京都大学・理系 数学入試問題 ― 2022年03月03日
京都大学理系の問6は、東大理系の問6と雰囲気が似ている。ただし、東大のは「場合の数」を絡めているので、数え落としが多い。この問題は素直に考えればよい。東大の問6に比べて、どちらが難しいか、似たようなものだろうが、こちらの方が点は取りやすい。
問題 6
数列{x(n)},{y(n)}を次式で定義するとき、{x(n)-y(n)}をもとめよ。
x(1)=0 x(n+1)=x(n)+n+2×cos(2πx(n)/3) (n=1,2,3,…)
y(3m+1)=3m,y(3m+2)=3m+2,y(3m+3)=3m+4 (m=0,1,2,…)
方針:
このような数列は、一般的にどうすればよいのか、分からないので、最初のいくつかを求めて、考えてみることだ。一般解が推定できれば、後は数学的帰納法を使えばよい。
なお、数列は、x(n+1)-x(n)≒nなのだから、典型的な階差数列に近いものに感じる。
x(1)=0
x(2)=3
x(3)=7=3*2+1
x(4)=9=3*3
x(5)=15=3*5
x(6)=22=3*7+1
x(7)=27=3*9
x(8)=36=3*12
x(9)=46*3*15+1
x(10)=54=3*18
となる。普通はx(4)ぐらいまで見ればわかるはずだが、cosの項があるために、3回ずつで様子が異なるので、x(10)まで調べた。
x(1)=3*0 x(4)=3*3 x(7)=3*9 x(10)=3*18
このためz(m)=x(3m+1)/3とすると、z(0)=0,z(1)=3,z(2)=9,z(3)=18 であるから、x(3m+1)=z(m)*3=m(m+1)*(9/2)と推定できる。
解答
x(3m+1)=m(m+1)*(9/2) とする。ただし、m=0,1,2,…。この数列が題意を満たすことを数学的帰納法によって示す。
最初にm=0の時は題意を満たす。
次に、、
x(3m+2)=m(m+1)*(9/2)+3m+1+2=m(m+1)*(9/2)+3m+3
x(3m+3)=m(m+1)*(9/2)+3m+3+3m+2+2=m(m+1)*(9/2)+6m+7
x(3m+4)=m(m+1)*(9/2)+6m+7+3m+3-1=m(m+1)*(9/2)+9m+9=(m+1)(m+2)*9/2
よって、x(3(m+1)+1)=(m+1)(m+2)*9/2となって、
数学的帰納法から、x(3m+1)=m(m+1)*(9/2)である。
また、当然に、上で求めたx(3m+2),x(3m+3)も解である。
x(3m+1)-y(3m+1)=m(m+1)*(9/2)-3m=(1/2)(3m)(3m+1)
x(3m+2)-y(3m+2)=m(m+1)*(9/2)+3m+3-3m-2=(1/2)(3m+1)(3m+2)
x(3m+3)-y(3m+3)=m(m+1)*(9/2)+6m+7-3m-4=(1/2)(3m+2)(3m+3)
結局、
x(n)-y(n)=n(n-1)/2
問題 6
数列{x(n)},{y(n)}を次式で定義するとき、{x(n)-y(n)}をもとめよ。
x(1)=0 x(n+1)=x(n)+n+2×cos(2πx(n)/3) (n=1,2,3,…)
y(3m+1)=3m,y(3m+2)=3m+2,y(3m+3)=3m+4 (m=0,1,2,…)
方針:
このような数列は、一般的にどうすればよいのか、分からないので、最初のいくつかを求めて、考えてみることだ。一般解が推定できれば、後は数学的帰納法を使えばよい。
なお、数列は、x(n+1)-x(n)≒nなのだから、典型的な階差数列に近いものに感じる。
x(1)=0
x(2)=3
x(3)=7=3*2+1
x(4)=9=3*3
x(5)=15=3*5
x(6)=22=3*7+1
x(7)=27=3*9
x(8)=36=3*12
x(9)=46*3*15+1
x(10)=54=3*18
となる。普通はx(4)ぐらいまで見ればわかるはずだが、cosの項があるために、3回ずつで様子が異なるので、x(10)まで調べた。
x(1)=3*0 x(4)=3*3 x(7)=3*9 x(10)=3*18
このためz(m)=x(3m+1)/3とすると、z(0)=0,z(1)=3,z(2)=9,z(3)=18 であるから、x(3m+1)=z(m)*3=m(m+1)*(9/2)と推定できる。
解答
x(3m+1)=m(m+1)*(9/2) とする。ただし、m=0,1,2,…。この数列が題意を満たすことを数学的帰納法によって示す。
