本の紹介-オウム真理教事件とは何だったのか?2019年04月26日

 
一橋文哉/著『オウム真理教事件とは何だったのか? 麻原彰晃の正体と封印された闇社会』PHP研究所 (2018/7)
 
 2018年7月6日、松本智津夫らオウムの主だった幹部の死刑が執行された。本書は処刑後に緊急出版されたオウム事件の解説書。
 第1章・第2章で、松本智津夫の生い立ちから始まって、オウム真理教が凶悪化し、逮捕に至る状況を説明している。オウム真理教暴走の原因については松本智津夫の問題との説と、理系出身の高学歴幹部たちが暴走したとの説があるが、本書は松本原因説に立っている。松本智津夫は宗教を始める前から暴力団幹部と懇意だったこと、詐欺を指南した人がいたことなどの説明がある。第1章には松本智津夫逮捕の様子も詳しい。
 第3章はオウム真理教武装化に対するロシアコネクションの役割。エリツィン時代のロシア最高幹部の一人であるルスラン・ハズブラートフとの癒着関係が指摘されている。
 第4章は村井殺害の話、第5章は国松長官狙撃の話。どちらも詳しいことが明らかになっているわけではない。

本の紹介―大乗仏教概論2019年04月05日

 
鈴木大拙/著、佐々木閑/訳『大乗仏教概論』 岩波文庫 (2016/6)
 
 本書は、鈴木大拙の英語の本を、仏教学者・佐々木閑が日本語に翻訳して、解説を付けたもの。
 鈴木大拙の本文には興味がないので、佐々木閑の解説しか読んでいません。
 
 鈴木大拙は若いとき「西洋人に真の大乗仏教を教えてやる」との意気込みで、「Outlines of Mahayana Buddhism」を英語で出版した。しかし、当時、欧米ではすでに仏教研究が進んでいたので、鈴木大拙の主張は、大乗仏教の教義とは程遠く、また、サンスクリッド語の解釈もほとんど誤りであることが発覚した。このため、鈴木大拙は、同書を出版停止にして、翻訳も禁止した。本書は、鈴木大拙が死んだために、ようやく日本語に翻訳して出版されたもの。
 なお、鈴木大拙は、その後、自説を大乗仏教一般とはせずに、日本の仏教として紹介することにより、欧米で受け入れらることになる。
 
 訳者の佐々木閑は解説の中で、『大拙大乗経とも呼ぶべき、新たな聖典の誕生』と説明している。大乗仏教の経典は、釈迦の教えではなくて、後代に作成されたものだ。ただし、大乗経典が、釈迦の教えと考えられたものと、完全に無関係と言うわけではなくて、作者が「釈迦の教えの真意はこうだったのだろう」「釈迦の教えがこうなればよかったのに」「俺が儲かるためには釈迦の教えはこうあるべきだ」などと、考えて作成したであろうことは想像に難くない。そういう意味では、鈴木大拙の大乗仏教解説が新たな経典の誕生と考えられても不当ではないかもしれない。しかし、大乗経典が後代の偽作であるとしても、長い歴史の中で生き残ったものなので、ポット出の『大拙大乗経』を同列に論じることはできない。それに、日本の歴史の中で、日本で大乗経典が作成されたことが一度もないことは明らかだろう。そういう意味では、『大拙大乗経』は日本仏教の伝統にも反している。『大拙大乗経』は仏教ではなくて、阿含宗・オウム真理教・真如苑・顕正会・幸福の科学などと同列な「仏教系新興宗教」の一つではないか。

本の紹介ー仏教入門2019年03月31日

  
三枝充悳/著『仏教入門』 (岩波新書)1990/1
 
 タイトルが「仏教入門」なので、日本の仏教・各宗派の概要が分かるのかと思って読むと大間違いである。
 本書の内容の中心は、インド仏教思想の中心的な部分の解説と、インド仏教思想史であり、入門にしては内容も高度。ある程度、仏教思想の知識がないと、読みにくいと思うが、仏教思想の知識が多少ある人が、仏教思想の基本を再確認するためには、初期仏教や部派仏教の基本概念について、簡潔に解説されていて、読みやすい。
  
