Kurakhove陥落間近か ― 2024年11月21日
ドネツクの西35㎞にあるKurakhoveの攻略が焦点になっている。貯水池の北では、Stepanivka、Illinkaはすでにロシア軍が解放した。Nova Illinkaについては、すでに解放との情報と、グレイゾーンとの情報がある。Berestkyは、今のところ、ウクライナ軍が掌握しているものと思われる。
貯水池の南側のKurakhoveはウクライナ軍の拠点となっていた。ここが陥落すると、ウクライナ軍はドネツク西部の広い範囲で困難な状況に陥る。すでに、Kurakhove東端をロシア軍が掌握したことは間違いない。貯水池沿岸部は工場地域であるが、このうちの東半分(図の①部分)はすでにロシア軍が抑えているとの情報がある。また、Kurakhove市街の東半分(図の②)もロシア軍が掌握したとの情報もあるが、この情報はちょっと怪しい。
さらに、病院を含む市内西側を守備していたウクライナ軍が、貯水池沿岸の西部工場地域に撤退したとの情報もある。もし、この情報が事実ならば、ウクライナ軍の防衛ラインはほとんど崩壊状態ということだろう。
ゼレンスキーは8月にロシア領クルスクを攻撃した。その結果、ドネツク西部戦線が弱体化し、ロシア軍の攻勢が進んだ。11月、トランプ大統領当選が決まると、ウクライナ兵の逃亡が進んでいるようで、ウクライナ軍の弱体化に加速がかかっている。
本の紹介-日ソ戦争 ― 2024年11月07日
麻田雅文/著『日ソ戦争-帝国日本最後の戦い』(中公新書 2798) (2024/4)
本書「おわりに」には以下のように記されている。
『日ソ戦争は、日本に無条件降伏を強いるという戦略目標を達成するために行われた、連合国の数ある作戦の一つである。軍事的にはそれ以上のものではない。しかし、この戦争を政治的にどう見るかは大きな争点だ。』
本書は日ソ戦争の起こりから、満州での戦争、樺太・千島での戦争を説明する。多くの文章は、軍事的に見た史実を解明するものであり、客観的な事実を知りたい者にとっては有益である。
日本側から見た満州での戦争については、主観的・政治的な本が多いなか、比較的客観的に書かれた本書は参考になるだろう。ただし、ソ連側からの本として「ジューコフ元帥回想録」が日本語に翻訳されて出版されているので、詳しい戦争の様態を知りたい場合は、こちらを読んだ方が良い。
千島・樺太での戦闘の説明では、玉音放送以降にソ連が戦闘を止めなかったことをくどくどと恨みがましく書いているが、この部分は客観的な記述ではなくて著者の思いだろう。玉音放送は、国民向け宣言にすぎず、8月14日の連合国宛通告は、ポツダム宣言受諾の用意あることを宣言しているに過ぎない。陸軍に対する命令は大陸命によるが、大陸命第千三百八十五号・大陸命第千三百八十八号では、第五方面軍を含む外地軍のうち支那派遣軍を除き、昭和二十年八月二十五日零時以降一切の武力行使を停止することが命じられた。実際には、命令が必ずしも行き渡らなかったので、9月2日に大陸命特第一号・大陸指特第一号で再度完全停戦命令を出している。
ところで、樺太真岡の占領では、本書にはソ連軍がいきなり艦砲射撃をしたとの記述がある。しかし、日本人の回想には、ソ連軍艦が入港に際して儀礼として空砲を撃ったところ、現地守備隊が砲撃したため、艦砲射撃が始まったとの話もあり、本書の記述の信憑性は検討の必要があるように感じる。
本書には、ソ連兵による略奪・強姦等の犯罪行為や、日本人が日本人女性を売春婦として差し出した話が記載されている。犯罪行為についていえば、日本軍人の中には悪い人も良い人もいたのと同様、ソ連軍人やアメリカ軍人の中には悪い人も良い人もいたという、単純な事実を表しているに過ぎない。個々の単発的事例紹介ではなくて、もう少し全体状況がわかるような記述にしてほしかった。ソ連兵の犯罪行為が組織的だったり、割合が高かったり、長期間に及んだのならば、それは歴史的客観的記述として重要かもしれないが、ソ連兵に関しては、そのような事実はない。戦争中の日本将兵の強姦は組織的な場合があり、日本国内における米兵の性犯罪は戦後70年を経た今でも続いているので、そういうことの腹いせの記述なのかもしれない。
ちょっといただけない内容がある。P232に「もし、米軍が先んじて千島列島の作戦担当区域に進駐していたらどうなっていただろうか」とある。歴史に「たら」「れば」をいうのは意味のないことだ。「米軍が進駐していたら」と考えた場合、現実とは、どの状況がどのように違っていたからそうなったのかによって、結果も全然異なる。複雑な現実をちょっと変えた場合の正確なシミュレーションなどできない。
