=-3/2,-1でf(x)は最小値0となるので、β=-3/2とすれば、x<βのとき、f(x)は単調減少かつ、βで最小値となる。

以上より、
a≦9/4 、 a≧73/32 のとき、x<βのとき、f(x)は単調減少かつ、βで最小値となるようなβが存在する。。

北海道大学・理系 数学入試問題2022年03月04日

 北海道大学は旧帝大7+1の中では、九大と並んで入りやすい大学だ。このため、数学入試問題も易し目であることが多い。しかし、今年は、どうしたことか、北大にしてはかなり難しい。合格点もだいぶ下がったのではないだろうか。

 問1は、区間をきちんと分けて、落ち着いて考えれば、なんでもない問題。しかし、頭を整理して解答を書く必要がある。思考力のほかに、答案をまとめる文章力も必要。
 この他、問3も結構難しい問題。具体的に積分をすることが困難なので、区間を分けて、少し抽象的議論をする必要がある。
 以下、問1の問題と解答例を示します。
  
問題 1
0≦a≦b≦1とする。、
f(x)=|x(x-1)| + |(x-a)(x-b)|
を考える。xが実数の範囲を動くとき、f(x)は最小値 m を持つものとする。
(1) x<0,x>1のとき、f(x)>mを示せ。
(2) m=f(0) または m=f(1) であることを示せ
(3) a,b が 0≦a≦b≦1 を満たして動くとき、mの最大値を求めよ。

考え方:
 絶対値があるので、それぞれの区間ごとに考えればよい。ただし、x≦0,0≦x≦a,a≦x≦b,b≦x≦1,x≧1の5つの区間に分ける必要があって、めんどう。

解答:
(1)
x<0,x>1のとき、
f(x)=x(x-1)+(x-1)(x-b)であるから、このとき、
f’(x)=4x-(a+b+1)
すなわち、x<0 の時 f’(x)<0 、x>1 の時 f’(x)>0
よって、x<0のとき、f(x)>f(0) 、 x>1のとき、f(x)>f(1) であるので、題意は示された。

(2) x≦0,0≦x≦a,a≦x≦b,b≦x≦1,x≧1の5つの区間に分けて考える。

x≦0,x≧1のときは、(1)より、f(x)の最小値はf(0),f(1)である。
0≦x≦a、b≦x≦1のとき、f(x)は一次多項式であるから、端点で最小値となる。
すなわち、最小値となるのはf(0),f(a),f(b),f(1)のいずれかのうち、一番小さい値である。
a≦x≦bのとき、f(x)は上に凸の2次関数だから、最小値となるのはf(a),f(b)のいずれかのうち、一番小さい値である。

結局、f(x)の最小値は、f(0),f(a),f(b),f(1)のいずれかのうち、一番小さい値であるので、具体的には、
f(0)=ab , f(a)=a(1-a) , f(b)=b(1-b) , f(1)=(1-a)(1-b) のいずれかということになる。
a+b≦1のとき、ab≦a(1-a) , b(1-b) , (1-a)(1-b)
a+b≧1のとき、(1-a)(1-b)≦ab , a(1-a),b(1-b)
であるから、f(x)はx=0またはx=1のときに最小となる。

(3)
最初に a+b≦1 の場合を考える。この時は、ab≦(1-a)(1-b)であるから、m=abである。
0≦a≦b≦1であるから、0≦a≦1/2
この時、ab≦a(1-a)≦1/4 (a=1/2,b=1/2のとき、等号成立)。
次に、a+b≧1 の場合を考える。この時は、ab≧(1-a)(1-b)であるから、m=(1-a)(1-b)である。
α=1-a,β=1-bと置くと、(1-a)(1-b)=αβ≦α(1-α)≦1/4  (α=1/2,β=1/2のとき、等号成立)。
結局、mの最大値は1/4で、a=b=1/2の時に実現する。

九州大学 理系・数学入試問題2022年03月05日

旧帝大7+1の中で、九大は易しい方のはず。それなのに、今年の数学入試問題は、易しくない。北大・九大、どうした。
 
問題2
nを3以上の整数とする。β、αをことなる実数とする。
(1)次を満たす実数A,B,Cと整式Qが存在することを示せ。
x^n = (x-α)(x-β)^2Q+A(x-α)(x-β) + B(x-α) + C
(2)A,B,Cをα、β、nを使って表せ。
(3)nとαを固定した時、β→αとしたときの、Aの極値を求めよ。
 