 本書は3つの章に分かれている。
  
 第一章はインド仏教史。仏教の起こりと展開の概要が書かれているが、ページ数は多くはない。
  
 第二章が本書の中心で、インド仏教思想史。初期仏教、部派仏教について、無常、三法印、四諦八正道のような基本的な用語を解説することにより、思想の概要を明らかにしている。でも、これらの概念間のつながりを理解する事前知識がないと、この時代のインド仏教思想を理解するのは困難だろう。ただし、ある程度の仏教知識がある人が、当時の仏教思想を再確認するためには、良くまとまっていて読みやすい。
 初期大乗仏教については、諸仏・諸菩薩・初期大乗経典・竜樹と、重要で特徴的なものの説明がなされるが、全体像がつかみにくい。 
 中・後期大乗仏教と密教については、主要人物名と主要経典などの羅列で、歴史の教科書のような記述で、これだけで、思想内容を理解するのは困難だと思う。
 
 第三章は、スリランカ、ミャンマー、タイ、中国、朝鮮、日本など、インド以外へ仏教が伝来した以降の、各地でのそれぞれの展開について、触れているが、頁数も少なく概略にとどまる。

父母仏ー性行為中の仏像2019年03月30日

 
 東京国立博物館では、特別展「東寺」開催中です。これと関係して、本館14室では「密教彫刻の世界」として、十数体の密教美術の仏像が展示されています。
 この中に、日本の密教とは関係ないのだけど、チベット密教の父母仏立像があります。父母仏とは、男女が抱き合っている仏像。この男女の抱き合っている像では、おそらく性器を挿入しているのだと思うのだが、展示の位置から、ちょっと見えなかった。
 日本の密教では、読経では性行為を推奨しているけれど、信者に対して視覚的に性行為の像を見せることはない。

特別展「国宝 東寺―空海と仏像曼荼羅」2019年03月28日

   
 東京国立博物館で開催中の「国宝 東寺」展を観覧しました。平日でも、かなりの人だかり。昨年の運慶展よりは少ないけれど、御室派展よりも混んでいました。
 圧巻は、当時の立体曼荼羅から15体が展示されている。博物館の展示だと、仏像を横や裏からも見ることができて、貴重な機会です。

本の紹介―東アジア仏教史2019年03月15日

   
石井公成/著『東アジア仏教史』岩波新書(2019.2)
  
 内容は、中国、日本、朝鮮、ベトナムの仏教史。なかでも、中国仏教史の話が多い。
 岩波新書なので、一般向けに平易な文章で書かれている。しかし、経典の名前が多くて難解である。詳細を書こうとしたらこのようになるのだろうけれど、もう少し、仏教史の流れの概略でよかったのではないかと思う。
 経典の名前を出されても、多数の経典を読んだことがある人は、一般人には少ないだろう。ただし、経典名が豊富なので、これからこれら地域の仏教を研究しようとしている人には有益な本だろう。

 中国では仏教伝来以降、盛んに偽経が作られ、これらが仏の教えとして日本にも伝来している。多数の偽経が作られた中国の社会的背景なども説明されており、日本の仏教を理解するうえでも有益な本だろう。
 とはいえ、私の仏教知識では、本書を十分に理解するのは難しい。

本の紹介ー仏教抹殺2019年03月03日

  
鵜飼秀徳/著『仏教抹殺』文藝春秋 (2018/12)

著者は浄土宗の僧侶でジャーナリスト。
本書は、明治前後の廃仏毀釈の調査・解説。ジャーナリストの文章なので読みやすい。
鹿児島では神仏分離令以前に激しい廃仏毀釈が行われた。これは、藩主が通貨偽造のために金属を調達するためだった。松本では藩主が新政府へアピールするために過度な廃仏毀釈が行われたものだった。
 本書では、激しい廃仏毀釈が行われた、鹿児島・宮崎・松本・隠岐・佐渡・伊勢や、貴重な文化遺産が失われた奈良興福寺など各地の廃仏毀釈の様相を調査して、廃仏毀釈の原因を明らかにしている。

本の紹介―大乗仏教2019年02月20日

佐々木閑/著 『大乗仏教 ブッダの教えはどこへ向かうのか』 NHK出版 (2019/1)

 京都大学工学部出身の仏教学者による大乗仏教の解説書。青年と講師の対談の形で記述されている。
 大乗仏教は釈迦の教えとはかなり異なっていることや、大乗仏教の中にはいろいろな宗派があり、教えも大きく異なっている理由が理解できる。本書は、一般の読者を対象としたもので、文章も平易で、仏教や宗教の特別な知識なく容易に読み進めることができる。

