本の紹介-学校に入り込むニセ科学2023年03月17日

 
左巻健男/著『学校に入り込むニセ科学』平凡社新書 (2019/11)

著者は理科教諭経験のある教育学者で法政大学教授などを務める。

 本書では、最初に、「水伝(水にやさしい言葉を掛けると結晶が美しくなる)」「EM菌」のようなニセ科学が、一部の学校で、事実であると教えられていた実態を説明する。こんな、噴飯物を信じる低能教師の存在には驚かされる。
 また、「親学」をはじめとする、脳科学のインチキ理解や健康・栄養に対するインチキ理解によるトンデモ説と、それが真実のように教えるている教育現場があることを説明する。「親学」とは新興宗教「成長の家」系の学者が唱えた説で、自民党安倍派や維新によって信奉された。

京都大学 理系 数学入試問題2023年03月08日

京都大学の数学入試問題は一癖あるものが多い。受験勉強に取り組み、かつセンスがないとできないような問題が出題される。今年の、理系問6もそんな感じがする問題。

問6

(1)  cos3θ、cos4θをcosθの式で表せ。

(2)  p3以上の素数とする。cosθ=1/pのとき、θ/πは無理数か。

 

方針:(1)(2)のヒントになっていることは容易にわかるだろうけれど、私には、どうヒントなのかわからなかった。そこで、cos5θとsin3θ~ sin5θまで書いてみたら、ようやく解答方針がわかってきた。 (1)のヒントだけで方針を立てろと言われたらつらい。

 

 cos2θ=2cos2θ-1

 cos3θ=4cos3θ-3cosθ

 cos4θ=8cos4θ-8cos2θ+1

 cos5θ=16cos5θ-20cos3θ+5cosθ

sin2θ=2cosθsinθ

sin3θ(4cos2θ-1) sinθ

sin4θ=(8cos3θ―4cosθ) sinθ

sin5θ(16cos4θ-12cos2θ+1) sinθ

 

(2)の解答

最初に、n2のとき、cos(nθ)sin(nθ)は以下のように書き表せることを数学的帰納法によって示す。

 cos(nθ)2n-1cosnθ+fn-2(cosθ)

 sin(nθ){2n-1cosn-1θ+gn-2(cosθ)} sinθ

    ただし、fn-2(x)gn-2(x) n-2次以下の整式

(示し方は簡単なので割愛)

cosθ=1/p  θ=(m/n)π  (p3以上の素数、mnは整数)とする。

このとき、cos(nθ)は明らかに整数であり、cos(nθ)2n-1cosnθ+fn-2(cosθ)であるから、

両辺にpn-1を掛けると、fn-2(cosθ)×pn-1は整数であるから、2n-1/p は整数となる。

これは、p3以上の素数であることに矛盾する。

すなわち、cosθ=1/pのときθ/πは無理数です。

東大の数学入試問題2023年03月07日

例年、主要大学の数学入試問題を見ているのだけれど、今年はやる気がしない。そうは言っても、頭の体操に、東大理系の数学入試問題を一部解いてみた。

問題5
  整式 f(x)=(x-1)2(x-2) を考える。
  (1)  g(x)を実数係数とする整式とし、g(x)f(x)で割った余りをr(x)とおく。{g(x)}7f(x)で割った余りと、{r(x)}7 f(x)で割った余りが等しいことを示せ。
  (2)  abを実数とし、h(x)=x2+ax+bとおく。{h(x)}7f(x)で割った余りをh1(x)とおき、{h1(x)}7f(x)で割った余りをh2(x)とおく。h2(x)h(x)と等しくなるようなa,bの組を全て求めよ。


解答と解説
 東大らしい問題だ。それほど難しくはないけれど、かといって易しくもない。手際よく進めないと時間内には正解にたどり着けないだろう。日頃の受験勉強がものをいう、そんな問題だ。
(1)  は自明なので割愛。
(2)  の解答
 この問題はh1を評価して、次にh2を評価してもよいが、(1)がヒントになっているのだと思えば、{h(y)}49を評価した方が楽になるような気がするだろう。また、y=x-1と置き換えると、若干答案を書く量が減るが、本質的ではない。


