本の紹介-なぜ日本は原発を止められないのか?2024年01月18日

 
青木美希/著『なぜ日本は原発を止められないのか?』(文春新書) (2023/11) 
 
 日本の原発に対して警鐘を鳴らす本で、原発政策に対する、一般向けの啓蒙書。本の内容は、反原発の立場で、普通に書かれた本で、特に問題となるような記述はないように感じる。
 
 著者は朝日新聞社の社員。記者時代に、福島原発の手抜き除染に関する記事など、原発に否定的な論調の記事を書いたため、記事を書くことができない広報部員に左遷されたとの情報がある。 
 本書のあとがきが面白い。著者は、出版に際して新聞社に出版申請をしたところ、新聞社は出版を認めないとの処分を下した。さらに、新聞社は「本社の報道・取材領域にかかわる取材・執筆・出版」に関する社外活動に対して「編集部の確認(監修)」が必要との命令を下した。これでは、上層部の意向に反する情報を社会に提供することが不可能になり、記者としては自殺行為だ。
 このような経緯があって、著者は、社名を出さずに、個人として行った私的利益を目的としない行為として、新聞社と無関係に本書を出版した。
  
 朝日新聞社は政府の意向を忖度して、政権に都合の良い報道をする、御用新聞になり下がったのだろうか。私は、近年の朝日新聞の記事はひどすぎると感じていたが、本書のあとがきを読むと、朝日新聞に、日ごろ感じていたことが正しかったと得心した。

本の紹介-ALPS水・海洋排水の12のウソ2023年12月21日

 
烏賀陽弘道/著『ALPS水・海洋排水の12のウソ』三和書籍 (2023/11)
 
 福島第一原発事故による放射能汚染水は、ALPSで処理した後、敷地内タンクに貯蔵されていたが、2023年以降、付近の海に排出されている。ALPSの処理能力では放射能汚染水のトリチウム(三重水素)を除去できない。他の核種は除去できるものの、完全ということはない。しかし、日本政府は排出する放射能汚染水処理水を法規制の範囲内に薄めることにより、安全であると説明している。安全性の根拠に、IAEAのお墨付きが使われることもある。法律に適合しているとか、国際機関の了解があるなどは、権威主義的根拠ではあるが、科学的根拠ではないにもかかわらず、科学的見地から安全性に疑問を呈する見解に対しては、政府・マスコミ揚げて、非科学的であると罵倒することになっている。
 本書は、事実と科学的根拠に基づいて、日本政府・東電による放射能汚染水処理水排出の安全性の説明に異議を唱えるもの。放射線科学や原子炉工学に関する大学学部程度の知識があるならば、本書の指摘は当然のことと理解できるものだ。本書の記述は文章が平易であるため、基礎知識がなくても、多くの人は容易に理解できるだろう。
 各章のタイトルは以下の通り。

1 国内問題だった放射性物質汚染を国際問題に拡大した
2 「海洋排水しか処理方法はない」
3 「タンクの置き場はもうない」
4 「ALPS水排水は被災地の復興に必要だ」
5 「ALPS水の海洋排水は廃炉を進めるために必要だ」
6 「ALPS水を海洋排水すればタンクはなくなる」
7 「風評被害をなくすことが必要だ」
8 「ALPS水に放射性物質はトリチウムしか残っていない」
9 「福島第一のような原発からの海洋排水は世界中でやっている」
10 「日本政府の基準を満たしているから安全だ」
11 「希釈して排水するから安全だ」
12 「環境への影響は長期的に見ても無視できる」
 