 本書第1章では、釈迦の仏教がどのような理由で大乗仏教へ変質したのかを説明する。そのあと、第2章以下、般若経・法華経・浄土教・華厳教・密教と大乗仏教の主要な宗派についてその起こりや宗旨を簡単に説明する。最後に、大乗涅槃経の教えがヒンズー教に近いことを説明し、インドで仏教がほぼ消滅した理由を説明している。

本の紹介ー神社本庁とは何か2019年02月11日


小川寛大/著『神社本庁とは何か 「安倍政権の黒幕」と呼ばれて』ケイアンドケイプレス (2018/12)

 安倍政権に大きな影響を持っている「日本会議」の主要構成メンバーの一つが「神社本庁」である。神社本庁とは、全国の神社を束ねる包括宗教法人であるため、政治への影響力も大きい気がする。また、安倍政権の極端な戦前回帰傾向は神社本庁の戦前回帰傾向とも一致している。
 本書では、神社本庁の実態を説明し、国政への影響力が大きいとは言えないことを解明している。
 日本人の多くが初詣などで神社にお参りするので、そのような意味では神道の信者であると言えるが、だからと言って、多くの国民が、神社の号令一下、安倍政権の支持者になるということもない。そういった観点から考えれば、本書の指摘はもっともである。しかし、多くの日本人は政治に無関心で、知識も乏しく、学習意欲もないのだから、そういった日本人に付け込む可能性があるので、神社本庁の戦前回帰意欲には警戒が必要だろう。

 ところで、神社本庁の戦前回帰の目的はなにか。本書P141,142に興味深い記述がある。要するに、神社本庁幹部の私利私欲が目的なのだろう。
 現在の神社界は、多くの貧乏神社の上に一部の金持ち神社が君臨する、超格差社会である。そして実はこういう利権じみた部分については、神社本庁は日ごろの「戦前志向」をまるで放棄しているのだ。どういうことかと言うと、大日本帝国は神社の宮司の世襲を禁止していたのだが、戦後は再び社家(宮司を世襲で継承してきた家柄)が復帰して、また神社を一族で運営しているというケースが多い。それどころか、もともと社家ではなかった人が、第二次世界大戦の敗戦時にたまたま宮司をしていた神社を自分の息子に継承させ、社家化した例もある(「新社家」と呼ぶ)。神社本庁が本当に戦前の状況を一つの理想としているのであれば、現代においても宮司の世襲は禁止してしかるべきだ。しかしそのような機運は現状ほとんど見られず、「金持ち神社の社家に生まれた子供はずっと金持ち、貧乏神社の社家に生まれた予供はずっと貧乏」という神社界の格差構造がほぼ固定化されてしまっている。
 そして厳しく直言すれば、こうした神道の歴史の中から都合のいい「いいとこ取り」をしているような状況が、いまの神社界に「闇」をもたらしている側面があるとも感じられるのだ。戦前にはなかった巨大.富裕神社を世襲化させる基盤を確保した上で、戦前にそうしたごく一部の神社のみに存在した国家権力との関係や特権を「取り戻そう」としている。そういう外部からの人材が入り込めない閉じた特権階級サークルの中では、当然のように近親憎悪的な醜い派閥争いが発生することになる。それがいま、神社本庁およびその周辺で起こっている各種の人事紛争や不正疑惑なのではないのか。意識的にせよ無意識的にせよ、神社本庁が「戦前回帰」で目指す地点がこういうところにあるのだとしたら、それは神々に対しても氏子・崇敬者たちに対しても、あまりに申し訳ない姿だと言わざるをえない。(P141,P142)

本の紹介―新宗教の本 霊能の秘儀と巨大教団の系譜2019年02月01日

ムック『新宗教の本 霊能の秘儀と巨大教団の系譜』 学研プラス (2008/12)

 最初に、宗教学者・島田裕巳による新宗教の概説の後に、いくつかの新宗教の教祖・教義・実践などについて解説している。本書のタイトルに「霊能の秘儀」とあり、実際に真如苑の接心などにも触れられているが、数ページとごくわずか。霊能の秘儀以外の修業にも触れられているが、こちらもページ数は少ない。真如苑の接心のカラー写真がある。このような写真はあまりないので貴重だ。 
 新宗教は真光系や霊友会系など分裂を繰り返すものも多い。これらに対する詳細な系統図が載っており便利だ。

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