東京国立博物館2024年01月03日

  
 東京国立博物館は、1月2日から開館しています。
 正月の企画として、本館前で、太い腿むき出し女の和太鼓演奏があった。外国人観光客も多い中、日本の正月文化を見せようとの配慮かもしれないが、女が太い腿を、むき出しにするのは、日本の伝統ではない。

東京国立博物館2023年11月28日

 
今日は、久しぶりに東京国立博物館の常設展を見学。写真は康円作・文殊菩薩騎獅像の侍者立像のうち、善財童子立像。
東博の展示品は多義にわたるけれど、仏像は多くはない。
善財童子は華厳経入法界品の中心人物なので、日本仏教ではなじみが深い。

本の紹介-検証 ナチスは「良いこと」もしたのか?2023年11月27日

 
小野寺拓也、田野大輔/著『検証 ナチスは「良いこと」もしたのか?』(岩波ブックレット)(2023/7)
  
 ヒットラーが何をしたかといえば、夜寝て、起きて、クソをして、などなどがあっただろう。こんなことは、良くも悪くもない。蜘蛛の糸のカンダタも、一つだけよいことをしたのだから、ヒットラーも良いことをしているに違いない。しかし、こんなつまらないことで、本が出版されることはないだろう。
 本書が出版された背景には、ネット上で、ナチス政策の一部が、一部の人に役に立ったことを以て、ナチスも悪くなかったとする言説があるためである。高校世界史を普通に学べば、このような考えに陥るはずはないが、昨今は、勉強しなかった人も、ネットでいい加減なことを言い、それに同調する人も多い。
 
 本書では、ネットで言及されることが多い、以下の8項目について、ナチスは悪であるか、または、前政権の政策を踏襲したに過ぎないことを説明している。
 「ナチズムとは?」「ヒトラーはいかにして権力を握ったのか?」「ドイツ人は熱狂的にナチ体制を支持していたのか?」「経済回復はナチスのおかげ?」「ナチスは労働者の味方だったのか?」「手厚い家族支援?」「先進的な環境保護政策?」「健康帝国ナチス?」

北の大地が育んだ古代-オホーツク文化と擦文文化-2023年11月23日

 
千葉県佐倉市の国立歴史民俗博物館では『北の大地が育んだ古代-オホーツク文化と擦文文化-(2023/11/14~2024/2/12』開催中。
展示品は北海道常呂の出土品を中心に40点ほどの土器・骨器など。
オホーツク文化とは5世紀ごろ、サハリンから南下してきた外来文化で、9世紀ごろまでオホーツク沿岸の文化。擦文文化とは北海道の続縄文期以降の文化で、アイヌ文化に変容した。
 
 オホーツク文化は擦文文化の影響を受けてトビニタイ文化に変容した。写真は羅臼町トビニタイ遺跡出土のトビニタイ土器。

陰陽師2023年11月20日


 千葉県佐倉市の国立歴史民俗博物館で『陰陽師とは何者か』展開催中。昨日、観覧しました。観客に、若い女性が多かったような。
 展示は古文書が中心で、古文書解読能力がないものには、いまひとつ面白くないように感じた。ただし、パネルの説明書きがしっかりしていて、誰でも理解できるようになっている。
 パネルは陰陽師の解説のためか、陰陽師を評価する内容になりすぎと感じた。幕府天文方にも陰陽師・土御門家の影響があったように書かれていた。確かに、渋川春海の暦に土御門の暦が関係していたのは確かだろうが、幕府天文方に西川家が採用されて以降、特に、高橋至時以降には、土御門家はお呼びではなくなっていたはず。

本-ゾルゲ事件2023年05月24日

 
加藤哲郎/著『ゾルゲ事件』平凡社新書(2014/3)
 
 ゾルゲ事件に関して、いろいろな研究がある。本書はそれらを概観し、正否などを評価している。特に、松本清張「革命を売る男・伊藤律(日本の黒い霧に収録)」については一章をあてて、誤りであることを示している。
 ゾルゲ研究に興味があるならば、本書は面白いのだろうけれど、私にはまあまり興味が持てなかった。

本の紹介-ゼロからの『資本論』2023年05月16日

 
斎藤幸平/著『ゼロからの『資本論』』 NHK出版新書 (2023/1)
 
