本の紹介-ペンギンの憂鬱2023年11月15日

 
アンドレイ・クルコフ/著 、沼野恭子/訳『ペンギンの憂鬱』新潮社(2004/9)
 
 本書は、キエフ在住、ロシア系ウクライナ人作家の小説。
 原作は1996年にロシア語で出版された。その後、ヨーロッパ各国語に翻訳され、2004年に日本語訳が出版された。
 ロシア語版が出版されたとき、すでにソ連が崩壊してウクライナは独立国家となっていたが、この時は、ウクライナ政権には汚職はあったものの普通の民主国家だった。このため、本書がロシア語で出版することに特に問題はなかった。
 2014年、ウクライナではマイダンクーデターによって、ネオナチ政権が誕生すると、民族弾圧が国是となり、ロシア語の使用が事実上禁止される。これに反発したルガンスク州やドネツク州では、自治政府を宣言して、ウクライナは内戦状態となった。アメリカの援助を受けたウクライナ中央政府は、自治政府を攻撃し、2022年までに1万2000人から1万6000人を殺害した。
 2022年2月、ロシアはルガンスク州やドネツク州の独立を承認し、ウクライナとの戦争に介入した。
 
 本書は、2004年に訳出されたものであり、これは、マイダンクーデターの10年も前のことだ。しかし、訳者は後書きに、ウクライナでは、ロシア語排斥運動が起きているとしている。2004年には、ウクライナでは、すでに、ネオナチが政権の中枢を担っていたことが窺われる。

* * * * * *

<< 2023/11 >>
01 02 03 04
05 06 07 08 09 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30

RSS