サンフランシスコ条約11条-日本は極東国際軍事裁判所の正当性を受諾している2005年10月23日

日本はサンフランシスコ平和条約第十一条で、極東国際軍事裁判所の判決を受諾しました。
 極東国際軍事裁判所の判決文は、10章、英文で1212ページにのぼる膨大なものでした。判決の最初、第一章は「本裁判所の設立および審理」です。ここで、裁判所およびその審理の合法性・正当性が明確に示されています。


 日本国内の一部勢力からは、以下のようなおかしな説明がなされることがあります。
講和条約で日本が受け入れたのは、判決が科した刑罰の執行の継続であって、裁判や判決の趣旨を受け入れたわけではない。(稲垣武 ジャーナリスト 正論-扶桑社 8月号 平成17年度)

 扶桑社の雑誌に良く見られるこのような主張が成り立たないことは、極東国際軍事裁判所の判決文を読めば、疑問の余地のないことです。(右翼評論家は判決を読まずにデタラメを書いているのでしょうか。不思議です。)

 極東国際軍事裁判所の判決文では、裁判所の設立の根拠を次のように説明しています。

 極東国際軍事裁判所はカイロ宣言、ポツダム宣言、降伏文書、それから1945年12月26日のモスクワ会議に基づいて、またこれらを実施するために設立された。モスクワ会議の結果、米・英・ソ・中により、次のことが協定された。
 「最高司令官は日本降伏条項の履行、同国の占領及び管理に関する一切の命令並びに之が補充的命令を発すべし」
 この機能に基づいて、最高司令官は特別宣言書により極東国際軍事裁判所を設置した。この宣言書によって、裁判所の構成、管轄および任務は、同日最高司令官の承認を得た裁判所条例中に規定されたところによると宣言された。


 要するに「カイロ宣言、ポツダム宣言、降伏文書に基づいて、マッカーサーが命令して設立された」、これが、極東国際軍事裁判所の正当性の根拠になっています。これで、正当性の根拠になるのかどうか、評論家や法律学者にはいろいろと意見があることでしょう。しかし、日本国は条約によって判決を受け入れたのだから、後になってから「この判決に書かれていることは受け入れない」と言える筋合いではないのです。

 ところで、通常の裁判で、裁判所の設立などが判決に入ることはないでしょう。極東国際軍事裁判所の判決文では、裁判所の設立の根拠が記されているのはなぜでしょう。これは、直接には、裁判の中で日本側弁護団から、裁判所の正当性を否定する意見があったので、この意見に対して判定する必要があったためです。日本国が裁判所の正当性を受け入れることになった直接の原因は、日本側弁護団の法廷戦術にあった可能性否定できないかもしれません。

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