コメント:
 これが東大の問題だったならば、普通の難易度だったかもしれない。でも、これ九大の問題ですよ。多くの受験生には、計算量も多くて、かなり難しかったのではないだろうか。
 
方針:
(1)は当たり前すぎて、どのように解答したらよいのか。『自明です』では答えにならないので、ここでは『解答の書き方に困った時は数学的帰納法』で答えを書いてみる。
(2)のうち、B,Cはxにα、βを代入すればよいが、Aはそうはゆかないので、ここでは漸化式を使って、もとめる。
 A(n)の数え間違いをしないように、n=2,3の時に正しいかどうかを検算するとよい。
 階差数列の求め方を知らないとこの手法は無理。
(3)は(2)の結果から求める方法と、漸化式から求める方法がある。(2)の結果から求める方法ではロピタルの定理を使うと楽。ここでは漸化式から求める方法にしました。
 
解答:
(1)数学的帰納法を使って、n≧1のとき、Q,A,B,Cが存在することを示す。ただし、Qは整式で、n≧3のときはn-3次整式、n≦2の時はQ=0。
n=1のとき、Q=0,A=0,B=1,C=αとすればよい。
x^n = Q(n)(x-α)(x-β)^2+A(n)(x-α)(x-β) + B(n)(x-α) + C(n) とする。このとき、
x^(n+1) = xQ(n)(x-α)(x-β)^2+xA(n)(x-α)(x-β) + xB(n)(x-α) + xC(n)
={xQ(n)+A(n)}(x-α)(x-β)^2 + {βA(n)+B(n)}(x-α)(x-β)+{βB(n)+C(n)}+αC(n)
よって、題意は証明された。
 
(2)(1)から、次のことが分かる。
A(n+1)=βA(n)+B(n)
B(n+1)=βB(n)+C(n)
C(n+1)=αC(n)
A(1)=0,B(1)=1,C(1)=α
 
以上より、C(n)=α^n
B(n)=Σβ^(k-1)C(n-k) (1≦k≦n-1で和をとる)
=Σβ^(k-1)α^(n-k) = (β^n-α^n)/(β-α)
注)B,Cを求めるのならば、x=α、βを代入した方が楽に求められる。 
A(n)=Σβ^(k-1)B(n-k) (1≦k≦n-1で和をとる) 
=nβ^(n-1)/(β-α) - (β^n-α^n)/(β-α)^2 
={n(β-α)β^(n-1) - β^n + α^n} / (β-α)^2
 
(3) A(n)={n(β-α)β^(n-1) - β^n + α^n} / (β-α)^2 において、β→αとしたときの極限を直接求めても良いのだが、A(n+1)=βA(n)+B(n)から求めることもできる。ここでは、漸化式から求めることとする。
n≧2とする。また、β→αのとき A(n)→a(n) とする。
a(2)=1である。
B(n)=Σβ^(k-1)α^(n-k) であるから、β→αのとき、B(n)→nα^(n-1)
よって、a(n+1)=αa(n)+nα^(n-1) が成り立つ。
すなわち、a(n)=(1/2)n(n-1)α^(n-2)
 
 
 
 
問題3
自然数n,mが次の①式を満たすときに、(1)(2)(3)を答えなさい
  ① n^4=1+210m^2  (累乗を^と書きます)
(1)(n^2-1)/2,(n^2+1)/2は互いに素な整数であることを示せ
(2)n^2-1 は168の倍数であることを示せ
(3) ①を満たすn.mの組を、一つ求めよ

コメント:
これが京大の問題だったならば、まあこんなものかと思うのですが、九大にしてはかなり難しい。
 
方針
(1)はやさしい。(2)も落ち着いて考えれば、それほど難しくないが、整数問題に慣れていないと無理だろう。(3)は四則演算が苦手だと、歯が立たない。
 
解答
 
(1)
nは明らかに奇数だから、n^2-1,n^2+1は偶数。よって、(n^2-1)/2,(n^2+1)/2は整数。
(n^2+1)/2=(n^2-1)/2+1だから、互いに素。
 