<(2)の解答>
(1)  より、h49を多項式fで割った余りがh2である。

y=x-1とする。すなわち、f(y)=y2(y-1)
ここで、h(y)=y(y-1)+By+Cとする
{h(y)}49=P(y)y2(y-1)+49C48y(y-1)+(By+C)49と書ける。ただしP(y)yの多項式。
(By+C)49=y2(y-1)Q(y)+μy(y-1)+βy+γ とおく。ただしQ(y)yの多項式。
y=0を代入して、γ=C49
y=1を代入して、β+γ=(B+C)49
(By+C)49-γ=y2(y-1)Q(y)+μy(y-1)+βyの両辺をyで割って、y=0を代入すると次式を得る。
49BC48=-μ+β
以上より、
h2(y)=αy(y-1)+βy+γ
ただし、α=(B+C)49-C49-48BC48+48C48
β=(By+C)49-C49γ=C49
α=1, β=B, γ=C となる条件を求める。 
γ=C49 であるから、C=-1,0,1のいずれかである。

C=1で、q=Bとすると、
 (B+1)49-1=Bが成り立つので、B=-2,-1,0のいずれかである。

C=0で、q=Bとすると、
 B49=Bが成り立つので、B=1,-1,0のいずれかである。

C=-1で、q=Bとすると、
 (B-1)49+1=Bが成り立つので、B=2,1,0のいずれかである。

以上、解の候補として、B,Cの組が9通り見つかった。この中で、α=1となるものが解である。
このとき、(B+C)49=B+C  C49=C に注意して、9通り試すと、

B=1,C=0およびB=1,C=-1  が解であることがわかる。

すなわち、h(x)=x2-2x+1  h(x)=x2-2x

東大の数学入試問題2023年03月06日

例年、主要大学の数学入試問題を見ているのだけれど、今年はやる気がしない。そうは言っても、頭の体操に、東大理系の数学入試問題を一部解いてみた。

問1は積分の問題。東大の積分問題は難しいことが多いのだけれど、この問題は易しい。1/√を積分から出すところに気が付かないとこの問題はできないけれど、東大受験生ならば、ほとんどの人ができたのではないかと思う。

本-ルポ 大阪の教育改革とは何だったのか2023年02月13日


永尾俊彦/著『ルポ 大阪の教育改革とは何だったのか』岩波ブックレット(2022/5)

 特に、興味が持てる内容ではなかった。読んだことを忘れないように書き留めておきます。
 もっとも、維新による教育改革はひどいもので、こんな記事もあります。

『維新が喧伝する「大阪は高等教育無償化」の大嘘!』日刊ゲンダイ(2023/2/3)
https://news.yahoo.co.jp/articles/340d8004acbd4800a9be5419e75d2132ad301c36

本の紹介-宇宙は数式でできている2022年04月15日

 
須藤靖/著『宇宙は数式でできている なぜ世界は物理法則に支配されているのか』朝日新聞出版 (2022/1)
 
 なかなか挑発的なタイトルだが、本の内容は、ざっくりした物理学、特に宇宙物理学の話で、哲学的な話ではない。数式は少なく、数式を知らなくても、誰でも容易に理解できる内容になっている。
 著者は宇宙物理学者。物理学は単純で理解しやすい方程式で表されるが、この方程式は宇宙全体にかなりの精度で適用できることを、いろいろな事例で紹介している。方程式の数学的研究成果で、物理上の新たな発見があったことなども示されるため、本書を読むと、宇宙には法則があって、宇宙は法則により支配されていることを知ることになる。もっとも、多くの人は、そんなことを言われなくても、宇宙が法則に支配されていることは、薄々は感じているだろう。このような考えは、加持祈祷やいかがわしい新興宗教に献金するといいことがあると思っている人には、受け入れられない考えかもしれない。
 
P29,P30に面白い記述がある。
『 数学に至っては、この自然界が実際に採用しているルールブックに限定せず、より一般に、異なる法則から出発した世界がどのような論理体系を持つに至るのかを解明しようとします。これは「我々が住む具体的な物質世界」を対象とすることが普通である物理学に比べると、はるかにぶっ飛んだ視点だと思います。
 しかし驚くべきことに、そのような純粋な思考から生まれた数学が、やがて「この世界」の記述においても本質的となった例が、歴史的に数多く知られています。この物理学と数学との不思議な関係を垣間見ていただくこともまた、本書の目的です。』

