本の紹介-地政学入門2022年09月02日

  
佐藤優/著『地政学入門』(2021/11) 角川新書
 
 本書は2016年に晶文社から出版された「現代の地政学」を再編集し加筆修正したもの。このため、出版は2021年ではあるが、内容はそれほどホットではない。2022年にロシア・ウクライナ戦争が勃発する。この問題は、地政学的理解が重要だが、残念ながら本書にはこの話題はない。
 地政学とは、地理の影響を考えて政治・軍事を論じる学問で、非常に古くからある分野。交通手段の発達によって、地理の影響は軽視されるようになってきた。
 本書は、世界各地での問題を扱っている。著者はロシア関連地域が専門だが、特にロシア関連の記述が多いわけではない。
 カルパトウクライナが親ロシア傾向が大きいとの記述がある。さすが、ロシアの専門家だけあって、細かいことも詳しいと感心した。

本の紹介-バウッダ2022年09月08日

 
中村元、三枝充悳/著『バウッダ』小学館(1987/2)
 
本書は、2009/12に講談社学術文庫から再版された。
第1部「三宝」、第4部「宗教と哲学の意義」は中村元の執筆で、どちらも小章。
第2部「阿含経典」、第3部「大乗仏典」は三枝充悳の執筆で、どちらも量が多い。
 
 第2部第1章は初期仏教から大乗仏教までの仏教史を概括し、阿含経の位置を示す。この中で、富永仲基による「加上説」を紹介し、江戸時代の日本でも、大乗仏教が仏説ではないことを示した研究があった事実を明らかにしている。
 第2部第2章は阿含経のテキストの説明。学術的には重要な内容だが、一般の読者にどれだけ必要なのか、若干疑問。
 第2部第3章は阿含経を基に、釈迦の教えがどのようなものだったのか、初期仏教の姿を明らかにする。
 第3部は大乗仏教の説明。第1章で部派仏教以降どのような状況で大乗仏教が起こったのか、歴史的経緯を説明する。第2章では、大乗仏教の特徴である、多様な菩薩の説明。第3章は般若経典、浄土経典、華厳経、法華経、密教経典等の主要大乗経典の概説。2章、3章と盛りだくさんの内容を詰め込みすぎの感がして、事前の知識がないとかなり読みにくいと思う。
 
 本書一冊で、仏教の全体像が理解できる本であると評価することはできるが、多くの内容を詰め込んだため、基礎知識がない人には、理解が大変で、ある程度、仏教に対する知識がある人には、各記述が物足りない感じがするだろう。

チベット仏教の美術2022年09月10日

 
東京国立博物館では「チベット仏教の美術」開催中です。通常料金で見学できます。
写真は15~16世紀につくられた父母仏像で性行為中の仏像。

 インド密教のうち、後期密教には性行為をことさらに推奨する傾向を含んでおり、これがチベットにもたらされたため、チベット仏教では性行為中の仏像が多数つくられた。チベット仏教の中には、少女を僧侶が輪姦することが修行とされたり、信者の女性を僧侶が姦淫することなども行われたようだ。
 日本に入ってきた密教には、性行為のエネルギーを中心に据えることは少ないが、現在、真言宗で読まれている理趣経には性行為を推奨する教えが解かれている。このため、かつては、真言立川流のように、姦淫を推奨する教えもあったが、現在の真言宗の中に、そのようなものはない。

本の紹介-カルト宗教事件の深層2022年09月15日

 
藤田庄市/著『カルト宗教事件の深層: 「スピリチュアル・アビュース」の論理』春秋社 (2017/5)
 
 本書は2017年5月出版。安倍銃殺以降、統一教会が話題になったので、再読した。
 桜田淳子合同結婚式の時、統一協会問題がお茶の間TV番組で連日取り上げられ、統一教会の霊感商法を多くの人が知ることとなった。しかし、その後、オウム問題が起こると、統一協会がTV番組で取り上げられることはなくなったが、統一教会の霊感商法被害や自民党政治家との癒着関係は続いた。TV報道がなくなってから、安倍元総理銃殺までの期間を「空白の30年」と称して、統一教会問題が見逃されてきたとの言説がある。
 本書には、統一教会の反社会性や二世問題が明白に記述されており、容易に統一教会の反社会性を知ることができる。本書以外にも、統一協会の反社会性が記されている本は、毎年のように出版されており、関係がある人ならば統一教会がいまだに反社会行為を行っていることはわかっているはずだ。
 
本書の内容はオウム問題が半分ぐらい、統一協会が1/4ぐらい。
統一協会問題では、以下の内容がある。
 ①家庭連合に改名されたことと自民党との癒着問題
 ②霊感商法問題
 ③宗教団体であることを隠した勧誘とマインドコントロールの問題
 ④二世問題
 
