本の紹介 -『梶村秀樹著作集第1巻 日本人と朝鮮人』 ― 2012年10月10日
『梶村秀樹著作集第1巻 日本人と朝鮮人』(1992.11)明石書店
梶村秀樹は、近代朝鮮史学者。この本の中に、1978年に書かれた、43ページの竹島問題論文が収められている。一般の日本人の多くは、竹島は日本の領土だと思っているが、歴史学者の中には竹島日本領論に疑問を持つ人もいる。梶村は近代朝鮮史が専門の学者として、竹島韓国領論者として知られていた。本書は、竹島韓国領を強く主張するものではないが、日本領論には批判的である。
かつて、外務省の役人だった川上健三氏の著した本では、鬱稜島から竹島は見えないなど、簡単に計算すれば分かるような間違いを、平気で書いていた等、ずさんな理論がまかり通っていた。梶村の批判は、特に、川上の説明に向けられている。この論文が書かれた時代には、川上の論が日本の竹島領有論の中心だったので、梶村の批判がこの点に向けられるのは当然であるが、今では、川上の論をそのまま事実と考える人はいないだろうから、その意味では、梶村の批判も、一面では、過去のものかも知れない。