 平易で読みやすく、資本論の概要が理解できる。しかし、本書は資本論の解説書ではなくて、資本論をきっかけにして資本主義を理解し、今後の展望を明らかにするもののように思える。
 白井聡『マルクス』(講談社現代新書)では、「包摂」の概念により、現代人がその精神まで資本主義に飲み込まれていると説明している。しかし、同署では、なぜそのような事態に至ったのか良く分からなかった。本書、第2章、第3章を読むと、何となく理由がわかるような気がする。
 
目次を記載する。
 第1章 「商品」に振り回される私たち
 第2章 なぜ過労死はなくならないのか
 第3章 イノベーションが「クソどうでもいい仕事」を生む
 第4章 緑の資本主義というおとぎ話
 第5章 グッバイ・レーニン!
 第6章 コミュニズムが不可能だなんて誰が言った?

アイヌの鍬形・霊感商法2023年05月11日

 
 東京国立博物館にアイヌの鍬形が展示されている。東京国立博物館では複数の鍬形を所蔵しているが、展示されているのはそのうちの一つ。
 アイヌの鍬形とは、有力なアイヌのみが所持し、霊力が強い宝物と信じられていたようだ。家に置くものではなくて、洞窟や地中に隠していたそうで、このため伝世品は少ない。本品は北海道栗山町角田字桜山出土の一つ。銀飾りがついているものもあるようだが、本品は鉄板で作った粗雑品の雰囲気が強い。
 アイヌの鍬形は、日本で作られたことは確実のようだが、いつごろ作られたのかは、はっきりしない。
 どう見ても、粗雑で、価値があるものには見えないが、霊力があると信じられたと言われているので、不思議だ。

 統一協会は壺を売っていた。どう見ても、安物の花瓶にしか見えないが、霊力があるようにだまして、高額で売った。アイヌの鍬形を見ていたら、統一協会による霊感商法の壺を連想した。

本の紹介-関東大震災 描かれた朝鮮人虐殺を読み解く2022年12月25日


新井勝紘/著『関東大震災 描かれた朝鮮人虐殺を読み解く』新日本出版社 (2022/8)
 
 関東大震災の直後に、警察・日本軍・自警団は朝鮮人を虐殺した。
 本書は、当時描かれた関東大震災関連の絵画・絵巻のなかで、朝鮮人虐殺の様子が描かれたもの5点ほど取り上げ、描かれた状況や作者を分析している。これら絵画は写生であったり、見たことを記憶で書いたり、伝聞を書いたものがあったはず。このため、描かれたすべてが真実というわけではないだろうが、当時の様子を視覚的に理解する上で重要な記録だ。取り上げた絵画には、朝鮮人を虐殺している様子が生々しく描かれており、また、その場には、多くの日本人が喜んで見物しているさまが描かれている。当時、多くの日本人が、積極的にあるいは消極的に朝鮮人虐殺に加担した事実が理解できる。
 本書の著者は、国立歴史民俗博物館の助教授として、近現代展示に携わった。
 歴博の関東大震災の展示はどうなっているのだろう。歴博を見学してみたくなった。 

本の紹介-通州事件2022年12月23日


笠原十九司/著『通州事件』高文研 (2022/8)
 
 通州事件とは、日本の傀儡政権が起こした反乱事件。この事件については日本軍の責任が大きいが、日本ではこの事件を中国への敵愾心をあおりたてるように利用した。藤岡信勝・三浦小太郎・櫻井よしこ・百田尚樹ら右翼言論人やネット上で散見される通州事件の説明の多くは、事件の背景を知ることなしに、日本人が被害にあったことのみを取り上げて、中国への敵愾心をあおりたてるもの。無知による排外運動は好ましいものではない。
 
 本書は、日中近代史研究の第一人者による通州事件の説明。全体2/3の第一部は通州事件の背景と通州事件の歴史説明。残り1/3の第二部は『通州事件被害者姉妹の生き方』。
 歴史学者の執筆であり、事件の歴史的背景に対する記述が詳しい。記述は簡潔であるが、内容は高度で詳しいので、ある程度の予備知識がないと難しいと思う。
 
