本の紹介ー安倍晋三の正体2023年09月02日

 
適菜収/著『安倍晋三の正体』(2023/7)祥伝社新書

 安倍晋三は近代日本史上、最も偏差値が低い大学出身の内閣総理大臣だろう。歴代総理大臣の中で、格段に頭が悪いことは間違いない。
 本書は、このように頭が悪かった安倍晋三内閣が、いかに日本に害悪であったかを具体的に明らかにしている。ただし、すでによく知られたことが多い。

以下、各章のタイトルを記す
 安倍晋三とは何だったのか
 外交の安倍の実態
 デタラメな経済政策
 幼稚な政治観
 嘘・デマの数々
 バカ発言
 安倍晋三関連事件
 カルト、統一教会、反社、維新
 歴史修正主義憲法破壊

戦勝記念日2023年09月03日

 
9月3日、ロシアでは、軍国主義日本に対する勝利と第2次大戦終結の日。
アメリカでは9月2日が、Victory over Japan Day。
 
写真は、軍国主義日本に対する勝利に貢献した人に授与された記章。

本の紹介―「山上徹也」とは何者だったのか2023年09月04日

  
鈴木エイト/著『「山上徹也」とは何者だったのか 』(2023/7)講談社α新書
 
 鈴木エイトは自民党と統一教会の癒着関係を長年にわたって調査・取材してきたジャーナリスト。
 鈴木エイトの前著『自民党の統一教会汚染2』には副題として『山上徹也からの伝言』とあったが、山上被告の話は少なかった。これに対して、本書は、山上被告の話がメイン。
 
 2021年、安倍晋三は統一教会・韓鶴子を称賛するビデオメッセージを送った。鈴木エイトは、いくつかの新聞・雑誌などにこの事実を記載した。山上被告が安倍晋三を銃殺したきっかけとなったのが、この記事だったことはほぼ間違いない。このため、鈴木エイトには特に思うことがあるようだが、もし、彼の記事がなくても、安倍メッセージは新聞赤旗にも記載されていたので、結果は変わらなかったかもしれない。
 安倍メッセージに対して、統一教会被害者弁護団は抗議文書を送ったが、安倍は受け取りを拒否した。山上被告が安部を殺害した直接動機が、韓鶴子を称賛する安倍のビデオメッセージだったのか、弁護団抗議文書を安倍が受け取り拒否したことだったのか、本書では分からない。もし、後者が原因ならば、言論では安倍を止めることが不可能と思った山上被告が、思いつめた末の犯行とも考えられる。
 
 著者は山上被告の伯父にも何回か面会している。また、山上被告弁護士とも何回か面会し、山上被告に手紙を託している。このため、今のところ、本書が山上被告の犯行動機を知るうえで、最も重要な本であることは間違いない。しかし、著者にしても山上に直接面会しているわけではなく、また公判も始まっていない現在、それほど慌てて犯行動機を解明する必要があるのだろうかとも思う。
 
 それから、山上容疑者は作家で統一教会支持者と言われている米本和広氏と、ネットの書き込みや手紙でやり取りをしていた、との報道を目にしたことがある。統一教会シンパの米本和広氏と、どういう理由で交流があったのか不思議だった。本書によると、山上容疑者が米本和広氏批判の投稿をしていたということのようだ。

本の紹介―第三次世界大戦はもう始まっている2023年09月12日

 
エマニュエル・トッド/著、大野舞/訳『第三次世界大戦はもう始まっている』(2022/6)文春新書
 
著者はフランスの歴史学者
 
 日本のテレビ、新聞における、ウクライナ・ロシア戦争の報道は、ウクライナの謀略情報や、アメリカの謀略機関・戦争研究所からの情報を垂れ流しにしている。このため、ウクライナが圧倒的善戦しているかのような、虚偽報道がなされている。戦争の原因も、善悪二元論に固執し、一方的にロシアが悪く、ゼレンスキーが絶対善であるかのような間違った報道がなされている。
 本書は、客観的立場にたって、戦争の原因を解明するもの。NATOの責任を指摘する部分が多い。また、ウクライナ・ネオナチの記述もあるが、多くはない。ウクライナ政府による、ドンバス地域のロシア系住民弾圧の話はほとんどない。また、本書は、戦争開始後の早い時期に書かれたものなので、その後の、戦争の推移に関する記述はない。
 現在、世界はロシア批判の西側諸国と、それに同調しないBRICS・アフリカ諸国に分かれている。著者は、これを、核家族・個人主義社会と、家父長的・権威主義的社会に分ける。日本とドイツは本来は家父長的社会だったが、敗戦により、個人主義社会に変貌させられた社会である。著者は人類学者であるため、このような視点を持つに至ったのだろう。興味が持てる見解だ。

本の紹介ー問われる宗教と“カルト”2023年09月18日

 
島薗進、釈徹宗、若松英輔、櫻井義秀、川島堅二、小原克博/著『徹底討論 ! 問われる宗教と“カルト”』NHK出版 (2023/1)
 