最初にm=0の時は題意を満たす。
次に、、
x(3m+2)=m(m+1)*(9/2)+3m+1+2=m(m+1)*(9/2)+3m+3
x(3m+3)=m(m+1)*(9/2)+3m+3+3m+2+2=m(m+1)*(9/2)+6m+7
x(3m+4)=m(m+1)*(9/2)+6m+7+3m+3-1=m(m+1)*(9/2)+9m+9=(m+1)(m+2)*9/2
よって、x(3(m+1)+1)=(m+1)(m+2)*9/2となって、
数学的帰納法から、x(3m+1)=m(m+1)*(9/2)である。
また、当然に、上で求めたx(3m+2),x(3m+3)も解である。
x(3m+1)-y(3m+1)=m(m+1)*(9/2)-3m=(1/2)(3m)(3m+1)
x(3m+2)-y(3m+2)=m(m+1)*(9/2)+3m+3-3m-2=(1/2)(3m+1)(3m+2)
x(3m+3)-y(3m+3)=m(m+1)*(9/2)+6m+7-3m-4=(1/2)(3m+2)(3m+3)
結局、
x(n)-y(n)=n(n-1)/2
京都大学・理系 数学入試問題 ― 2022年03月03日
京大、東大とも、簡単ではないけれど、それぞれ特徴がある。東大は計算量も多く、高度な思考力も要求されるが、日ごろ受験勉強に取り組んでいれば何とかなるだろう。京大は計算量はそれほどでもないが、問題3など、解答方針が思いつかないかもしれない。
問題3 (累乗を^と書きます)
n^2+2,n^4+2,n^6+2の最大公約数を求めよ。ただし、nは正の整数。
考え方
日頃、問題集に取り組んでいても、正解が思いつくとは限らない難しい問題。
ここでは、最大公約数がrだったら、どんなことが成り立つだろうかと考えた。
すなわち、rがn^2+2の約数だったとしたら、6はrの倍数でなくてはならないことを最初に示す。
解答
n≧2の場合を考える。
n^2+2 がrの倍数とする。ただし、rは正の整数。
このとき、n^2=rN-2 (Nは正の整数でrN≧6)と書けるので、
n^4+2=rN(rN-4)+6となる。この値がrの倍数の場合は、6はrの倍数である。
よって、n^2+2,n^4+2の約数は、1,2,3,6以外にはない。
n=1のときも、n^2+2,n^4+2の約数は、1,2,3,6以外にはない。(n=1のときは、1,3が約数です)
最初に、2がn^2+2,n^4+2,n^6+2の約数であるための条件を探す。
nが偶数の時は、n^2+2,n^4+2,n^6+2はすべて2の倍数であり、nが奇数の時は2の倍数ではない。
次に、3がn^2+2,n^4+2,n^6+2の約数であるための条件を探す
n=3k+3 (kは0または正の整数)のとき、n^2+2は3の倍数ではない。
n=3k+1,n=3k+2(kは0または正の整数)のときn^2+2,n^4+2,n^6+2はすべて3の倍数である。
以上より、次のようにまとめられる。ただし、kはゼロまたは正の整数とする。
n=6k+1のとき、最大公約数は3
n=6k+2のとき、最大公約数は6
n=6k+3のとき、最大公約数は1
n=6k+4のとき、最大公約数は6
n=6k+5のとき、最大公約数は3
n=6k+6のとき、最大公約数は2
問題3 (累乗を^と書きます)
n^2+2,n^4+2,n^6+2の最大公約数を求めよ。ただし、nは正の整数。
考え方
日頃、問題集に取り組んでいても、正解が思いつくとは限らない難しい問題。
ここでは、最大公約数がrだったら、どんなことが成り立つだろうかと考えた。
すなわち、rがn^2+2の約数だったとしたら、6はrの倍数でなくてはならないことを最初に示す。
解答
n≧2の場合を考える。
n^2+2 がrの倍数とする。ただし、rは正の整数。
このとき、n^2=rN-2 (Nは正の整数でrN≧6)と書けるので、
n^4+2=rN(rN-4)+6となる。この値がrの倍数の場合は、6はrの倍数である。
よって、n^2+2,n^4+2の約数は、1,2,3,6以外にはない。
n=1のときも、n^2+2,n^4+2の約数は、1,2,3,6以外にはない。(n=1のときは、1,3が約数です)
最初に、2がn^2+2,n^4+2,n^6+2の約数であるための条件を探す。
nが偶数の時は、n^2+2,n^4+2,n^6+2はすべて2の倍数であり、nが奇数の時は2の倍数ではない。