大学入試の数学 7+1の難易度2022年03月07日

旧帝大7大学と東工大の入試問題・数学について。
今年は、九大、北大が難しかった。東大・京大で出題されてもおかしくないような問題がありました。東北も難しいのがありました。
そんなわけで、東大・京大・東工大・東北・北大・九大はどれも易しくなかった。受験勉強に取り組んでいないと、合格点に届かなかったと思います。
名大・阪大は難しい問題が出題されることもあるけれど、今年はそんなことはなく取りつきやすかったと思います。

東工大の数学入試問題2022年03月06日

 東工大の問題は、難しすぎず、易しすぎず、適切なレベルだ。論考・論証が必要な問題や、計算力が必要な問題などが出題されるが、ヒラメキが必要な問題は少ない。この点では、東大と傾向的には似ており、京・名・阪大とは異なる。このため、駿台模試で、いつもそれなりの成績をとっていれば、本番で失敗することは少ないだろう。
 今年の問1、問2は論考・論証が必要とされる問題で、論理一貫した解答を作成するのに苦労した受験生も多かったことと思う。
 
問1
a, b を実数とし,f(z) =z^2 +az+b とする。
a, b が |a|≦1 |b|≦1 を満たしながら動くとき,
f(z)=0 を満たす複素数 z がとりうる値の範囲を
複素数平面上に図示せよ。
 
考え方:
解が実数の場合と虚数の場合に分けて考える。
こういう、訳の分からない問題は、オーソドックスに解くしか方法はないだろう。ただし、この問題では何がオーソドックスなのか、人によって異なるので、解答方針もいろいろあるだろう。ここでは、解の公式を使って考える。
 
解答
(テキストエディーターで書きにくいので√をRと書きます。R(5)は√5の意味です。)
解の判別式をDと書く。D=a^2-4bである
  
①D≧0のとき、この時は2つの実数解を持つ。
2次方程式の解はa=-1,b=-1の時に最大値、{1+R(5)}/2 a=1,b=-1のときに、最小値 -{1+R(5)}/2 をとる。
一方、b=0のとき、x=-aは解であるから、|a|≦1の範囲をaが動くとき、解をαと書くと、-1≦α≦1 となる。
b=-1のとき、x=(-a±R(a*a+4))/2は解であるから、|a|≦1の範囲をaが動くとき、解をαと書くと、-{1+R(5)}/2≦α≦-1 1≦α≦{1+R(5)}/2 となる。
すなわち、実数解αが取る範囲は、-{1+R(5)}/2≦α≦{1+R(5)}/2 である。
 
②D<0のとき、すなわち、a^2<4b の時は2つの虚数解を持つ。このとき、bは正である。解の実部をx,解の虚部をyと書くと次式が成り立つ。
x=-a/2 y^2=b-(a/2)^2
よって、-2x=a、 x^2+y^2=b
すなわち、|2x|≦1   x^2+y^2≦1 (y≠0) が求める範囲。
 
結局、次の2つが求める領域である。
  -{1+R(5)}/2≦x≦{1+R(5)}/2,y=0
  |x|≦1/2、x^2+y^2≦1
図示は省略します
  
 
問2
正の整数a,b,cの最大公約数が1であるとき、以下の問の答えよ
(1)a+b+c、ab+bc+ca、abcの最大公約数は1であることを示せ。
(2)a+b+c、a^2+b^2+c^2、a^3+b^3+c^3の最大公約数となる正の整数を全て求めよ。
 
考え方:
(1)はやさしい。
(2)を解くにあたって、(1)がヒントになっていることは、推測できるだろう。
a^2+b^2+c^2=(a+b+c)^2-2(ab+bc+ca)
a^3+b^3+c^3=(a+b+c)^3-3(a+b+c)(ab+bc+ca) +3abc
と書くと、2と3が曲者であることが分かる。(1)と同じ議論をして、5以上の素数は約数でないことを最初に示す。ここまでくると、4や9も約数でないことが分かる。すると、最大公約数は1,2,3,6のどれかということになる。最大公約数が、1 2 3,6となるa,b,cの組を見つけるのはたやすい。
解答 
  