2015年以降の出版で、統一協会問題が記されている本を以下に示す。
 
いのうえせつこ/著『新宗教の現在地』花伝社(2021/3) 監修/山口広
 http://cccpcamera.asablo.jp/blog/2021/07/11/9397030
島薗進/著『新宗教を問う』筑摩新書 (2020/11)
 http://cccpcamera.asablo.jp/blog/2021/03/21/9359314
藤田庄市/著『カルト宗教事件の深層: 「スピリチュアル・アビュース」の論理』春秋社 (2017/5)
 http://cccpcamera.asablo.jp/blog/2019/01/07/9022278
塚田穂高/編『徹底検証日本の右傾化』 筑摩選書 (2017/3)
 http://cccpcamera.asablo.jp/blog/2022/08/09/9516384
山口広、滝本太郎、紀藤正樹/著『Q&A宗教トラブル110番 第3版』民事法研究会(2015/3)
 http://cccpcamera.asablo.jp/blog/2022/07/24/9511733

本の紹介-新宗教を問う2022年09月16日


島薗進/著『新宗教を問う』筑摩新書 (2020/11)

 本書は20年11月出版。安倍銃殺以降、統一教会が話題になったので、再読した。幕末以降、日本の新宗教を扱っており、統一教会の記述は少ない。
 新宗教研究の泰斗による執筆であり、日本の新宗教の概要を知るために最適な本と言える。かなり詳しく、いろいろな新宗教について触れられており、特に、創価学会・霊友会・大本教のような主要な新宗教はかなり詳しい。また、新宗教が日本で盛んな社会的な背景の説明も詳しい。

 統一教会の記述は4ページ余りと少ないが、統一教会の問題が的確に理解できる。特に、2010年以降も、自民党が選挙の時に統一教会から支援を受けているとの記述がある。
日本社会と対決した統一教会  統一教会は世界諸国で活動を行ったが、霊感商法が激しく行われたのは日本だった。これは日本は堕落を引き継ぐ「エバ国家」であり、「アダム国家」である韓国に負債があり、日本が韓国に「侍る」、つまり人材と資金の供給を行うのは当然だという教えにのっとたものだ。・・・  統一教会は…日本の右派や反共主義者とも手を結んだ。一九七四年には世界平和教授アカデミーを組織し、大学教授などの支持を得ることにも力を入れた。選挙のときに自民党の政治家を助ける活動にも関わっており、二〇一〇年代にはそれが続いている。霊感商法が厳しく批判され、統一教会が日本入からの搾取を正当化する教えをもっていることが報道されたあとも、この事態は変わっていない。(P242,P243)

 桜田淳子合同結婚式の時、統一協会問題がお茶の間TV番組で連日取り上げられ、統一教会の霊感商法を多くの人が知ることとなった。しかし、その後、オウム問題が起こると、統一協会がTV番組で取り上げられることはなくなったが、統一教会の霊感商法被害や自民党政治家との癒着関係は続いた。TV報道がなくなってから、安倍元総理銃殺までの期間を「空白の30年」と称して、統一教会問題が見逃されてきたとの言説がある。
 しかし、本書のような、統一教会問題を記載した本は毎年のように出版されているので、統一教会に関心があるならば、この教団の反社会性は容易に理解できることだ。

本の紹介-ブッダに学ぶ聖者の世界2022年09月17日

 
アルボムッレ・スマナサーラ/著『ブッダに学ぶ聖者の世界』 アルタープレス(2022/6)
 
テーラワーダ(上座部仏教)長老・アルボムッレ・スマナサーラによる仏教解説。
2014/1に大宝輪閣から、『自ら確かめるブッダの教え』が出版されているが、これに続く本。
http://cccpcamera.asablo.jp/blog/2021/02/04/9344082
 
本の前半では、知に関する仏教の見解を示す。世俗的な知識は感覚器官が把握した情報を、自分の都合に合わせて概念化した結果であるので、煩悩が起こる。このような心の動きを制止することを進める。
本の後半はスッタニパータの一部の詩を取り上げて解説する。パーリ語と日本語訳を示しての説明で、パーリ語の意味の説明もある。初期仏教・上座部仏教のある程度の知識があると、すらすら読める平易な文だが、日本の仏教に凝り固まっている人にと、受け入れることが難しいかもしれない。

本ー日清・日露戦史の真実2022年09月18日

 
渡辺延志/著『日清・日露戦史の真実』筑摩書房 (2022/7)
 