次に、3がn^2+2,n^4+2,n^6+2の約数であるための条件を探す
n=3k+3 (kは0または正の整数)のとき、n^2+2は3の倍数ではない。
n=3k+1,n=3k+2(kは0または正の整数)のときn^2+2,n^4+2,n^6+2はすべて3の倍数である。
以上より、次のようにまとめられる。ただし、kはゼロまたは正の整数とする。
n=6k+1のとき、最大公約数は3
n=6k+2のとき、最大公約数は6
n=6k+3のとき、最大公約数は1
n=6k+4のとき、最大公約数は6
n=6k+5のとき、最大公約数は3
n=6k+6のとき、最大公約数は2
東北大学理系数学入試問題 ― 2022年03月03日
東北大学は、かつては難問が出題されたが、近年はそんなことはなかった。ところが、今年の問2は難しい。今年の主要大学入試問題の中で、一番難しかったと思う。この問題は決して、奇をてらったようなものではなく、普通に高校の範囲で解けるのだけれど、時間内に正解に到達するのは、かなり困難だろう。良問というべきなのか、意地悪問というべきなのか。完答した生徒はどれほどいただろうか。
ただし、(1)は易しいので、部分点は確保したい。
問題
aを実数とする。
f(x)=(x^2+3x+a)(x+1)^2 を考える。
(1) f(x)の最小値が負になるときのaの範囲を求めよ
(2) a<2とする。このとき、f(x)には極小値を2つもつ。これをα1,α2(α1<α2)とするとき、f(α1)<f(α2)を示せ。
(3) f(x)は x<β において単調減少し、かつ、x=βでf(x)が最小値となる。このようなβが存在するための、aの範囲を求めよ。。
解答
(1)『最小値が負』ということは、要するに『f(x)が負の値になることがある』ということである。
f(x)={(x+3/2)^2+a-9/4}(x+1)^2となるので、
a<9/4のとき、f(-3/2)は負の値となる。
よって、この時は最小値が負となる。
逆にa≧9/4とすると、f(x)は常に正またはゼロであるから、f(x)の最小値はゼロである。
以上より、求める範囲はa<9/4
(2)(注:a<2はα1<-1<α2となる条件)
f’(x)=(x+1)(4x^2+11x+2a+3) である。
g(x)=4x^2+11x+2a+3とする。
a<2のとき、g(-1)<0であるから、g(x)=0の解をβ1,β2(β1<β2)とすると、β1<-1<β2 となる。
注)2<a<9/4のときは、β1<β2<-1 となる
よって、g(x)=0の二つの解がα1、α2である。
ここで、h(x)=x^2+3x+a i(x)=(x+1)^2 f(x)=h(x)×i(x) と書く。
α=α1 または α=α2 とする。
g(α)=0であるから、4α^2=-(11α+2a+3)が成り立つ。よって、
4h(α)=α+2a-3 4i(α)=-3α-2a+1
したがって、h(α2)-h(α1)=(α2-α1)/4 >0
一方、 i(α2)-i(α1)=-3(α2-α1)/4<0 であるから、0<i(α2)<i(α1)
ここで、h(α2)≧0とする。i(α2)>0であるから、f(α2)≧0である。(1)より、f(x)の最小値は負であるから、このときf(α1)<0である。
すなわち、f(α1)<0≦f(α2)が成り立つ。
次に、h(α2)<0とする。このとき、h(α1)<h(α2)<0と、0<i(α2)<i(α1)から、、f(α1)<f(α2)<0 が成り立つ。
結局、f(α1)<f(α2)となる。
(3)a>9/4とすると、(1)から、x=-1で最小値0をとることが分かる。
f'(x)=(x+1)(4x^2+11x+2a+3) であるから、g(x)=4x^2+11x+2a+3=4(x+11/8)^2-(11/8)^2+2a+4とする。
2次方程式g(x)=0の解の判別式をDとする。D<0とa>73/32は同値である。
よって、a>73/32のとき、f'(x)はx<-1で負の値となり、f(x)はこの範囲で単調減少となる。
a=73/32のときg(x)は重解を持つ。この解をγとすると、g(γ)=0,g(x)>0(x≠γ)であるから、x<-1のとき、f(x)は単調減少である。
9/4<a<73/32のときは、g(x)=0が異なる2つの解を持ち、少なくとも一方は-1よりも小さいから、x<-1の範囲で、f(x)が増加関数の時がある。
a<2のときは、(2)より、β=α1とすると、x<βのとき、f(x)は単調減少かつ、βで最小値となる。