(1)
rは素数で、a+b+c、ab+bc+ca、abcの約数であるとする。
rは素数でabcがrの約数なのだから、a,b,cのどれかはrの倍数である。
同じことだからaはrの倍数であるとする。
ab+bc+ca=a(b+c)+bcがrの倍数で、aもrの倍数なのだから、bcはrの倍数である。
よって、b,cのどれかはrの倍数であるので、同じことだからbはrの倍数であるとする。
a+b+cがrの倍数であり、a,bがrの倍数なのだから、cはrの倍数である。
よって、rはa,b,cすべての約数である。このため、r=1
すなわち、a+b+c、ab+bc+ca、abcの最大公約数は1である。
 
(2)
以下の2つの恒等式を使う。(①式、②式とする)
a^2+b^2+c^2=(a+b+c)^2-2(ab+bc+ca) …① 式
a^3+b^3+c^3=(a+b+c)^3-3(a+b+c)(ab+bc+ca) +3abc …②式
 
正の整数 r が、a+b+c、a^2+b^2+c^2、a^3+b^3+c^3 の公約数であるとする。
  
rが5以上の素数であるとする。②式から、3abcはrの倍数なので、abcはrの倍数である。
同様に、①式から、ab+bc+caはrの倍数である。
これは、(1)の結論に矛盾するので、5以上の素数は a+b+c、 a^2+b^2+c^2、a^3+b^3+c^3 の公約数ではない。
  
次に、r=9とする。
②式より、abcは3の倍数である。
また、①式より、ab+bc+caは3の倍数である。
これは、(1)の結論に矛盾するので、9は a+b+c、a^2+b^2+c^2、a^3+b^3+c^3 の公約数ではない。
  
同様に、4は a+b+c、a^2+b^2+c^2、a^3+b^3+c^3 の公約数ではない。
  
以上より、a+b+c、a^2+b^2+c^2、a^3+b^3+c^3 の公約数である可能性がある数は1,2,3,6である。
(a,b,c)=(1,1,3),(1,1,2),(1,1,1),(1,1,4)とすると、それぞれ、最大公約数は、1,2,3,6となる。
  
以上より、求める値は1,2,3,6

名古屋大学 理系 数学入試問題2022年03月06日


名古屋大学は難しい問題が出題されることがある。今年は、例年に比べて、易しかった。難しい問題もなかった。しかし、問4は積分の抽象議論なので、慣れないとどのように答えてよいのか、戸惑った受験生も多かっただろう。それから、高校の範囲では、連続の概念を正確に教えていない。このため、問4では、この点をどのように回答にまとめればよいのか戸惑う。 
 
そういうことで、問4。
 
問4 解答の概略
 
x≧0のとき、f(x)≧1を使う。1/xの積分がlogで log(x)→∞(x→∞)により、(1)と(2)の前半は容易。

(2)の後半は、どのように解答すればよいのか、高校の学習範囲がわからないので、私には良く分かりません。
Fn(y)  (2+1/n ≦ y)は連続・単調増加関数で Fn(2+1/n)=0  Fn(∞)=∞ であり、左辺第1項の積分は正の値なので、求めるαnが唯一存在することが分かる。
 
(3)f(x)は単調増加関数だから、左辺第1項<f(2)×{log(2)+log(n)}
また、f(x)は単調増加関数だから、Fn(y)>f(2)×{log(y-2)+log(n)} ただし、y>2+1/n
よって、log(αn-2)<log(2) となる。
すなわち、αn<4 である

九州大学 理系・数学入試問題2022年03月05日

旧帝大7+1の中で、九大は易しい方のはず。それなのに、今年の数学入試問題は、易しくない。北大・九大、どうした。
 
問題2
nを3以上の整数とする。β、αをことなる実数とする。
(1)次を満たす実数A,B,Cと整式Qが存在することを示せ。
x^n = (x-α)(x-β)^2Q+A(x-α)(x-β) + B(x-α) + C
(2)A,B,Cをα、β、nを使って表せ。
(3)nとαを固定した時、β→αとしたときの、Aの極値を求めよ。
 
コメント:
 これが東大の問題だったならば、普通の難易度だったかもしれない。でも、これ九大の問題ですよ。多くの受験生には、計算量も多くて、かなり難しかったのではないだろうか。
 
