キーウ ― 2022年04月01日

日本語で、キエフをキーウに変えるそうである。現地の音に近いカタカナ表記をするのが基本だから、キエフを変更するのはわかるが、キーウにするのはだいぶ違うように思う。現地の発音をカタカナ表記するのは難しいが、もう少し良く考えてからでもよかったのではないか。
ウクライナ語では Київ
ロシア語では Киев
ウクライナ語の英語表記は「Kyiv」が使われる。また、ロシア語の英語表記は「Kiev」が使われる。
どの表記を見ても明らかなことは、K音の次の母音と、その次の母音が、異なった音であることが明確だ。これは日本語表記の長音記号とは異なるので、日本語表記はずいぶん現地音から遠いように感じる。日本語の母音が貧弱なので仕方ないのか。
最後の子音Vは、ドイツ語・ロシア語・ウクライナ語の順に弱くなるようだが、日本語の母音「ウ」とは異なる。ア行の文字ではなく、別の行を使えなかったのだろうか。もっとも、ワ行ウ段には文字がないので、結局のところア行を使わざるを得ないのかなー。
ウクライナ語のКиївは、私には「ケイフ」「キイフ」のように聞こえる。
写真は、ソ連崩壊後の1993年に使用されたキエフ郵便局の消印。ソ連時代のものがそのまま使われている。「キエフ」はロシア語・ウクライナ語併記。
ソ連時代のウクライナでは、ウクライナ語が母語の人とロシア語が母語の人がいたので、両方の人に配慮した政治が行われていた。ウクライナが独立して、いわゆる西側派の人が大統領になると、ロシア語使用が禁止され、ロシア系住民の人権弾圧が国是となった。
キーウ ― 2022年04月02日
本-同志少女よ、敵を撃て(小説) ― 2022年04月03日

逢坂冬馬/著『同志少女よ、敵を撃て』早川書房 (2021/11)
独ソ戦争を題材とした小説。著者は独ソ戦についてある程度は調べたのだろうが、本書はフィクションなので、歴史の事実・独ソ戦の実態とはかけ離れている。
本の紹介-占領軍被害の研究 ― 2022年04月04日