2≦a<9/4のとき。g(x)=0の解をβ1,β2(β1<β2)とすると、β1<β2≦-1 となるので、β=β1とすると、x<βのとき、f(x)は単調減少かつ、βで最小値となる。
a=9/4の時は、x=-3/2,-1でf(x)は最小値0となるので、β=-3/2とすれば、x<βのとき、f(x)は単調減少かつ、βで最小値となる。
以上より、
a≦9/4 、 a≧73/32 のとき、x<βのとき、f(x)は単調減少かつ、βで最小値となるようなβが存在する。。
ただし、(1)は易しいので、部分点は確保したい。
問題
aを実数とする。
f(x)=(x^2+3x+a)(x+1)^2 を考える。
(1) f(x)の最小値が負になるときのaの範囲を求めよ
(2) a<2とする。このとき、f(x)には極小値を2つもつ。これをα1,α2(α1<α2)とするとき、f(α1)<f(α2)を示せ。
(3) f(x)は x<β において単調減少し、かつ、x=βでf(x)が最小値となる。このようなβが存在するための、aの範囲を求めよ。。
解答
(1)『最小値が負』ということは、要するに『f(x)が負の値になることがある』ということである。
f(x)={(x+3/2)^2+a-9/4}(x+1)^2となるので、
a<9/4のとき、f(-3/2)は負の値となる。
よって、この時は最小値が負となる。
逆にa≧9/4とすると、f(x)は常に正またはゼロであるから、f(x)の最小値はゼロである。
以上より、求める範囲はa<9/4
(2)(注:a<2はα1<-1<α2となる条件)
f’(x)=(x+1)(4x^2+11x+2a+3) である。
g(x)=4x^2+11x+2a+3とする。
a<2のとき、g(-1)<0であるから、g(x)=0の解をβ1,β2(β1<β2)とすると、β1<-1<β2 となる。
注)2<a<9/4のときは、β1<β2<-1 となる
よって、g(x)=0の二つの解がα1、α2である。
ここで、h(x)=x^2+3x+a i(x)=(x+1)^2 f(x)=h(x)×i(x) と書く。
α=α1 または α=α2 とする。
g(α)=0であるから、4α^2=-(11α+2a+3)が成り立つ。よって、
4h(α)=α+2a-3 4i(α)=-3α-2a+1
したがって、h(α2)-h(α1)=(α2-α1)/4 >0
一方、 i(α2)-i(α1)=-3(α2-α1)/4<0 であるから、0<i(α2)<i(α1)
ここで、h(α2)≧0とする。i(α2)>0であるから、f(α2)≧0である。(1)より、f(x)の最小値は負であるから、このときf(α1)<0である。
すなわち、f(α1)<0≦f(α2)が成り立つ。
次に、h(α2)<0とする。このとき、h(α1)<h(α2)<0と、0<i(α2)<i(α1)から、、f(α1)<f(α2)<0 が成り立つ。
結局、f(α1)<f(α2)となる。
(3)a>9/4とすると、(1)から、x=-1で最小値0をとることが分かる。
f'(x)=(x+1)(4x^2+11x+2a+3) であるから、g(x)=4x^2+11x+2a+3=4(x+11/8)^2-(11/8)^2+2a+4とする。
2次方程式g(x)=0の解の判別式をDとする。D<0とa>73/32は同値である。
よって、a>73/32のとき、f'(x)はx<-1で負の値となり、f(x)はこの範囲で単調減少となる。
a=73/32のときg(x)は重解を持つ。この解をγとすると、g(γ)=0,g(x)>0(x≠γ)であるから、x<-1のとき、f(x)は単調減少である。
9/4<a<73/32のときは、g(x)=0が異なる2つの解を持ち、少なくとも一方は-1よりも小さいから、x<-1の範囲で、f(x)が増加関数の時がある。
a<2のときは、(2)より、β=α1とすると、x<βのとき、f(x)は単調減少かつ、βで最小値となる。
2≦a<9/4のとき。g(x)=0の解をβ1,β2(β1<β2)とすると、β1<β2≦-1 となるので、β=β1とすると、x<βのとき、f(x)は単調減少かつ、βで最小値となる。
a=9/4の時は、x=-3/2,-1でf(x)は最小値0となるので、β=-3/2とすれば、x<βのとき、f(x)は単調減少かつ、βで最小値となる。
以上より、
a≦9/4 、 a≧73/32 のとき、x<βのとき、f(x)は単調減少かつ、βで最小値となるようなβが存在する。。