もう一ついただけない記述がある。第4章のタイトルは「日本の報復を恐れたスターリン」である。イタコでもないかぎり、個人の気持ちなどわからないものだし、スターリンの日記にそうかかれていたとしても、誰だって、いろいろなことを考えるものだ。スターリンには恐れる気持ちも、恐れない気持ちもあっただろう。
総じて言えば、本書は、客観的な歴史書の部分が多い。ただし、著者の思いやが強い部分があって、読んでいてめんどくさくなった。
北の大地が育んだ古代-オホーツク文化と擦文文化- ― 2023年11月23日
本-誰も国境を知らない 令和版 ― 2023年10月25日
西牟田靖/著『誰も国境を知らない 令和版 揺れ動いた「日本のかたち」をたどる旅』清談社 (2023/7)
同名の本が、情報センター出版局から2008年に出版されている。本書は旧版の増補版。
341ページまでが旧版と同じ内容。342ページ~431ページが、本書で追加された部分。
追加部分の最初は、吉田夏彦・東海大教授の日本の領土問題の簡単な解説。吉田氏は著書も多く、テレビなどの出演機会も多いので、氏の領土問題の説明を聞いたことのある人は多だろう。本書の説明は、ページ数も少なく、内容的にもいつもの吉田氏の主張なので、特に参考になることも少ない。
著者の追加部分は、尖閣問題が二章、与那国が一章、それから最終章に領土問題のまとめとして北方領土・沖ノ鳥島・竹島・対馬・小笠原。硫黄島について、少し書かれている。
旧版は著者が取材した内容を、淡々と事実を書いていて共感が持てた。
しかし、今回追加された部分は、一面的領土主張が先行していて、客観的な取材記録とは程遠い。ただし、尖閣問題の最初の追加部分は、著者らが尖閣を取材したレポートなので、それなりの読みごたえはあると感じる人もいるだろう。ただし、私は、同じレポートをどこかで読んだような記憶がある。
今回、増補された、それ以外の章は、一方的な領土主張に基づく、一面的記述のようで、興味が持てない。
と、言うことで、今回増補された部分には、魅力を感じなかった。
本の紹介-東シナ海 ― 2023年04月05日
佐々木貴文/著『東シナ海 漁民たちの国境紛』角川新書 (2021/12)
この手の本は、事実の解説と評論の場合が多いが、本書は、そうではなくて、政治の現状に対する著者の個人的感想文に感じる。
東シナ海漁業では、日台民間協定と、日中漁業協定により、広範に各国の独自漁業が認められている。本書には、これら協定の解説も一応あるので、事実の解説の面で劣っているわけではない。東シナ海での日本の漁業は、近年、中台の進出で押しやられている事実があるので、その点に対して、本書では大変な懸念をしている。しかし、日本の第一次産業はすべて衰退しているので、東シナ海漁業問題に限って論じる意味がどれだけあるのか疑問だ。それに、東シナ海の近隣地域は、日本では八重山、台湾では台北、中国では上海などであるが、八重山の消費購買力が上海と肩を並べるなどありえないので、八重山の漁業が、中台に及ばないのは仕方がないだろう。本書には書かれていないが、戦前の尖閣近海等の東シナ海漁業は、台湾漁船に、八重山の船員が雇用されて漁業をしていた実態があった。当時、台湾は日本領だったので「日本の漁場だった」との主張も成り立つが、日本漁業が衰退したことにはならない。
シコタンハコベ ― 2023年03月11日
本の紹介-ウクライナ「情報」戦争 ― 2023年01月15日
佐藤優/著『ウクライナ「情報」戦争 ロシア発のシグナルはなぜ見落とされたか』徳間書店(2022.9)
著者は元モスクワ大使館職員。現在、ロシア・ウクライナの政治に関する、日本の第一人者。
本書はウクライナ・ロシア戦争を客観的に記載しており好感が持てる。
第1章はロシア側の報道。日本では、ウクライナ側の謀略報道を垂れ流しているマスコミが多い中、本書の記述は有益である。著者のコメントも随所にあるが、量が少なく、この問題に詳しくない読者には、ロシア側情報の正否が分からない。もう少し、著者の詳しい解説が欲しいと思った。
第2章は戦争の時系列経緯。本書の出版は2022年9月なので、8月までが記述対象。日本のマスコミ報道の多くは、ウクライナ側の謀略報道の垂れ流しである。戦争の報道は、どちらも、真実と謀略とが混在しているので、基礎知識と情報分析能力がないと、何が真実かわからないものである。この点、本書の記述は、この地域の近現代史・政治の第一人者の記述で、著者が真実と確認した客観的事実を記載しているようで好感が持てる。