方針:
(1)は当たり前すぎて、どのように解答したらよいのか。『自明です』では答えにならないので、ここでは『解答の書き方に困った時は数学的帰納法』で答えを書いてみる。
(2)のうち、B,Cはxにα、βを代入すればよいが、Aはそうはゆかないので、ここでは漸化式を使って、もとめる。
 A(n)の数え間違いをしないように、n=2,3の時に正しいかどうかを検算するとよい。
 階差数列の求め方を知らないとこの手法は無理。
(3)は(2)の結果から求める方法と、漸化式から求める方法がある。(2)の結果から求める方法ではロピタルの定理を使うと楽。ここでは漸化式から求める方法にしました。
 
解答:
(1)数学的帰納法を使って、n≧1のとき、Q,A,B,Cが存在することを示す。ただし、Qは整式で、n≧3のときはn-3次整式、n≦2の時はQ=0。
n=1のとき、Q=0,A=0,B=1,C=αとすればよい。
x^n = Q(n)(x-α)(x-β)^2+A(n)(x-α)(x-β) + B(n)(x-α) + C(n) とする。このとき、
x^(n+1) = xQ(n)(x-α)(x-β)^2+xA(n)(x-α)(x-β) + xB(n)(x-α) + xC(n)
={xQ(n)+A(n)}(x-α)(x-β)^2 + {βA(n)+B(n)}(x-α)(x-β)+{βB(n)+C(n)}+αC(n)
よって、題意は証明された。
 
(2)(1)から、次のことが分かる。
A(n+1)=βA(n)+B(n)
B(n+1)=βB(n)+C(n)
C(n+1)=αC(n)
A(1)=0,B(1)=1,C(1)=α
 
以上より、C(n)=α^n
B(n)=Σβ^(k-1)C(n-k) (1≦k≦n-1で和をとる)
=Σβ^(k-1)α^(n-k) = (β^n-α^n)/(β-α)
注)B,Cを求めるのならば、x=α、βを代入した方が楽に求められる。 
A(n)=Σβ^(k-1)B(n-k) (1≦k≦n-1で和をとる) 
=nβ^(n-1)/(β-α) - (β^n-α^n)/(β-α)^2 
={n(β-α)β^(n-1) - β^n + α^n} / (β-α)^2
 
(3) A(n)={n(β-α)β^(n-1) - β^n + α^n} / (β-α)^2 において、β→αとしたときの極限を直接求めても良いのだが、A(n+1)=βA(n)+B(n)から求めることもできる。ここでは、漸化式から求めることとする。
n≧2とする。また、β→αのとき A(n)→a(n) とする。
a(2)=1である。
B(n)=Σβ^(k-1)α^(n-k) であるから、β→αのとき、B(n)→nα^(n-1)
よって、a(n+1)=αa(n)+nα^(n-1) が成り立つ。
すなわち、a(n)=(1/2)n(n-1)α^(n-2)
 
 
 
 
問題3
自然数n,mが次の①式を満たすときに、(1)(2)(3)を答えなさい
  ① n^4=1+210m^2  (累乗を^と書きます)
(1)(n^2-1)/2,(n^2+1)/2は互いに素な整数であることを示せ
(2)n^2-1 は168の倍数であることを示せ
(3) ①を満たすn.mの組を、一つ求めよ

コメント:
これが京大の問題だったならば、まあこんなものかと思うのですが、九大にしてはかなり難しい。
 
方針
(1)はやさしい。(2)も落ち着いて考えれば、それほど難しくないが、整数問題に慣れていないと無理だろう。(3)は四則演算が苦手だと、歯が立たない。
 
解答
 
(1)
nは明らかに奇数だから、n^2-1,n^2+1は偶数。よって、(n^2-1)/2,(n^2+1)/2は整数。
(n^2+1)/2=(n^2-1)/2+1だから、互いに素。
 
(2)
最初に、n^2-1が8の倍数であることを示す。
nは奇数だから n=2k+1 と書く。
このとき、n^2-1=4k(k+1)
k,k+1のどちらかは偶数なので、4k(k+1) は8の倍数。
よって、n^2-1は8の倍数である。
 
次に、n^2-1が3の倍数であることを示す。
①から、(n^2-1)(n^2+1)=210m^2 であるから、
n^2-1、n^2+1 のいずれかは3の倍数である。しかし、n^2+1が3の倍数になることはない。
よって、n^2-1 は3の倍数である。
 
同様にして、n^2-1 は7の倍数である。
 
結局、n^2-1 は 8*3*7=168 の倍数である。
 
(3)
n=41,m=116 は①を満たす。

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