 2022年8月、安倍元総理が銃殺され、犯行動機が統一協会に対する恨みであることがわかると、統一協会問題が連日取り上げられた。こうした中、NHKでは宗教学者などを中心に、カルト問題を討論する番組を放送した。放送は1時間番組を2回にわたって10月に放送された。
 本書は、この時の放送内容を書籍化したもの。放送されたもののほかに、出席者による数ページの解説がついている。放送は、合計2時間番組だったが、本だと1時間もあれば読み終わるだろうか。
 
 著者のうち、島薗・櫻井両氏は宗教社会学者で、新宗教にも詳しい。釈氏は仏教学者。他の3名はキリスト教学者。
 本書の関心の中心は統一協会問題であるが、広く、宗教と公共の関係を議論している。ただし、教義の内容に踏み込んだ話は少ない。これだけの宗教学者を集めたのだから、統一協会を含めた教義の内容に、もう少し、踏み込んだ議論をしてほしかったと感じたが、NHKの放送では無理ですよね。

本の紹介-福田村事件 関東大震災・知られざる悲劇2023年09月19日

 
辻野弥生/著『福田村事件 -関東大震災・知られざる悲劇』五月書房新社 (2023/6)
 
 関東大震災直後、多数の朝鮮人が殺された。本書は、この中で、千葉県野田市(旧・福田村)で起こった、日本人行商人虐殺事件を扱ったもの。本書は、最近、映画化されたため、多くの人の関心を集めている。
 
 本書では、最初に関東大震災の様子と、それに引き続き起こった朝鮮人虐殺を取り上げる。朝鮮人虐殺は、朝鮮人が放火をしている等の根拠のないデマがきっかけだったが、このようなデマの流布に警察が関与している点の指摘がなされており、客観的で常識的な記述には好感が持てる。
 福田村事件の話は、本の後半になる。関東大震災に出会った香川の行商人のうち、9人が朝鮮人と疑われて、福田村で惨殺された。9人のうち2人は子供で一人は妊婦だった。
 殺害原因について、本書では、朝鮮人と間違われたとしているが、考察不足ではないだろうか。福田村自警団が朝鮮人と誤認して確保したことは間違いないとしても、被害者は自分たちは香川の行商人と主張しているのだから、もし、行商人の主張が信じられなくても、普通の心を持った人間ならば、警察に引き渡す程度のことをするだろう。ところが、福田村自警団は警察に引き渡すことを拒否した上で、子供を含む9人を虐殺した。これは、要するに、残虐な殺害をしたかったから、そのための口実が欲しかったのだろう。福田村村民には、下劣で残虐な劣等人種の血が流れていたと思える。
 
 関東大震災直後、「朝鮮人が放火した」「朝鮮人が井戸に青酸カリを入れた」などの、流言蜚語があったため、これを信じた日本人が、朝鮮人犯罪を防止し、犯罪者を処罰するために、朝鮮人虐殺に及んだとする説がある。しかし、群馬県藤岡のように、自警団が警察署を襲って、保護されていた朝鮮人を虐殺した事例もあったことが知られているので、犯罪防止や犯罪者処罰が虐殺の目的だったとは思えない。もともと、人殺しがしたくて仕方なかった人が、混乱に乗じて、念願の虐殺を果たしたのではないだろうか。
 実際、作家の志賀直哉は、震災直後に東京で、若者の以下の会話を聞いている。
 『鮮人が裏へ廻ったってんで、直ぐ日本刀を以て追いかけるとそれが鮮人でねえんだ。然しこう云う時でもなけりゃあ、人間は斬れねえと思ったから、到頭やっちゃったよ。』
 
 本書の内容に戻る。本書では、殺害された香川の行商人は被差別部落の人だったとの記載がある。もし、朝鮮人と誤認して殺害したのならば、部落民かどうかは関係ないことであり、本書の記述は、被災者を貶めるものとも言える。しかし、福田村の村民が人殺しをしたくて虐殺したのなら、自分たちよりも劣った人間であるとの理由を付けて殺したと考えられるので、被差別部落民だったとの本書の記述は、背景説明に有益だ。

本の紹介-孤闘 三浦瑠麗裁判1345日2023年09月23日

 
西脇亨輔/著『孤闘 三浦瑠麗裁判1345日』幻冬舎 (2023/6)
 
 三浦瑠麗氏は、一時期、フジテレビやテレビ朝日に、国際政治学者との肩書で出演することが多かった。しかし、論文は少なく、特に優れた論文も見当たらないように思える。2004年、安倍晋三が幹事長だったとき、自民党が応募した論文コンテストで最優秀賞を受賞し、主に右派勢力からは評価されたようだ。安倍晋三が殺害された後、夫の三浦清志被告が業務上横領罪で逮捕起訴されると、テレビ出演の機会は、ぼなくなった。
 