あまり興味のある内容ではなかった。タイトルと表紙写真です。

本の紹介-統一教会とは何か2022年09月23日

 
有田芳生/著『統一教会とは何か』大月書店(2022/9)
1992年に出版された本の改定新版。序章と資料の一部が新版の書き下ろし。
 
 1980年代後半から1990年代前半にかけて、統一教会の霊感商法が批判されたことがある。しかし、その後、オウム真理教問題が起きると、そちらに関心が移り、統一教会問題はバラエティー番組の話題ではなくなった。
 2022年7月、安倍晋三元総理が銃殺されると、再び、統一教会がマスコミの関心事となった。
  
 1992年から2022年、マスコミの関心が薄れた時期も、統一教会被害は続いていた。この時期を、著者は「失われた30年」と表現している。しかし、この時期も、統一教会被害が書かれた本は毎年のように出版されていたし、新聞・赤旗にも、ときどき、統一教会被害や政治家の癒着を示す記事が掲載されていた。このため、新興宗教被害に関心のある者にとって、この30年間の統一教会被害はよく知られたことだった。
 
 本書の多くは、1992年出版の旧版と同じ内容だが、被害の実態は、このころと基本的に変わっていないので、現在の統一教会を理解する上で、本書の記述は十分に有益である。
 
 ところで、1980年代までは『統一協会』と書かれたが、1990年代になると『統一教会』が使われるようになった。『世界基督教統一神霊協会』が正式な法人名称なので『統一協会』が正解のように思うのだが。本書の旧版は『統一教会』の表記を使った初期のもの。
 
 ところで、こんな教団にどうして入会する人がいるのか、不思議なことだ。この件について、P77に以下の記述がある。
 『統一教会に入る若者の特徴を最大公約数でいえば、何でも受け入れてしまう性格で、それが本当かどうかを、他の方法で確認することをせず、論理よりも感情的といった共通点がみられる。』

 また、P193に書かれた脱会した元信者の手記には以下のように書かれている。
 『聖書を読み、原理講論を読み、神学書を読んだ。学べば学ぶほど原理のまちがいに気づき、私の信仰が浅薄な、見当違いなものであることがわかった。』
 キリスト教には、大きい括りで、カトリック、プロテスタント、正教があって、教義が違うことは、中学で習ったはずだ。統一強化の教義を聞いて、単純にキリスト教の教義であると信じてしまうのは、あまりにも知恵がなさすぎと思うのだが、中学校で成績不振だったのだろうか。

本の紹介-英米ディープステイトはウクライナ戦争を第3次世界大戦にする2022年09月28日

 
副島隆彦/著『プーチンを罠に嵌め、策略に陥れた英米ディープステイトはウクライナ戦争を第3次世界大戦にする』秀和システム (2022/6)
 
 ウクライナ・ロシア戦争を冷静に理解するために有用な本。
 
 ウクライナ戦争では、ゼレンスキーのプロパガンダを、一方的に垂れ流すだけの報道が続いている。本書は、ゼレンスキーの噓や、イギリス・アメリカの謀略報道に踊らされることなく、冷静に、ウクライナ戦争を分析しており、好感が持てる。著者は、ウクライナ・ロシアに対する専門家ではないようだが、下手な専門家よりも、正確に理解しているように見受けられる。
 キエフ近郊のブチャではロシア軍撤退後しばらくして、多数の住民の死体が見つかった。当初、日本では、ロシア軍の仕業であるとの一方的報道がなされたが、ある時を境に急にこの報道がなくなった。本書によると、フランスの検察官が入って、フレシェット弾による死体が発見されたことが報道がなくなったきっかけだったとのことである。フレシェット弾は対人殺傷を目的とした銃弾であるが、戦闘能力が低いので、今どきの軍隊が装備していることはないので、ロシア軍やウクライナ軍がフレシェット弾を使用したとは考えられない。しかし、コロモイスキーの私兵など、ウクライナのネオナチは、廃棄されずに横流しされた旧式銃を使っているので、これら勢力がフレシェット弾を使用している可能性が高い。本書は、このように、現地の事情を知ったうえで、正当な判断をし、遺体は、ロシア軍に協力した住民をネオナチ勢力が報復殺害したものが多いと判断している。
 もっとも、ウクライナ住民の一定割合の民族はロシア人なので、ロシア軍が攻めてくることを知ったウクライナ軍が、ロシア系住民からロシア軍への通謀を恐れて、ロシア系住民を殺害したケースは多いだろう。
 本書第三章は「ゼレンスキーはネオナチで大悪人」とのタイトルで、ゼレンスキーと関係者の問題を記載している。ゼレンスキーはコロモイスキーの映画俳優なので、最大の極悪人はコロモイスキーだ。ウクライナ戦争初期に、日本のニュースにはボクダン・パルホメンコが出演することが多かった。本書によると、ボクダン・パルホメンコは日本会議や笹川財団と関係が深いネオナチ工作員とのことである。彼の発言は眉唾物の感じがしていたが、やはりそうだったのかと思った。

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