 放射線の人体への影響は「確定的影響」と「確率的影響」がある。前者は閾値があるので、法規制の範囲内に薄めれば安全と言える。この場合、考慮すべき物理量はBq/Lである。しかし、「確率的影響」には閾値がないと考えられており、また、放射性ヨウ素などは生物濃縮があるため、長期間に蓄積された量が重要となり、この影響を考慮すべき物理量はBq/Lではなく、むしろmolだ。放射能汚染水処理水の大量排出では、残留放射性物質濃度を見ただけでは、危険性の理解にはならない。
 本書、第8章「ALPS水に放射性物質はトリチウムしか残っていない」では、トリチウム以外の放射性核種の問題を取り上げる。これこそ、濃度ではなく総量を問題にすべき話であるが、本書の記述では、この点は明確ではない。また、原発事故ではヨウ素129,ヨウ素131が最大の問題になる。現在、海洋排出で一番問題とすべきはヨウ素129だろう。本書では、ウランやプルトニウムなど重い核種が検出限界以下でも、非存在でないことを問題としているが、それほど重要な問題なのか、疑問に感じた。
 
 ところで、放射性物質の安全基準と言うと、知識のない人は「安全な基準」と誤解するだろう。
 放射能の影響には、やけどなどの確定的影響と、ガンなどの確率的影響がある。確定的影響には、これより少なければ安全と考えられる閾値があるが、確率的影響には閾値はないと考えられている。このため、確率的影響が完全に安全な基準はゼロ以外にはありえない。しかし、これでは、原子力産業が成り立たず、電力会社の利益が出ないので、経済合理性の範囲で定められたものが、、安全基準である。平たく言えば、多少、他人が死んでも、国が栄えて、電力会社が儲かれる方が良いと思える基準が、安全基準ということだ。より分かりやすく言うと、安全な基準ではなくて、我慢基準であると、大学の一般教養の労働衛生の講義で、習ったことがある。
 東電の小早川社長とは入学年次は違うが、同じ大学なので、小早川社長も必修科目だった労働衛生の単位は取ったことだろう。放射能の安全基準の本質についての基礎知識があった上で、海洋放出を決断したのだろうか。学生のとき、勉学をサボっていたため、知識がないから、安易に海洋放出を決断したのだろうか。

放射線照射のサクラ2023年04月14日


小石川植物園では、「仁科蔵王」が咲いていました。
この桜、理研のサイクロトロンで重イオンビームを照射して作った突然変異だとか。なんか、気持ち悪い。
将来は、理研のサイクロトロンを使って、人間の胎児に突然変異を起こして、化け物を作るのだろうか。
 
 

本の紹介-劣化ウラン弾2023年03月30日

    
 イギリスが劣化ウラン弾をウクライナに供与するとの報道がある。ゼレンスキーは、自国領内に劣化ウラン弾を落とすすつもりらしい。劣化ウラン弾とは、ウラン238を多く含む爆弾で、落下とともに、放射性ウランの粉塵をまき散らす。
 
 岩波ブックレットNo864『劣化ウラン弾』嘉指信雄、振津かつ、他/著(2013/8)
 
 本書は、劣化ウラン弾の害について説明している。イラク戦争の時など、アメリカは、多数の劣化ウラン弾を使ったため、現地では、遺伝障害が起きているが、劣化ウラン弾を使用したアメリカは、劣化ウラン弾の毒性を認めていない。このため、日本にも、劣化ウランが毒ではないかのような論調があるが、本気で、無害だと思っているならば、捨て場に困っている放射性廃棄物を東京に散布すればよいだろう。
  
 これまで、劣化ウラン弾は、アメリカやNATOが、イラク、ユーゴ、アフガンなどで使用したと言われている。他国民が、がんになろうが、他民族に遺伝障害が起ころうが、欧米人の知ったことではないと言うことなのだろう。
 しかし、自国民や自国領土に、劣化ウランを落とした国はこれまでない。ウクライナ・ゼレンスキー大統領は自国領土で劣化ウラン弾を使うつもりのようだ。U238の半減期は45億年なので、ウクライナの地は、半永久的に、放射性物質で汚染されることになる。

