本の紹介-ブロートン北太平洋航海記2022年03月02日

 
ウィリアム・ブロートン/著、吉田俊則/訳『ブロートン北太平洋航海記』東洋書店新社 (2021/9)
 
 幕末に、日本近海を航海調査測量したブロートンの航海記。
 ブロートン一行は、1795年3月、イギリスを出港した後、喜望峰を回ってオセアニアを経由して、翌年ハワイに至る。その後、北アメリカ西海岸に至り、再びハワイを経由して、1796年9月に岩手県沖、さらに北上し虻田沖にて松前藩士で虻田場所地行主の酒井栄と会談するも意志疎通ができなかった。その後、絵鞆から、北海道東方沖を通って、歯舞諸島、千島沖を通って、中千島のブロートン島に至る。島名はこの時にちなんでつけられたもの。その後は、太平洋を南下し、琉球、台湾などを測量し、マカオに到着した。
 翌年、1797年は、台湾・宮古に至るもそこで難破し、再びマカオに戻り、その後はスクーナ船で、澎湖・台湾・尖閣・慶良間・沖縄を通り、日本の太平洋岸を北上し、再び絵鞆に至り、今度は、北海道西岸を通って、タタール海峡に入り、海峡最狭部入口に到達する。しかし、水深が浅く、塩分濃度も低く、海流も少なく、遠くに陸地も見えることから、サハリンと大陸との間は、船舶通行不能と判断し、9月16日に引き返した。その後は、大陸沿岸から朝鮮半島沿岸を通って、吐噶喇列島・尖閣諸島を経由して、マカオに帰還した。
 航海の途中、薪水や食料の補給で上陸し、地元民との交流があるが、結構煙たがられていることや、そもそも言葉が通じないこともあって、人的交流には苦慮している。それから、経度の測定のためには、正確な時間が必要となるが、時計の時間補正に苦労している記述が随所にみられる。

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