本の紹介-7・8元首相銃撃事件何が終わり、何が始まったのか?2023年05月04日

 
河出書房新社編集部/編『7・8元首相銃撃事件何が終わり、何が始まったのか?』河出書房新社(2022.11)
 
 2022年7月8日、安倍元首相が銃殺された。犯人の動機が統一協会被害を原因とした、個人的な怨恨であることが知れると、マスコミでは統一協会や自民党議員の癒着が批判された。
 本書は、21の関連論文が収録されている。執筆者は、学者・ジャーナリスト・評論家・文筆家など多彩。内容は、統一教会と政治の癒着や、世相の問題、マスコミ報道の問題など多彩で、論文同士の関連は少なく、雑多の感じがする。
 社会学者の菊池夏野による論文は、統一教会と自民党右派勢力のジェンダーあるいは女性差別に対する態度の類似性を概説し、その問題を指摘している。
 かつてのオカルトブームの火付け役で文筆家の武田嵩元は、統一協会の反日的性格を指摘した後、この点を日本のリベラル勢力があまり問題にしてこなかった点を指摘している。韓国の宗教が親韓なのは普通のことで、反日であっても、それは思想信教の自由ではないか。問題なのは、安易に癒着し利用した自民党右派勢力だ。リベラル勢力は、自民党と統一教会の癒着に関して、以前から批判していたが、大手マスコミがこれを取り上げなかった。

本-復讐としてのウクライナ戦争2023年05月05日

 
塩原俊彦/著『復讐としてのウクライナ戦争』社会評論社(2022/12)

 ウクライナ・ロシア戦争3つの復讐によって勃発したことを論じている。3つの復讐とは、米国の新保守主義者によるロシアへの復讐、ロシア大統領のウクライナへの復讐、ウクライナ大統領のロシアへの復讐である。
 本書は、米・露・宇のどの国を悪く言うとか、どの国を持ち上げるとか、そのようなことはなく、その点は評価できる。ただし、私の興味とは、違った方向性の内容だった。

本の紹介-マルクス 生を呑み込む資本主義2023年05月07日

 
白井聡/著『マルクス 生を呑み込む資本主義』 講談社新書 (2023/2)
 
 100ページほど、マルクスの思想、資本論のざっとした解説の後に、20ページほど、現代日本の労働問題を説明している。
 すなわち、資本論から「包摂」概念を取り出して、新資本主義の下、現代日本人が、全面的に資本主義に取り込まれた状況を説明している。資本論は資本主義の分析なので、現代の問題を考えるうえで、参考になることを示していると言える。多くの人に、読むことを薦めたい。

アルテモフスク(バフムト)解放2023年05月08日

(この記事は2023年5月6日の情報をもとに書いています。)

ウクライナ・アルテモフスク(バフムト)完全解放が近づいてきた。

 バフムトの戦いに関する、これまでの西側報道は、ウクライナ軍の勝利を予測する、デタラメ報道だった。3月になって、ウクライナの敗北が濃厚になった以降も、デタラメ報道が続いた。

 「米シンクタンク、戦争研究所は19日、ロシア軍による「春の攻勢」が終わりに近づいている可能性があるとの戦況分析を発表した。ロシア軍はウクライナ東部ドネツク州の激戦地バフムトを制圧できず、他の前線でも大きな戦果を上げられていないと指摘。(サンスポ 3/20)」
 「英国防省は25日、ウクライナ東部ドネツク州の激戦地バフムトで、ロシア軍が激しい人員の損失により失速しているとの戦況分析を発表した。(共同 3/26)」
 「ウクライナ軍の報道官は6日までに、ロシアの民間軍事会社ワグネルが10日にウクライナ東部バフムートから撤退する方針を決めたことに言及し、同市を巡る戦闘の「転換点」になりうるとの認識を示した。(CNNニュース 5/6)」

 ロシアの報道では、バフムトの情勢を正しく伝えていた。
 バフムトのロシア支配割合について、TASSでは以下のよう報道されていた。
  4/3 70% 、4/11 75% 、4/18 80% 、4/24 90%
 4月中旬になると、ウクライナ支配地域は、ずいぶん少なくなったが、4月下旬以降も、TASSの報道を見ると、ロシアの制圧が徐々に広がり、ウクライナ支配面積は、さらに小さくなってゆく状況が分かる。
  4/30 2.98 km2  5/1 2.9 km2  5/3 2.7 km2  5/6 2.52 km2
 