戦争の責任について以下の記述がある。事実をよく知っている著者の客観的記述である。
今回の事態に至るまでには、ゼレンスキー大統領にも大きな責任がある。プーチンはウクライナの右翼勢力やゼレンスキーをナチスと批判した。これに対して、ゼレンスキーは、自分はユダヤ系なのでナチスではないと、全く頓珍漢な反論をしたが、日本のマスコミは、ゼレンスキーの言を無批判に伝えたことがある。映画俳優に過ぎないゼレンスキーがウクライナ近現代史知識のない大バカ者なのは仕方ない事であるが、日本のマスコミ人も、ウクライナ史の基本的知識はもってほしいと感じたことがある。
ウクライナは20年5年の「第2ミンスク合意」で、親ロシア派武装勢力が実効支配する地域に「特別の統治体制」を導入するための憲法改正を約束したが、19年に大統領に就任したゼレンスキー氏はその履行を頑なに拒んだ。
プーチン氏は「第2ミンスク合意」に基づいて、ゼレンスキー氏が交渉に応じるならば武力行使することなくロシアの目的を達成できると考えていた。「第2ミンスク合意」ではロシア派武装勢力が実効支配しているドネツク州とルハンスク州に「特別の統治体制」を認める憲法改正をウクライナが行うことが約束されており、OSCE(欧州安全保障協力機構)の監視下で公正かつ民主的な選挙が行われることも定められていたからだ。ウクライナ国家の枠内で高度な自治が確保されれば、この自治地域の同意なくしてウクライナがNATOに加盟できなくなる仕組みを作ることは可能とロシアは考えていたのである。
ロシアによる侵攻以前にも、フランスのマクロン大統領、ドイツのショルツ首相が、ミンスク合意を基礎にロシアとウクライナを仲介しようとした。プーチン氏はミンスク合意による係争解決に同意したが、ゼレンスキー氏は明確な回答をしなかった。ミンスク合意に基づいてウクライナの主権の下で問題を軟着陸させる可能性をなくしたのは、むしろウクライナ政府の方だったのだ。
ウクライナが「ミンスク合意」を履行する意思を持たないと判断したプーチン氏は、「ルガンスク人民共和国」と「ドネツク人民共和国」の両「人民共和国」に住むロシア人を守るために軍事介入を決断したと言える。(P100~102)
本書には、バンデラ主義の一通りの解説があり、プーチンのナチス批判の意味が分かるだろう。なお、OUNについては、中公新書の「物語ウクライナの歴史」にも、多少の説明がある。
ウクライナの民族主義者ステパン・バンデラ(1909~59年)に対する評価だ。バンデラは、1928年にUVO(ウクライナ軍事組織)に加わり、翌29年にOUN(ウクライナ民族主義者組織)に入党した。35年にポーランド内相暗殺事件に関与した容疑で逮捕され、死刑判決を受けたが、終身刑に減刑された。39年に第2次世界大戦が勃発し、ポーランド国家が崩壊すると、ナチス・ドイツ軍によって解放されOUNの幹部に戻った。バンデラやOUNの活動家は反ユダヤ主義者でもあった。本書第三章、第4章は小さな章で、それぞれ、クリミア併合と北方領土問題の説明。
ソ連とロシアでバンデラとその同志はナチス主義者とされている。2014年以降のウクライナ政権はバンデラをウクライナ民族の英雄と位置づけているのだ。
その具体的な例として、2015年1月1日にキエフで開催された奇妙な行事のことを振り返ってみたい。これは、ステパン・バンデラの生誕106年(1909年1月1日に生まれ)を記念する夜間の「たいまつ行進」だった。バンデラは一時期、ナチス・ドイツと提携し、1941年の独ソ戦の直前にウクライナの独立を図ったことがある。バンデラが指揮する軍団が、ドイツ軍の指揮下に入ってソ連軍と戦い、戦争初期にウクライナを支配下に置いたのだ。バンデラの軍団は、ドイツ軍の下に置かれ、無辜のユダヤ人・ロシア人、スロバキア人、チェコ人を虐殺した。
ナチスの特徴は、「約束を守るとは約束していない」と言って合意を平気で反故にしてしまうことだ。ウクライナ独立の約束をナチスは守らず、ウクライナ人を「東方の労働者」としてドイツの鉱山や工場で働かせた。ドイツ軍に占領されたリボブ(ウクライナ語ではリヴィウ)でウクライナ独立を勝手に宣言していたバンデラは、ナチスによって逮捕され、強制収容所に送られてしまった。
