本の紹介ーQ&A宗教トラブル110番 ― 2022年07月24日

山口広、滝本太郎、紀藤正樹/著『Q&A宗教トラブル110番 第3版』民事法研究会(2015/3)
オウム真理教事件の時、マインドコントロールが社会の話題になった。
本書は、宗教被害者の弁護に当たっている弁護士による執筆で、新興宗教やセミナーなどのマインドコントロール被害を扱ったもの。どのような手口か、どのようにマインドコントロールされるか、どうしたら防げるかなど、一般論のように書かれている。ただし、統一教会による被害など、具体的なことの記載もある。
7月8日、安倍元総理が銃殺された。犯人は、統一教会被害者家族で、安倍元総理が最も有名な統一教会のシンパであることが殺害動機だった。しかしこれだけで、銃殺まで行くのか、飛躍が大きいので、今後の捜査により、詳しい動機が解明される可能性がある。
安倍元総理は、昨年秋、統一教会の関連団体に、統一教会・韓鶴子総裁を称賛するビデオメッセージを送った。安倍晋三元総理が、父親の秘書だった時やその後政界入りした頃、統一教会の霊感商法は社会の大きな関心になっていたので、仮に頭の悪い人だったとしても、さすがに記憶していただろう。安倍元総理のビデオメッセージが霊感商法やマインドコントロールに使用される可能性があることは明白であったため、被害者弁護団が、安倍元総理に抗議書を送付した。これに対して、安倍元総理は、抗議書を突き返すという対応をとった。
本書には、政治家と宗教被害の関係には特に記載はない。しかし、知識人が無知のままにカルトを称賛することの弊害が述べられている。ただし、知識人の無知による賞賛と、有力政治家が知っていながらカルトを称賛する弊害は、比較にならないものである。
カルトが知識人などにより外的権威をつけられる(P134)
オウム真理教については、吉本隆明氏、中沢新一氏、荒俣宏氏、山折哲雄氏、島田裕巳氏、栗本慎一郎氏らが、教祖と面談し、その発言が週刊誌やオウム真理教の出版物・ビデオで宣伝されました。
山折氏は、過去、教祖との対談で、オウム真理教の実態を知らなかったのか、「ただ、ある宗教理念に基づいてそれを広めていくだけでの活動ではあまり意味がない。やはりその時代の常識や価値観に根本的に挑戦することではじめて存在理由が出てくる。それをしなけれぽ宗教の意味はないわけですね」とまで述べ、社会への挑戦を勧めています(別冊太陽77号1992年春)。吉本氏は、一連の事件が判明してきた中でさえ「僕は、(麻原を)現存する仏教系の修行者の中で世界有数の人ではないかというくらい高く評価しています」と言いました(1995年9月5日付け産経新聞)。このような記事をオウム真理教は雑誌に掲載し、宣伝や内部の動揺の防止に使いました。…中沢氏や島田氏のさまざまな言論は、それ以上に勧誘や活動に利用されていました。自分の言論活動がどのように使われるかということを、これらの方々はどこまで認識していたのでしょうか。
…学者やジャーナリストの中には、単に調査や取材で教団の便宜を受けるだけでなく、多額の講演料を受領したり、書籍を多数買ってもらえる、 などの形で補助が出ていると思われる方もいて、調査の中立性を疑わせます。
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