 以下、目次を記載する。

 
目次
  
はじめに-通州事件とは何だったのか
 通州事件とは
 通州事件を利用した政府・軍部の「憎しみ」の喚起
 通州事件の「憎しみの連鎖」を喚起しようとする人たち
 通州事件の「憎しみの連鎖を絶つ」被害者の姉妹
 通州事件はなぜ発生したのか-歴史的要因の解明
 
第一部 通州事件はなぜ発生したのか-歴史的要因と全貌の解明
  
序章 通州事件の歴史背景
 アヘン戦争と「禁煙運動」
 支那駐屯軍と関東軍の創設
 辛亥革命と中国の分裂
 中国の統一をめざした国民革命 
 国民革命に干渉した日本
 蒋介石による国民政府の軍事統一
 蒋介石の「安内攘外」政策による「剿共戦」
 
第1章 冀東保安隊はどのような軍隊だったのか
 張学良と干学忠
 関東軍の熱河作戦と東北軍
 塘沽停戦協定と河北特警隊
 梅津・何応欽協定と河北保安隊
 歴史的事件には「前史」がある
 
第2章 冀東防共自治政府と冀察政務委員会
 日本軍の華北分離工作の推進
 (1)華北の「第二の満州国化」構想
 (2)冀東防共自治政府の成立
 (3)冀察政務委員会の成立
 (4)宋哲元と張慶余・張硯田の密約
 一二・九学生運動の展開
 中華民族解放先鋒隊が広めた義勇軍行進曲
 
第3章 中国国民の怒り、怨嵯の的になった冀東政権
 冀東政権を利用した日本人の密輸貿易
 (1)冀東東密輸貿易
 (2)冀東密輸の経路 
 (3)外交問題となった冀東密輸
 (4)華北分離工作のための支那駐屯軍の増強
 (5)都市民衆の抗日民族運動
 (6)冀東密輸と「日本人と朝鮮人の浪人」
 日本人と朝鮮人のアヘン・麻薬の蟹造・密輸・密売
 (1)国民政府のアヘン・麻薬厳禁政策
 (2)国際連盟、麻薬密輸・密売の日本人、朝鮮人の厳罰を要請
 (3)中国人のアヘン・麻薬搬送、販売者の公開処刑
 (4)冀東政権下に日本人と朝鮮人の急増
 (5)冀東政権を利用した日本人、朝鮮人のアヘン・麻薬の密売
 冀東政権とアヘン・麻薬の製造と密売の構造
 (1)熱河省における生アヘンの生産
 (2)大連におけるヘロイン密造
 (3)アヘン・麻薬の密輸・密売の拠点となった天津日本租界
 (4)北平と天津へのアヘン・麻薬搬送の経路となった通州
 (5)「滅種亡国」のアヘン・麻薬の害毒
 
第4章 華北における抗日戦争気運の盛り上がり
 関東軍の内蒙古分離工作と緩遠事件
 綏遠軍支援運動の高揚
 蒋介石の「抗日戦準備」演説
 西安事件と東北軍
 西安事件解決の歓喜
 西安事件後の東北軍
 
第5章 通州事件の発生と全貌
 盧満橋事件と宋哲元の第二九軍
 (1)盧溝橋事件の「前史」
 (2)起こるべくして起こった盧溝橋事件
 (3)拡大派の「下剋上」による華北派兵決定
 (4)第二九軍の北平・天津地域における抗戦
 (5)「北支事変」の開始
 通州保安隊の反乱準備
 通州保安隊の反乱開始
 (1)事件前日
 (2)支那駐屯軍と保安隊の兵力
 通州事件の全貌
 (1)第一方面-翼東政府と通州特務機関、政府関係機関の襲撃
 (2)第二方面-通州日本軍守備隊の兵営をめぐる攻防
 (3)第三方面-日本人、朝鮮人居住区における虐殺、略奪
 通州保安隊反乱の終焉
 
第二部 憎しみの連鎖を絶つ - 通州事件被害者姉妹の生き方
 櫛渕久子さん・鈴木節子さん姉妹との出会い
  
(章のタイトルのみ記載し、項のタイトルは省略)
第1章 満州への移住と病院開設
第2章 通州事件に遭遇した鈴木家
第3章 戦争孤児"になった姉妹
第4章 憎しみの連鎖を絶つ
  
おわりに




北方領土問題  やさしい北方領土問題の話   竹島(独島)問題    尖閣(釣魚)問題 

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