本の紹介-帝国の島2022年06月26日


松島泰勝/著『帝国の島-琉球・尖閣に対する植民地主義と闘う』明石書店 (2020/8)
  
 著者は竜谷大学経済学部教授で、琉球独立論者。
 日本政府は、現在、尖閣諸島は日本固有の領土と主張している。本書はこれに対して異議を唱える。尖閣問題に対する、日本政府の主張への反論という観点から本書を読むと、歴史的経緯など良くまとまって書かれている。しかし、本の書き方が良くないのか、日本政府の論拠とそれへの反論が、どれがどれなのか、わかりにくい。
 本書は、尖閣問題以外に、琉球併呑の不当性、戦時中の日本軍人による住民弾圧、人類学者による琉球墳墓からの遺骨泥棒、琉球独立問題なども話題とされている。章ごとに分かれているのだけれど、各々の問題に、尖閣問題が複雑に絡んでいる記述となっており読みにくい。問題が絡んでいるのは事実としても、もう少し整理をした記述にしてほしかった。

 参考のために、目次を記す。
目次
はじめに
Ⅰ 日本政府はどのように琉球、尖閣諸島を奪ったのか
 1 植民地主義を正当化する「無主地先占」論
 2 尖閣日本領有論者に対する批判
 3 「無主地先占」論と民族自決権との対立
 4 琉球、尖閣諸島は「日本固有の領土」ではない
 5 歴史認識問題としての尖閣問題
Ⅱ 日本帝国のなかの尖閣諸島
 1 日本による尖閣諸島領有過程の問題点
 2 他の島撰はどのように領有化されたのか
 3 山県有朋の「琉球戦略」と尖閣諸島
Ⅲ 尖閣諸島における経済的植民地主義
 1 古賀辰四郎による植民的経営としての尖閣開発
 2 寄留商人による琉球の経済的搾取
 3 油田発見後の日・中・台による「資源争奪」
 4 「県益論」と「国益論」との「対立」
 5 琉球における資源ナショナリズムの萌芽と挫折
 6 稲嶺一郎と尖閣諸島
 7 なぜ今でも尖閣油田開発ができないのか
Ⅳ サンフランシスコ平和条約体制下の琉球と尖閣諸島
 1 サンフランシスコ平和条約体制下における琉球の主権問題
 2 アジアの独立闘争に参加した琉球人
 3 戦後東アジアにおける琉球独立運動
 4 李承晩による琉球独立運動支援
 5 日本の戦後期尖閣領有論の根拠
 6 なぜ中国、台湾は尖閣領有を主張しているのかーその歴史的、国際法的な根拠
Ⅴ 日本の軍国主義化の拠点としての尖閣諸島と琉球
 1 地政学上の拠点としての尖閣諸島
 2 尖閣諸島で軍隊は住民を守らなかった
 3 八重山諸島の教科書選定と「島懊防衛」との関係-教育による軍官民共生共死体制へ
 4 教科書問題、自衛隊基地建設、尖閣諸島のトライアングル
 5 沖縄戦に関する教科書検定問題と日本の軍国主義化
 6 琉球列島での自衛隊基地建設と尖閣問題との関係
Ⅵ 琉球人遺骨問題と尖閣諸島問題との共通性
 1 学知の植民地主義とは何か
 2 琉球における学知の植民地主義
 3 皇民化教育という植民地主義政策
 4 天皇制国家による琉球併呑140年i琉球から天皇制を批判する
 5 琉球人差別を止めない日本人類学会との闘い
 6 京大総長による「琉球人差別発言事件」の背景
 7 どのように琉球人遺骨を墓に戻すのか
Ⅶ 琉球独立と尖閣諸島問題
 1 琉球人と尖閣諸島問題との関係
 2 琉球の脱植民地化に向けた思想的闘い
 3 尖閣帰属論から琉球独立論へ
 4 尖閣諸島は琉球のものなのか
 5 「日本復帰体制」から「琉球独立体制」へ
 6 どのように民族自決権に基づいて独立するのか
注 索引 あとがき

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