戦争末期の44年9月、ドイツによって強制収容所から釈放されたバンデラは、再び反ソ戦争の指揮をとった。戦後は、西ドイツに拠点を置いて反ソ・ウクライナ民族独立運動に従事。59年10月15日、ミュンヘンの自宅周辺でバンデラはKGB(ソ連国家保安委員会・秘密警察)の刺客によって暗殺された。
そうした経緯から、ソ連時代のウクライナでは、バンデラは「ナチスの協力者」「テロリスト」などと嫌悪されていたのだが、ウクライナで民族主義が台頭すると共に「ソ連からの独立を果たした英雄」と評価は一転した。
バンデラの出身地であるウクライナ西部のガリツィア地方に基盤を持つ政党「スボボダ(自由)」は、バンデラの思想と運動形態を継承している。バンデラ主義者と呼ばれる人々が主張するウクライナ民族至上主義、反ユダヤ主義は、国際基準でネオナチに分類される。ナチスが頻繁に行った「たいまつ行進」を、このように「スボボダ」をはじめとするバンデラ主義者が行ったのも、自らがネオナチであることを誇示するためだ。(P115~P118)
本の紹介-北方領土のなにが問題? ― 2022年10月17日
黒岩幸子/著『北方領土のなにが問題?』清水書院 (2022/8)
100ページ余りの薄い本。文章は平易で、文字の行間も大きいため、楽に読める。
幕末期の日ロ交渉から最近の返還交渉まで、歴史を追って、北方領土問題を記す。日本に都合の良い主張をする本ではなくて、冷静に事実を記載している点で好感が持てる。薄い本なので、詳しい内容はないが、領土問題を理解するための参考書としては好適だろう。
この地域の歴史は、幕末の日ロ交渉から始まったわけではなく、もっとずっと以前から人々が暮らしていた。そういう視点で北方領土問題を理解したい人は、本書だけでは不足で、この場合は、以下の本が参考になる。
黒岩幸子/著『千島はだれのものか』東洋書店 (2013/12)
本書は7つの章に分かれ、各章の末尾にはレッスンとして課題が出されている。終りの方の章で以下の課題がある。著者は北方四島交流に長い間携わってきたので、日本の主張だけを声高に叫べば解決するという問題ではないことを十分に承知しているのだろう。
以下の2つの問題を、皆さんも考えてください。
(a)北方領土に現在住んでいるロシア人島民になったつもりで,領土問題を考えてみましょう。日本の領土要求をどのように受け止めますか。自分や家族の生活に関してどんな心配が生まれるでしょうか。
(b)北方領土問題の解決案をつくってみましょう。まず北海道根室管内の市民,次に南クリルのロシア人島民が集まっていると想定して,その解決案を説明してみましょう。
本の紹介-尖閣諸島の石油資源と日中関係 ― 2022年08月15日
亀田晃尚/著『尖閣諸島の石油資源と日中関係』三和書籍 (2021/7)
本書は、主に、東シナ海の海底油田・ガス田開発にまつわる、関係各国の対立と協力に関する研究書。このため、参考文献の紹介も多い。一般読者を対象とした啓蒙書ではない。
第一章は戦後、石油が資源として重要になったということで、特に興味ある記述はなかった。
第二章はECAFE等による東シナ海石油埋蔵量の推定調査の話。1960年代の終わりごろに、東シナ海、尖閣周辺海域に膨大な石油埋蔵があるとの推定がなされた。
第三章は中国、台湾の石油の関心。この中で、中国が尖閣を主張するようになったのは、埋蔵石油が原因であるとしている。確かに、それがなかったわけではないだろうが、中国が尖閣領有を主張してきたのは、沖縄返還のときであって、ECAFEにより東シナ海の石油埋蔵が推定されたときとはずれている。もっとも、石油埋蔵の推定は、ある時に急に言われるようになったのではないので、沖縄返還のころに、石油の埋蔵を主張したものもある。この時代、中国には海底油田開発の能力はなかったようだ。
第四章は1970年代、日本の海洋油田探査。1967年の衆議院商工委員会で、政府は大陸棚のボーリングは水深20から30メートルのところで行い、150メートルの水深のところでは調査能力がないと解答した。
第五章は日中ではなくて日韓の海底油田探査協力。当時、日本は日韓中間線をEEZの境界と主張していた。しかし、日韓協力では日本が主張する中間線の日本側で、日韓合同調査が行われた。
第六章は「70年代の日中共同開発への指向」。あまり興味のある内容ではなかった。
第七章は尖閣問題。海洋油田の話というわけではない。尖閣問題に関しては、多数の著書でいろいろな説が唱えられるが、本書は、主に日本政府の説に沿っている。
第八章は「最近の海洋をめぐる日中関係」
