本-山上徹也と日本の「失われた30年」2023年10月11日

 
五野井郁夫、池田香代子/著『山上徹也と日本の「失われた30年」』集英社インターナショナル (2023/3)
 
 この本を、今読むことを薦めない。
 安倍射殺直後、山上被告が逮捕され、統一協会への怨恨が動機であることが明らかになった。しかし、犯行動機の詳細は今に至るも不明。
 本書は、山上被告がこれまでSNSに投稿した文書を分析することにより、山上被告の心情を解明しようとするもの。山上被告の情報が何も報道されていない状況で、安倍銃撃の理由を知ろうとするならば、これも一つの方法かもしれない。しかし、そのうち裁判が始まれば、もっと情報が増えるので、今の段階で山上被告の心情を推定する必要がどれほどあるのだろうか、そもそも、本書の推定は事実に近いのだろうか、疑問を感じた。
 山上被告は、いわゆるロストジェネレーション世代にあたる。本書では、山上被告の言葉遣いに、この世代が好む表現があることなどから、山上被告がロストジェネレーション世代に共通する世界観があるとの説のようだ。言葉遣いは世代に共通するものがあるのは当然としても、同世代であっても、生い立ちは千差万別なので、世界観や思想、勘定などは個人個人で大きく異なるだろう。それよりも、山上被告は統一協会二世なので、この観点から山上被告の心情を解明した方が現実に近いのではないだろうか。

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