(2)
最初に、n^2-1が8の倍数であることを示す。
nは奇数だから n=2k+1 と書く。
このとき、n^2-1=4k(k+1)
k,k+1のどちらかは偶数なので、4k(k+1) は8の倍数。
よって、n^2-1は8の倍数である。
 
次に、n^2-1が3の倍数であることを示す。
①から、(n^2-1)(n^2+1)=210m^2 であるから、
n^2-1、n^2+1 のいずれかは3の倍数である。しかし、n^2+1が3の倍数になることはない。
よって、n^2-1 は3の倍数である。
 
同様にして、n^2-1 は7の倍数である。
 
結局、n^2-1 は 8*3*7=168 の倍数である。
 
(3)
n=41,m=116 は①を満たす。

名古屋大学 理系 数学入試問題2022年03月06日


名古屋大学は難しい問題が出題されることがある。今年は、例年に比べて、易しかった。難しい問題もなかった。しかし、問4は積分の抽象議論なので、慣れないとどのように答えてよいのか、戸惑った受験生も多かっただろう。それから、高校の範囲では、連続の概念を正確に教えていない。このため、問4では、この点をどのように回答にまとめればよいのか戸惑う。 
 
そういうことで、問4。
 
問4 解答の概略
 
x≧0のとき、f(x)≧1を使う。1/xの積分がlogで log(x)→∞(x→∞)により、(1)と(2)の前半は容易。

(2)の後半は、どのように解答すればよいのか、高校の学習範囲がわからないので、私には良く分かりません。
Fn(y)  (2+1/n ≦ y)は連続・単調増加関数で Fn(2+1/n)=0  Fn(∞)=∞ であり、左辺第1項の積分は正の値なので、求めるαnが唯一存在することが分かる。
 
(3)f(x)は単調増加関数だから、左辺第1項<f(2)×{log(2)+log(n)}
また、f(x)は単調増加関数だから、Fn(y)>f(2)×{log(y-2)+log(n)} ただし、y>2+1/n
よって、log(αn-2)<log(2) となる。
すなわち、αn<4 である

東工大の数学入試問題2022年03月06日

 東工大の問題は、難しすぎず、易しすぎず、適切なレベルだ。論考・論証が必要な問題や、計算力が必要な問題などが出題されるが、ヒラメキが必要な問題は少ない。この点では、東大と傾向的には似ており、京・名・阪大とは異なる。このため、駿台模試で、いつもそれなりの成績をとっていれば、本番で失敗することは少ないだろう。
 今年の問1、問2は論考・論証が必要とされる問題で、論理一貫した解答を作成するのに苦労した受験生も多かったことと思う。
 
問1
a, b を実数とし,f(z) =z^2 +az+b とする。
a, b が |a|≦1 |b|≦1 を満たしながら動くとき,
f(z)=0 を満たす複素数 z がとりうる値の範囲を
複素数平面上に図示せよ。
 
考え方:
解が実数の場合と虚数の場合に分けて考える。
こういう、訳の分からない問題は、オーソドックスに解くしか方法はないだろう。ただし、この問題では何がオーソドックスなのか、人によって異なるので、解答方針もいろいろあるだろう。ここでは、解の公式を使って考える。
 
解答
(テキストエディーターで書きにくいので√をRと書きます。R(5)は√5の意味です。)
解の判別式をDと書く。D=a^2-4bである
  
①D≧0のとき、この時は2つの実数解を持つ。
2次方程式の解はa=-1,b=-1の時に最大値、{1+R(5)}/2 a=1,b=-1のときに、最小値 -{1+R(5)}/2 をとる。
一方、b=0のとき、x=-aは解であるから、|a|≦1の範囲をaが動くとき、解をαと書くと、-1≦α≦1 となる。
b=-1のとき、x=(-a±R(a*a+4))/2は解であるから、|a|≦1の範囲をaが動くとき、解をαと書くと、-{1+R(5)}/2≦α≦-1 1≦α≦{1+R(5)}/2 となる。
すなわち、実数解αが取る範囲は、-{1+R(5)}/2≦α≦{1+R(5)}/2 である。
 
