本の紹介ー死なないと帰れない島2026年03月01日

 
酒井聡平/著『死なないと帰れない島』講談社(2025/7)
 
大戦間の一時期、日本はコカを栽培していた。
コカ栽培は、台湾や沖縄でも行われていたが、最大の生産地・集積地は硫黄島だった。
本書の中で、数ページにわたって、硫黄島コカ栽培について記されている。本書では、住民は医薬品の原料と思っていたと書かれているが、間抜けな住民はそのような言説を信じたかもしれないが、麻薬のコカインの原料であることを知っていたものもいただろう。本書では、栽培されたコカはコカインとなって、ナチスドイツに密輸されたと書かれているが、インドへ密輸されたとの話も聞いたことがある。麻薬の密輸先など、カネになれば、どこにでもするものだから、ナチスドイツに限ったことではないだろう。

本の紹介ー陰謀論と排外主義2026年03月02日

 
藤倉善郎・他/著『陰謀論と排外主義 分断社会を読み解く7つの視点』 (扶桑社新書) 2025/11

著者は以下の7人で、各自が一章を執筆している。このほか、藤倉が前書きを、菅野が後書きを担当。
 黒猫ドラネコ、山崎リュウキチ、古谷経衡、藤倉善郎、選挙ウォッチャーちだい、清義明、菅野完
 
 川口市では、2月に市長選があった。この中で、排外主義を主張する2名が合計で20%程度の得票を得ていた。まったく市長にふさわしくない者だったので、単純に排外主義の得票とみて間違いないだろう。選挙前、川口駅前では、坊主頭でサングラスの暴力団員風男が、日の丸の小旗を配っていた。20年前も在特会を名乗る候補が日の丸を振っていたし、50年以上前から暴力団風右翼団体構成員が日の丸を掲げて街宣していたので、排外主義者の運動自体は昔からのことだが、かつては選挙に出ても、すべて泡沫候補で。当選などはあり得なかった。
 ところが、川口の隣で、戸田市議に河合ゆうすけがトップ当選するなど、各地で、ヘイト系候補の地方議員が誕生しているようだ。
 
 本書は、7名のライター等により、ヘイト系候補やそれら言説が一定の支持を得られている現状を報告するもの。
 私は川口市に住んでいるので、ネットで騒がれているクルド人に対するヘイトスピーチが、全く根拠のないデマであることは良く分かる。本書を読むと、ヘイトスピーチが国民の間で、一定の賛同を得ている状況がわかるが、なぜ、そのようになってしまったのか、本書を読んでも、良く分からなかった。
 今日、交通も通信も十分に発達しているのだから、川口のクルド人問題が、排外主義者のデマであることなど、容易にわかるはずなのに。

本の紹介ー日本政治と宗教団体2026年03月18日

 
中北浩爾、蔵前勝久/著『日本政治と宗教団体 その実像と歴史的変遷』 (2025/11) 朝日新書
 
 本書は、創価学会、統一協会、神社と日本会議、立正佼成会の4つと、政治との関わり合いの歴史を説明するもの。文章は読みやすい。
 
 統一協会は極めて熱心に選挙活動をし、創価学会もかなり熱心であるが、後の2つは、信者が特定候補の選挙運動をすることはないようだ。統一協会が自民党と深くかかわることができたのは、信者のパワーなのだろう。
 統一教会擁護の自民党有力政治家としては、古くは岸信介、最近は安倍晋三が有名だが、一時期は、中曽根康弘も深い関係があった。本書では数ページにわたって中曽根康弘と統一協会の関係に触れる。この中で、87/7/10参議院本会議で霊感商法の統一協会との関係を断つように質問された中曽根は、これを激しく拒絶したことが記されている。
 立正佼成会は政治とかかわりのなかで、むしろ政治に翻弄されているとのことだ。統一協会・創価学会と立正佼成会・神社を比べると、教団と信者の関係が大きく異なるので、教団と政治との関係も、各教団によって大きく異なるのだろう。

本の紹介ー大乗仏典 8 十地経2026年03月21日

 
荒牧典俊/訳『大乗仏典 8 十地経 新訂版』中央公論社(1980.8)
 
1974年に出版された本の改定新版。2003年に中公文庫から出版されている。
 
十地経とは華厳経の中の十地品のこと。華厳経は奈良時代に伝わり、東大寺を中心に研究され、日本仏教に多大な影響を与えた。
本書は十地経の口語訳。漢文は無い。文章は平易に書かれているけれど、何となくすっきりしない。
 
十地経は菩薩の段階を十段階に分けて、それぞれの内容を説明するもので、特に第6地では、唯識につながる大乗仏教の世界観が示されている。本書P400の解説には、十地のそれぞれの内容を以下のように説明している。
―――――――――――――――――――――
十地の「菩薩道」はどのような構造をもつようになっているか。『十地経』自身が、その「菩薩道」の中心ともいうべき第七地において、つぎのようにうたっている。
第一地において、「あらゆる誓願を成就する」
第二地において、十種の善なる実践道をふみ行なうことによって「心の垢れがなくなる」
第三地において、すべてを喜捨して一句の法を聴聞し、禅定に深まり、神通をあらわすことによって,「真理の現前を体得する」
第四地において、三十七種の菩提にみちびく「修行道を体得する」
第五地において、さらに向上して、それらの修行道を実践するとともに、「世闘のもろもろの活動にしたがって生きていく」
第六地において、さまざまな条件に条件づけられて生成するという「もっとも奥ぶかい真理の種々なる道を体得する」
第七地において、「あらゆる仏の不思議なる存在が、いまここに現前する」
もし同様につづけるとするならば、
第八地において、あらゆる存在は生じないというさとりをさとって、無量無辺なごとごとについての知がある。
第九地において、無璽無辺なことことについての知がさらにきわまって、四種の無擬自在な説法力をはたらかせ、仏法のエッセンスを体得して、無磯自在に説法する。
第十地において、「すべてを知る知者のすぐれた知をさとるであろうとの灌頂を授けられる」三昧が現前し、無量無辺なごとごとについての知がいよいよ円満になって、「かぎりない法の雲」のごとくである。
―――――――――――――――――――――

* * * * * *

<< 2026/03 >>
01 02 03 04 05 06 07
08 09 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31

RSS