劣化ウラン弾2023年03月26日

 イギリスはウクライナに劣化ウラン弾を供与するとか。
 劣化ウラン弾はアメリカがイラクで使用したほか、NATOが旧ユーゴで使用した。ウラン238の半減期は45億年なので、劣化ウランに汚染された土地は、半永久的に放射能汚染が続くことになる。
 アメリカなど劣化ウラン弾を使用した国では、劣化ウラン弾は無害といっているが、全くの嘘だ。

Bingに「劣化ウラン弾は有害ですか」ときいたら、以下の解答だった。Bingの解答は常識的なことが多いようだ。

 こんにちは、これはBingです。
 劣化ウラン弾は有害ですかという質問に答えるために、ウェブ検索を行いました。
 劣化ウラン弾は、放射線と化学的な影響をもつ弾丸で、体内に入ると癌や白血病などの病気や障害を引き起こす可能性があります。湾岸戦争やイラク戦争などで使用されたことで、多くの被爆者が出たとされています。英国は最近、ウクライナに劣化ウラン弾を供給すると発表し、ロシア側は核の衝突につながると警告しました。
 劣化ウラン弾は有害で危険な兵器であると言えます。

劣化ウラン弾の理解には、日本原子力研究開発機構の説明が参考になります。
https://atomica.jaea.go.jp/dic/detail/dic_detail_1830.html
https://atomica.jaea.go.jp/data/detail/dat_detail_09-02-03-11.html

本の紹介-東電原発事故 10年で明らかになったこと2021年09月18日

 
添田孝史/著『東電原発事故 10年で明らかになったこと』平凡社新書(2021.2)

 フリー科学ジャーナリスト添田孝史による福島原発事故の解説。
 本書を読むと、東電・国が原発安全性が低いことが分かっていながら、危険な状態を放置してきたことが分かる。
 第一章は福島原発事故の経緯。既に、良く知っている人も多い内容だが、今一度、事故の経緯を確認するうえで、読む価値はあると思う。
 第二章が、この本の中心。福島原発事故は、地震による津波で炉心冷却機能を喪失したために起こった。本章によると、もともと、福島第一・第二原発は、予想最大津波に対する余裕度がなかったこと、その後、貞観地震が知られ、これまで予想された津波よりも、到達津波が高いことが分かったにもかかわらず、追加工事をしないで、それを行政当局も追認していたこと、さらに、東海第二原発では、貞観地震の知見により、対策工事をしていたことなど、東電や国の対応のまずさが書かれている。
 第三章は事故の検証と裁判の話。

本の紹介-原発に挑んだ裁判官2021年09月04日


磯村健太郎、山口栄二/著『原発に挑んだ裁判官』朝日文庫 (2019/6)
 
 本書の前半は、原発差し止め判決など、住民勝訴の判決を下した3人の裁判官-樋口英明(大飯原発訴訟一審裁判長)、井戸謙一(志賀原発一審裁判長)、川崎和夫(もんじゅ訴訟高裁裁判長)-がどのような理由で原告勝訴の判断をしたのか、インタビューをもとに、これを示している。
 本書後半の1.2は、国・電力会社勝訴の判断をした裁判官のインタビューをもとに、どのような理由で国・電力会社勝訴の判断をしたのか、福島原発以降どのように思っているのかなどを示している。
 最後の1/4では、行政により沿った判断を下す最高裁の体質について。
 
 私は、学生の時の労働衛生の講義で、「放射能には安全の閾値はないと考えられているので、放射能の安全基準とは我慢基準である」と聞いたことがある。原発も同じで、本来危険があるものなので、原発の安全基準とは我慢基準で、大事故が起これば地域住民がどれだけ死ぬのかは分からないとしても、電力会社の利益のために容認させる範囲が、安全基準のはずだ。そういうことを理解しないで、安全基準とは、絶対安全な基準であるかのような誤解をしている不勉強な裁判官や、出世のために政府を忖度している裁判官が多かったということだろう。