 本書は、テレビ朝日社員の著者が、SNSでの三浦瑠麗被告の書き込みがプライバシーの侵害などであるとの理由で、損害賠償を求めた裁判の記録。一審判決は、原告である著者の勝訴となり、三浦被告に30万円の支払いが命じられた。三浦被告は控訴するも控訴棄却、さらに上告するも上告棄却となり、三浦被告敗訴の一審判決が確定した。
 ところで、控訴審で、三浦被告側は、法律学者・木村草太の意見書を出したが、木村の意見書は控訴審判決では採用されることはなかった。木村草太はどのような理由で、的外れの意見書を書いたのだろう。
 
 2003年9月、安倍晋三に近いと言われていた、杉田水脈議員は、SNS上のアイヌ発言が、札幌法務局により「人権侵犯の事実があった」と認定された。安倍晋三時代は、差別発言・ヘイトスピーチなど人権感覚のないものが登用されたが、安倍が死に、これらの者の時代も終了したようだ。

本の紹介-北朝鮮 拉致問題 極秘文書から見える真実2023年09月27日

 
有田芳生/著『北朝鮮 拉致問題 極秘文書から見える真実』 (2022/6)集英社新書

 今から20年ほど前、北朝鮮拉致被害者5名が帰国し、8名の死亡が報告された。日本政府は、5名から極秘にヒアリングを行い、拉致の状況、北朝鮮での生活の様子、他の拉致被害者など詳細な情報を得て、報告書にまとめたが、極秘となって公開されることはなかった。しかし、その後、内容は漏れ出ることになるが、日本政府は、内容を認めようとはしていない。
 本書のメインはこの極秘文書の内容の話。著者は、この文書を入手しているようだ。拉致被害者の横田めぐみさんは、北朝鮮が病死したと伝えてきたが、両親は病気をしたことがない子だと言って病死を認めなかった。ところが、極秘報告書には、精神疾患で入院していたとの情報が複数の拉致被害者から得られており、北朝鮮の主張を補強する内容となっている。
 その後、横田めぐみさんの元夫から遺骨がもたらされると、科警研と帝京大・吉井富夫講師により、DNA鑑定が行われた。科警研は、鑑定不能との結論を出した。しかし、このときまで火葬遺骨DNA鑑定の経験がなかった吉井氏は、横田めぐみさんと遺骨は別人との鑑定結果を出した。遺骨には、スポンジ状組織があり、そこに、他人の汗などが吸収されるため、吉井氏の鑑定は疑問がもたれるものであったが、日本政府はこれをもとに、横田めぐみさん死亡との北朝鮮の説はウソであると断定し、交渉は行き詰まった。吉井氏はその後、警視庁科捜研に就職し、この時の鑑定をコメントする機会を政府は失わさせた。なお、その後、鑑定精度も上がっており、再鑑定すれば新たな知見が得られるかもしれないが、日本政府は、怪しい吉井鑑定に固執して、めぐみさん死亡との北朝鮮主張を否定している。
 本書著者は横田夫妻に何度も面会しており、夫妻が事実を知りたいと言っていたと、本書に記されている。夫妻の意図は、死んでいるか生きているのか、客観的事実を知りたいとの意味だろうか。それとも、生きていることを前提に、生きていることが真実であるとの情報だけが欲しく、死んだという情報は絶対に虚偽であるとの認識なのだろうか。横田夫妻は、めぐみさんの娘に、ウランバートルで会っているが、その後、会うことはない。会った時に、どのような情報がもたらされたのか。その情報が気に入らなかったのか。このあたりのいきさつは、本書を読んでも、わからなかった。
 政府が認識していなかった拉致被害者二名の生存情報が北朝鮮からもたらされたことがある。しかし、日本政府の行動はなかった。本書には、この件も詳しい。
 拉致問題が膠着した原因の一つに、「救う会」「家族会」の問題がある。本書では、このあたりの記述は少ない。

ダメな日本の報道2023年09月28日

ウクライナ軍、ロシア黒海艦隊司令官を「殺害」 (日本経済新聞2023/9/25 22:34)
ウクライナ軍攻撃でロシア軍黒海艦隊の司令官ら34人死亡…特殊作戦軍が成果強調(読売新聞2023/9/26 05:44)
 今週前半、日本の報道機関では、ウクライナ軍攻撃でロシア軍黒海艦隊の司令官が死亡したとの報道がなされた。情報源は、ウクライナ軍のどこかのようだ。しかし、冷静に考えれば、ウクライナ軍はロシア軍司令官死亡をどのように確認したのか、疑問が生じるだろう。ウクライナ軍が、ロシア支配地域に行って検死したと思う人はいない。
 時間がたつにつれ、ロシア軍黒海艦隊司令官死亡の情報は、ガセネタだった可能性が高くなってきており、報道もそのように変わってきている。いかがわしいウクライナ軍の謀略宣伝を未検証のまま報道するのではなくて、報道機関なのだから、多少は検証してから報道すればよいのに。

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