②D<0のとき、すなわち、a^2<4b の時は2つの虚数解を持つ。このとき、bは正である。解の実部をx,解の虚部をyと書くと次式が成り立つ。
x=-a/2 y^2=b-(a/2)^2
よって、-2x=a、 x^2+y^2=b
すなわち、|2x|≦1   x^2+y^2≦1 (y≠0) が求める範囲。
 
結局、次の2つが求める領域である。
  -{1+R(5)}/2≦x≦{1+R(5)}/2,y=0
  |x|≦1/2、x^2+y^2≦1
図示は省略します
  
 
問2
正の整数a,b,cの最大公約数が1であるとき、以下の問の答えよ
(1)a+b+c、ab+bc+ca、abcの最大公約数は1であることを示せ。
(2)a+b+c、a^2+b^2+c^2、a^3+b^3+c^3の最大公約数となる正の整数を全て求めよ。
 
考え方:
(1)はやさしい。
(2)を解くにあたって、(1)がヒントになっていることは、推測できるだろう。
a^2+b^2+c^2=(a+b+c)^2-2(ab+bc+ca)
a^3+b^3+c^3=(a+b+c)^3-3(a+b+c)(ab+bc+ca) +3abc
と書くと、2と3が曲者であることが分かる。(1)と同じ議論をして、5以上の素数は約数でないことを最初に示す。ここまでくると、4や9も約数でないことが分かる。すると、最大公約数は1,2,3,6のどれかということになる。最大公約数が、1 2 3,6となるa,b,cの組を見つけるのはたやすい。
解答 
  
(1)
rは素数で、a+b+c、ab+bc+ca、abcの約数であるとする。
rは素数でabcがrの約数なのだから、a,b,cのどれかはrの倍数である。
同じことだからaはrの倍数であるとする。
ab+bc+ca=a(b+c)+bcがrの倍数で、aもrの倍数なのだから、bcはrの倍数である。
よって、b,cのどれかはrの倍数であるので、同じことだからbはrの倍数であるとする。
a+b+cがrの倍数であり、a,bがrの倍数なのだから、cはrの倍数である。
よって、rはa,b,cすべての約数である。このため、r=1
すなわち、a+b+c、ab+bc+ca、abcの最大公約数は1である。
 
(2)
以下の2つの恒等式を使う。(①式、②式とする)
a^2+b^2+c^2=(a+b+c)^2-2(ab+bc+ca) …① 式
a^3+b^3+c^3=(a+b+c)^3-3(a+b+c)(ab+bc+ca) +3abc …②式
 
正の整数 r が、a+b+c、a^2+b^2+c^2、a^3+b^3+c^3 の公約数であるとする。
  
rが5以上の素数であるとする。②式から、3abcはrの倍数なので、abcはrの倍数である。
同様に、①式から、ab+bc+caはrの倍数である。
これは、(1)の結論に矛盾するので、5以上の素数は a+b+c、 a^2+b^2+c^2、a^3+b^3+c^3 の公約数ではない。
  
次に、r=9とする。
②式より、abcは3の倍数である。
また、①式より、ab+bc+caは3の倍数である。
これは、(1)の結論に矛盾するので、9は a+b+c、a^2+b^2+c^2、a^3+b^3+c^3 の公約数ではない。
  
同様に、4は a+b+c、a^2+b^2+c^2、a^3+b^3+c^3 の公約数ではない。
  
以上より、a+b+c、a^2+b^2+c^2、a^3+b^3+c^3 の公約数である可能性がある数は1,2,3,6である。
(a,b,c)=(1,1,3),(1,1,2),(1,1,1),(1,1,4)とすると、それぞれ、最大公約数は、1,2,3,6となる。
  
以上より、求める値は1,2,3,6

大学入試の数学 7+1の難易度2022年03月07日

旧帝大7大学と東工大の入試問題・数学について。
今年は、九大、北大が難しかった。東大・京大で出題されてもおかしくないような問題がありました。東北も難しいのがありました。
そんなわけで、東大・京大・東工大・東北・北大・九大はどれも易しくなかった。受験勉強に取り組んでいないと、合格点に届かなかったと思います。
名大・阪大は難しい問題が出題されることもあるけれど、今年はそんなことはなく取りつきやすかったと思います。

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