 5月5日、ワグネル代表プリゴジンは、5月10日にバフムトを撤退すると表明した。5月6日NHKニュースでは「ロシア側の混乱浮き彫り」と報じられたが、5月6日に、ウクライナ支配地域に大規模攻撃を仕掛けた。写真はRVvoenkoryによる、この時の動画を切り取ったもの。(https://t.me/RVvoenkor/44283
 正確な場所はわからないが、おそらく、チャイコフスキー通りとコルスンスコゴ通りの間の三角地帯だと思う。この場所と、看護学校の西側には、高層のアパートがあって、ウクライナ軍の反撃拠点となっていた。ロシアによるウクライナの制圧が滞っているように見る向きもあるが、都市の制圧には、高層アパートの一室ごとに制圧する必要があり、かなり時間がかかるものである。ロシア軍は、4月8日に鉄道線路の東側をほぼ解放した。わずか一か月で、住宅地が広がるバフムト西部の解放にこぎつけたのだから、思ったよりも早かった。ウクライナ軍が、住民を盾にして住宅に立てこもったならば、制圧にはもっと時間が必要だったはずだ。
 
 5月6日深夜以降、ロシアが白燐弾を使用したとの報道がなされている。おそらく、ウクライナのデマ宣伝を、検証もせずに垂れ流しているのだろう。白燐弾とは、アメリカ軍が沖縄などで演習に使っている、非人道兵器で、白燐や酸化煙を浴びると、重症な火傷の恐れがある。
 ロシア軍はバフムトにTOSA-1を導入したとの報道があったので、搭載のサーモバリック爆薬を使った可能性が高い。
 
注)白燐はそれ自体が毒物だが、燃焼後は5酸化2燐が作られ、皮膚に対して腐食性の作用を及ぼすため、非人道兵器とされる。

戦争研究所2023年05月09日

 ロシア・ウクライナ戦争に関する日本での報道は、誤報が極めて多い。このような誤報の原因は、ウクライナ・英・米の謀略情報をそのまま報じているためだ。アメリカの情報は、民間研究機関「戦争研究所」の情報が使われる。

3月8日の時事通信に以下の記事があった。
 ウクライナ東部ドネツク州の要衝バフムトの攻防を巡り、米シンクタンク・戦争研究所は6日、包囲を進めるロシアが多大な痛手を負っていると分析した。ロシアは侵攻の一端を担う民間軍事会社「ワグネル」の精鋭部隊などを投入しており、ウクライナはロシアの戦力低下を狙い、消耗戦を仕掛ける可能性があるという。https://www.jiji.com/jc/article?k=2023030701029&g=ukr
 4月になって、アメリカの軍事機密文書が流出すると、2月終わりから3月初めには、ウクライナ軍の防空用砲弾が危機的に不足し、バフムトでは、ウクライナ軍が補給路の維持に苦しみ、危機的な状況にあると、米国が分析していたことが明らかとなり、戦争研究所の情報が誤りであることが、知られることとなった。https://news.yahoo.co.jp/articles/997bf37a35fd744444629f1c4c02ae849135b61e

 5月5日、ワグネルのプリゴジンは、5月10日にバフムトからの撤退を表明した。すると、アメリカ・戦争研究所の見解として「ロシア国防省はウクライナ反転攻勢の準備として、バフムト攻略の優先順位を下げた」との報道がなされた。(テレ朝ニュース 5月7日 https://news.tv-asahi.co.jp/news_international/articles/000298244.html
 しかし、この時、バフムトの95%をロシア側が攻略済みで、完全解放も間近だった。実際、この後、ワグネルによる、バフムト攻撃は激化し、さらに、撤退後はチェチェン舞台と交代すると報じられた。戦争研究所の見解は何を根拠としたものか、非常識な誤りだ。


戦争研究所
 戦争研究所は2007年にキンバリー・ケーガンによって設立されたシンクタンク。キンバリー・ケーガン自身、ネオコンだが、彼女の夫のフレデリック・ケーガンは軍事史家のネオコン。フレデリックの兄、ドナルド・ケーガンはネオコンの理論的支柱。また、ドナルドの息子のロバート・ケーガンは現在ではネオコンの代表的論客であるが、彼の夫人が国務次官のビクトリア・ヌーランドである。
 ロシア・ウクライナ戦争は、アメリカ・ネオコンが仕掛けたものであるが、仕掛け人の民主党内での中心人物がヌーランドであり、その一族が作ったシンクタンクが「戦争研究所」である。このため、戦争研究所がウクライナに都合の良いニセ情報を流すことは、当然に予想されることだ。

ネオコン
 ネオコン(Neoconservatism)とは、アメリカの新保守主義のこと。ネオコンの主な信念としては、アメリカが世界で最も強力な国であること、アメリカ中心の市場経済が世界中で広がることが重要であること、そして、アメリカの利益のためには軍事力行使も辞さないことが挙げられる。

東京国立博物館2023年05月10日


東京国立博物館に行った。五月晴れの中、表慶館が美しかった。
表慶館は閉館中。

アイヌの鍬形・霊感商法2023年05月11日

 
 東京国立博物館にアイヌの鍬形が展示されている。東京国立博物館では複数の鍬形を所蔵しているが、展示されているのはそのうちの一つ。
 アイヌの鍬形とは、有力なアイヌのみが所持し、霊力が強い宝物と信じられていたようだ。家に置くものではなくて、洞窟や地中に隠していたそうで、このため伝世品は少ない。本品は北海道栗山町角田字桜山出土の一つ。銀飾りがついているものもあるようだが、本品は鉄板で作った粗雑品の雰囲気が強い。
 アイヌの鍬形は、日本で作られたことは確実のようだが、いつごろ作られたのかは、はっきりしない。
 どう見ても、粗雑で、価値があるものには見えないが、霊力があると信じられたと言われているので、不思議だ。