本の紹介-原発はなぜ危険か2021年08月12日

 
田中三彦/著『原発はなぜ危険か』 (1990/1)岩波新書
 
 本書は30年以上前に出版された岩波新書。
 著者は、元・原子力発電所設計関連に携わっていた技術者。福島第一発電所四号機の圧力容器には、安全性に問題があることを自身が設計に携わった経験から述べている。四号機圧力容器を作った時、何らかの理由で基準許容量を超える歪みが生じたため、クリープ変形を利用して、歪みを補正した。著者は、歪み補正の手法をコンピュータ解析により求めた技術者だった。
 クリープ変形を利用して、変形を補正したのだから、普通に考えれば、強度・特に経年劣化に問題があるはずだが、国は問題なしとした。
 
 福島第一発電所四号機は、東北大震災に伴う事故で、水蒸気爆発を起こし廃炉になった。福島原発事故から10年以上経過した今、この原子炉圧力容器が脆弱でもどうでもよいことだ。しかし、同様の事例は、ほかの原発でもあるかもしれない。そもそも、原子炉内の長期間経年劣化など、十分に解明された技術ではないはずだ。それなのに、政府は老朽化原発の運転期間延長を行っている。

本の紹介-私が原発を止めた理由2021年07月29日

 
樋口英明/著『私が原発を止めた理由』旬報社 (2021/3)
 
 2014年、福井地裁は関西電力大飯原発3・4号機の運転差止めを命じる判決を下した。
 本書は、この時の福井地裁判事部統括判事だった、樋口英明によるもので、差し止めを認める判断をした理由が書かれている。要するに、想定地震の規模が現実に発生している地震よりも小さいので、原発は安全ではないということだ。
 『重力加速度(980ガル)よりも大きい地震など起こりえない』かつてはこのように考えられていたため、原発が作られたときの基準地震動は300ガル程度と、重力加速度の1/3だった。その後、耐震基準は引き揚げられたが、大飯原発3・4号機は重力加速度よりも小さい値になっている。
 各地に地震計が置かれて、地震の詳細観測網が発展した。この結果、重力加速度を超える地震動は珍しくなく、2008年の岩手内陸地震では重力加速度の4倍を超える地震動が観測されている。また、2017年の和歌山県北部地震はM5.5と小規模地震で、最大震度も5強だったにも関わらず、重力加速度を超える地震動が観測されている。こうしたことから、著者は大飯原発3・4号機の危険性があるとの理由で、運転を差し止めた。
  
 なお、本判決は高裁で否定され、原発は稼働することになった。国が電力会社の利益を考えて作った基準に合致していれば、大事故が起きても、人が何人死んでも、それは良いことだと考えるか、それとも、安全性は社会通念で判断するのか、その違いだと思う。

本の紹介-東電原発事故 10年で明らかになったこと2021年04月02日

 
添田孝史/著『東電原発事故 10年で明らかになったこと』平凡社新書(2021/2)
 
著者は大阪大学基礎工学研究科修士修了の科学ジャーナリスト。
本書は、福島原発事故10年が過ぎて明らかになった、これまでの東電のずさんな事故対策を明らかにするもの。
 
第1章は福島原発事故のあらまし。すでに、良く知られていることなので、読み飛ばしても良いだろう。
第2章が本書の中心で、ページ数も多い。事故前に、津波の可能性が指摘され、女川原発や、東海第2原発なででは、それなりの津波対策をしていたにもかかわらず、東電だけが津波対策を故意に怠っていた事実を明らかにしている。
第3章は原発事故裁判の話。政府・東電が事故に真摯に向き合うことなく、言い逃れに終始している実態が示される。
第4章はまとめや今後の話などであり、ページ数は少ない。
 
本書を読むと、如何に東電の対応が悪かったか、さらに事故後も対応が悪いのかが、良く分かるだろう。福島原発事故は予期しえない自然災害などではなく、東電の故意犯に近いように感じる。

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