藤目ゆき/著『占領軍被害の研究』六花出版 (2021/12)
戦後、日本が米軍の占領下にあった時の米軍による犯罪被害については、当時検閲で報道されなかったため、あまり知られていない。占領が終結した後も、日本はアメリカと軍事同盟を結び、米軍支持派の自民党が政権を担ってきたため、報道される機会は少なかった。
本書は、米軍占領下の米軍犯罪被害や米軍命令による労働災害などに関する研究書。
著者は大阪大学・人間科学研究科教授で日本の近現代史が専門。
私は、この分野について知識がないので、本書の評価はできない。参考のため、章ごとの目次を記す。
第一章 研究の意義と方法
第二章 日本軍武器弾薬処理に伴う人身被害
第三章 占領軍労務動員と労働災害死傷
第四章 暴行・傷害・殺人
第五章 軍事演習被害・朝鮮戦争被害
第六章 占領軍人身被害補償運動の歴史的意義
ロシア軍、キエフ周辺から撤退・・・やる気のない戦争 ― 2022年04月05日
ウクライナ軍がキエフ地域を解放したかのような言説があるが、事実はロシア軍が撤退したところに、ウクライナ軍が入ったということだ。ロシア軍はなぜ撤退したのか、この点について、ニュース報道等で、まともな解説がない。
現在の状況は、昨年から予想できたことの一つだ。そもそも、ロシアがウクライナに侵攻した目的は何か。
元外交官の孫崎亮氏が開戦当初から正しい指摘をしている。例えば、3/4のTwitterには以下のように書かれている。
『繰り返しますがロシアの今回の行動は反ウクライナでもウクライナを奪取しようという動機ではない。①NATO拡大によって隣接地に短距離・中距離弾道ミサイルの配備を阻止、②東部二州の「自治権」確立。』
1)プーチンは昨年、ベラルーシでロシア軍演習を行い、兵力を見せつけることで、①②の目的を達成しようとした。
2)これが、不可能とわかると、今度はウクライナに侵攻し、戦車を見せつけた。①②が目的なのだから、犠牲者をなるべく少なくするため、戦車の長い車列を作り、軍事施設の攻撃なども最小限にとどめた。
3)それでも、ウクライナ大統領が停戦に応じないことがわかると、キエフを包囲して、圧力を加えた。また第2の都市ハリコフを攻撃し、次はキエフとの威圧を与えた。同時に、マリウポリを攻撃し、ネオナチの排除を図った。
4)ウクライナ大統領には、ウクライナ人の死に関心がなく、自らの権力と取り巻きの利益にしか関心がないのだと判断し、さらにNATOへの早期加盟はないと判断すると、戦局を転換し、東部の解放に全力を挙げだした。
これで、戦争が終わるかどうかはウクライナ側の態度いかんにかかっている。プーチンの態度は昨年から変わっておらず、『反ウクライナでもウクライナを奪取しようという動機ではない。①NATO拡大による隣接地への短距離・中距離弾道ミサイル配備を阻止、②東部二州の「自治権」確立。』 これは、以前から、孫崎氏が指摘している通りで、プーチンの態度には全く変化がない。
アメリカ・ウクライナがNATO加盟を目指すならば、軍事施設やインフラへの攻撃は決して終わらない。ウクライナが、東部攻撃をやめないならば、特に、ロシア系住民の人権弾圧政策をやめないならば、ロシアのウクライナ攻撃は決して終わらない。もっとも、東部問題はロシアがこの地域を解放し、ネオナチの多くを逮捕すれば、自然に終了する問題です。
ウクライナ・ロシア戦争に関して、孫崎亮氏の解説は、簡潔で分かりやすく、正確です。
https://www.jacom.or.jp/nousei/rensai/2022/03/220314-57498.php
https://www.jacom.or.jp/nousei/rensai/2022/03/220315-57529.php
広瀬陽子先生 ― 2022年04月06日
広瀬陽子先生がウクライナ紛争の解説で頻繁にTVに出演しておられる。広瀬陽子先生はコーカサス地方・特にアゼルバイジャンの民俗が専門で、政治・外交・軍事の専門家ではなかったと思っていたが、最近はロシア・ウクライナの外交・戦争の解説が多い。先週のテレビ朝日で、次はオデッサ攻撃で、その後、ロシア軍は「沿ド二エステル共和国」に入るとの予想をしておられた。これまで、広瀬陽子先生の予想は、だいたい外れていたように思うので、この予想もあまり信用していなかったが、テレビであれだけはっきり言ったので、よほど自信のある予想なのかと思った。
「沿ド二エステル共和国」と言っても、多くの人には、なじみがないと思い、この国で発行された切手を紹介した。
http://cccpcamera.asablo.jp/blog/2022/03/29/9476683
その後のロシア軍の展開を見ると、オデッサに対するロケット攻撃はあったものの、上陸・占領の兆候はなく、ましてや、沿ド二エステル共和国進軍の兆候は全くない。それどころか、ロシア軍はキエフ周辺から撤退し、東部戦線に軸足を移している。
この状況が、どのような理由で起こったのか、外交評論家の孫崎先生の説を読めば、容易に予想できたことだ。3/4のTwitterで孫崎先生は次のように書いている。
『繰り返しますがロシアの今回の行動は反ウクライナでもウクライナを奪取しようという動機ではない。①NATO拡大によって隣接地に短距離・中距離弾道ミサイルの配備を阻止、②東部二州の「自治権」確立。』
ロシア軍の行動は、孫崎先生の言う①②を達成することであり、これまでのロシア軍は、この二つの目的達成のために、合理的な行動をしていることが分かるだろう。
これに対して、広瀬陽子先生の解説では、戦況の見通しが外れている。『誤った歴史知識』『デタラメな現状認識』を基準にした将来の予想は、外れることが多いという、典型的な解説に感じる。
もう少し考えてから話せばいいのに。広瀬陽子先生のコーカサス民俗の説明は、わかりやすくて面白いのに、最近のテレビでの解説が残念です。
「沿ド二エステル共和国」と言っても、多くの人には、なじみがないと思い、この国で発行された切手を紹介した。
http://cccpcamera.asablo.jp/blog/2022/03/29/9476683
その後のロシア軍の展開を見ると、オデッサに対するロケット攻撃はあったものの、上陸・占領の兆候はなく、ましてや、沿ド二エステル共和国進軍の兆候は全くない。それどころか、ロシア軍はキエフ周辺から撤退し、東部戦線に軸足を移している。
この状況が、どのような理由で起こったのか、外交評論家の孫崎先生の説を読めば、容易に予想できたことだ。3/4のTwitterで孫崎先生は次のように書いている。
『繰り返しますがロシアの今回の行動は反ウクライナでもウクライナを奪取しようという動機ではない。①NATO拡大によって隣接地に短距離・中距離弾道ミサイルの配備を阻止、②東部二州の「自治権」確立。』
ロシア軍の行動は、孫崎先生の言う①②を達成することであり、これまでのロシア軍は、この二つの目的達成のために、合理的な行動をしていることが分かるだろう。
これに対して、広瀬陽子先生の解説では、戦況の見通しが外れている。『誤った歴史知識』『デタラメな現状認識』を基準にした将来の予想は、外れることが多いという、典型的な解説に感じる。
もう少し考えてから話せばいいのに。広瀬陽子先生のコーカサス民俗の説明は、わかりやすくて面白いのに、最近のテレビでの解説が残念です。
本の紹介-北海道の縄文文化 こころと暮らし ― 2022年04月07日

三浦正人/監『北海道の縄文文化 こころと暮らし』亜璃西社 (2021/12)
カラー写真が多くて、見て楽しめる。北海道西部の遺物が多い。