 統一協会は壺を売っていた。どう見ても、安物の花瓶にしか見えないが、霊力があるようにだまして、高額で売った。アイヌの鍬形を見ていたら、統一協会による霊感商法の壺を連想した。

イロハモミジ2023年05月12日

 
 小石川植物園のイロハモミジに実がついています。秋の終わりになって熟すと、プロペラを使って飛んで行く。
 ロシア・ウクライナ戦争では、ウクライナ軍がバタフライ型地雷を撒いています。モミジの実に似たプロペラが付いた地雷で、多数打ち上げたものが、ひらひらと地上に落下します。

アルテモフスク(バフムト)解放2023年05月14日

(この記事は2023年5月13日の情報をもとに書いています。)

5月11日、信じがたい報道が現れた。幾つかの報道機関から同様の内容があったが、以下に、テレビ朝日の報道を書きます。
『激しい攻防が続いているウクライナ東部・バフムトの戦況についてウクライナ軍の司令官は、「効果的な反撃を行っている」と述べ、一部でロシア側を押し返している模様です。ウクライナ陸軍のシルスキー司令官は11日、SNSに投稿し、「ウクライナ部隊のよく考えられた守備で効果的な成果が出ている。このため敵は最大で2キロ後退した」と述べました。https://news.yahoo.co.jp/articles/b34e196ba8f409ab67349fc34316206712dde42e』

 バフムトでは、これまで、ロシア・ワグネルが占領地を毎日100~200メートルほど広げていた。ウクライナ軍がバフムトで一日で二キロ取り返したとしたら、驚くべき戦果になる。その後、詳細がわかると、ほとんど虚報であることが明らかとなった。

 
 この日、上図①の、バフムトの北西方向にある貯水池南側にウクライナ軍が移動し、ロシア軍は南東方向に若干移動した。貯水池南側は標高120mなのにたいして、ロシア軍はより守りやすい標高150mほどの地点に移動したものである。ウクライナ軍が、移動した理由はわからない。これら地域は、すべて、畑・荒地であり、町はない。
 バフムトでは、相変わらず、ロシア・ワグネルが、支配地を広げている。最近は、1日で100~200メートル程度、広げることが多い。
 ウクライナ軍が立てこもって抵抗していた場所は、5月初め時点で上図②③である。ここは、どちらも、高層アパートが建っていて、ウクライナ軍が要塞化している。バフムト市内で、ウクライナ軍が掌握しているのは、この2地点のみ。
 
 
 
 上図は③の地域の拡大図。黄色線はチャイコフスキー通り。東側の赤色はロシア軍支配地域。中間の緑色は、4月末時点ではウクライナ軍が高層ビルに立てこもっていた。しかし、5月10日ごろまでにはウクライナ兵を追い出した。
 
 
 
 上の図は②の地域の拡大図。赤色の地域は4月末時点で、すでにロシア軍が支配していた。緑色は、5月第2週目から13日までに、ロシア軍が支配した地域。色を塗っていないところは、ウクライナ軍支配地域で、奥行き600メートル程度。まだ、高層ビルが大きなものでも10棟以上残っているので、バフムト完全制圧には、もうしばらくかかるだろう。


本の紹介-日本のカルトと自民党2023年05月15日

 
橋爪大三郎/著『日本のカルトと自民党』集英社新書(2023.3)
 
 著者は社会学者で、元・東京工業大学教授。
 生長の家(日本会議)と統一協会と自民党等との関係が本書のテーマ。
 
 生長の家は谷口雅春が作った新興宗教。現在、生長の家は政治とは関係を持っていないが、生長の家、中心メンバーが作った日本会議が自民党に食い込んでいる。日本会議と自民党の関係については『菅野完/著 日本会議の研究』を参考にしているようだ。ただし、本書には、生長の家・谷口雅春の教義や歴史について詳しい。
 統一協会は文鮮明が作り、現在、韓鶴子が主宰している新興宗教。本書では、統一協会と自民党との関係も書かれているが、それほど詳しくはない。統一協会問題を扱った他書に比べて、統一教会の教義や歴史が詳しい。
 生長の家・統一協会ともに、普通の宗教ではなくて、かなり、いかがわしさを感じる。統一協会の教義は、キリスト教とは著しく乖離していることがわかる。
 
 本書最終章は、民主主義と政教分離の問題を扱っている。創価学会・公明党が政治に食い込んでいる状況は、民主主義の政教分離の観点からみて、非常に良くないことであるとの指摘がある。もっともな判断だ。

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