本書を読んでいてわからなかったのだが、東シナ海には、結局、どれほどの石油埋蔵があるのか、商業レベルに乗るのか。1970年以前は、地層の形から膨大な石油埋蔵の可能性が指摘された。その後、日本の国会では、大した量がないことが報告されるなど、日本の石油開発熱は冷えていった。中国は東シナ海でガス田掘削をするなど、多少は開発しているが、商用レベルに乗るほどの成果は出ていないようだ。もし、石油埋蔵が大したことないのならば、尖閣問題と石油問題をリンクさせる理由は、もはや、ないはずだ。
日本が国際法を無視して一方的に設定したEEZ ― 2022年08月07日
中国が台湾周辺海域で行った軍事演習で、日本のEEZ(排他的経済水域)内に弾道ミサイルが落下したと日本政府は抗議している。これに対して、中国外務省は「日中両国は関連の海域で境界をまだ確定しておらず、日本のEEZという言い分は存在しない」と説明した。
さらに、これに対して、松野官房長官は「国連海洋法条約の関連規約に基づき、領海基線から200カイリまでのEEZの権限を有している。向かい合う国とEEZの権限が重複する水域では中間線を基に境界を画定するとされている」と説明した。(産経新聞2022/8/5)
日本と中国のどちらの説明が正しいのか。国連海洋法条約を見れば明らかだ。
――――――――――――――――――――――――
海洋法に関する国際連合条約
第五十七条 排他的経済水域の幅
排他的経済水域は、領海の幅を測定するための基線から二百海里を超えて拡張してはならない。
第七十四条1
向かい合っているか又は隣接している海岸を有する国の間における排他的経済水域の境界画定は、衡平な解決を達成するために、国際司法裁判所規程第三十八条に規定する国際法に基づいて合意により行う。
――――――――――――――――――――――――
日本は「領海基線から200カイリまでのEEZの権限を有して」と言っているが、実際は「二百海里を超えて拡張してはならない」のだから、200海里を超えて権利を有していないのであって、200海里まで権利を有しているわけではない。日本は、「EEZの権限が重複する水域では中間線を基に境界を画定するとされている」と主張したが、国際法の説明としては、完全な虚偽で、海洋法条約では「国際法に基づいて合意により行う」と定められている。
日本の説明は、国際法の説明としては、ほぼ完全に嘘で、中国の説明は国連海洋法条約に従った正しい説明であることが明白だ。
中国の軍事演習のため、漁民が出漁できないなど、日本としては迷惑をこうむっている。だからと言って、日本政府が、嘘をついて、日本国民をだますことが正当化されることにはならない。普通に、説明すればよいのに。
さらに、これに対して、松野官房長官は「国連海洋法条約の関連規約に基づき、領海基線から200カイリまでのEEZの権限を有している。向かい合う国とEEZの権限が重複する水域では中間線を基に境界を画定するとされている」と説明した。(産経新聞2022/8/5)
日本と中国のどちらの説明が正しいのか。国連海洋法条約を見れば明らかだ。
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海洋法に関する国際連合条約
第五十七条 排他的経済水域の幅
排他的経済水域は、領海の幅を測定するための基線から二百海里を超えて拡張してはならない。
第七十四条1
向かい合っているか又は隣接している海岸を有する国の間における排他的経済水域の境界画定は、衡平な解決を達成するために、国際司法裁判所規程第三十八条に規定する国際法に基づいて合意により行う。
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日本は「領海基線から200カイリまでのEEZの権限を有して」と言っているが、実際は「二百海里を超えて拡張してはならない」のだから、200海里を超えて権利を有していないのであって、200海里まで権利を有しているわけではない。日本は、「EEZの権限が重複する水域では中間線を基に境界を画定するとされている」と主張したが、国際法の説明としては、完全な虚偽で、海洋法条約では「国際法に基づいて合意により行う」と定められている。
日本の説明は、国際法の説明としては、ほぼ完全に嘘で、中国の説明は国連海洋法条約に従った正しい説明であることが明白だ。
中国の軍事演習のため、漁民が出漁できないなど、日本としては迷惑をこうむっている。だからと言って、日本政府が、嘘をついて、日本国民をだますことが正当化されることにはならない。普通に、説明すればよいのに。