本の紹介ー新興宗教ブームと女性2018年10月08日


いのうえせつこ/著『新興宗教ブームと女性』新評論 (1993/7)

 本書のタイトルは「新興宗教」。新興宗教の用語には侮蔑的な意味があるので、最近は「新宗教」ということが多い。

 本書は女性、特に主婦が新興宗教に取り込まれてゆく様態を取材に基づいて説明するもの。日本の新興宗教信者の7、8割は女性だそうだ。先日、半蔵門駅を降りたら、真如苑に大挙して訪れる人たちに出会ったが、9割が女性だった。中年・中高年が多かった。

 本書は、第1章で本覚寺詐欺事件にあった女性たちの話。本覚寺に入信した場合は、ほとんど詐欺被害にあっているので、本章は詐欺被害の話にもなっている。第2章から第4章は統一教会に入信した人たちの話。統一教会は霊感商法被害が有名だが、本書には詐欺被害の話題はあまりない。第5章は幸福の科学に入信した人の話。第6、7章はエホバ、実践倫理、コスモメイトに入信した女性の話と、女性が入信する社会背景を分析している。コスモメイトの話では、教祖の深見によるセクハラ事件に触れられている。

 本覚寺詐欺事件では、どういう理由で詐欺に引っかかったのか不思議だったが、本書によると、霊視商法の取材の中で会った主婦たちの多くは「生長の家」や「真如苑」などの新興宗教と呼ばれる信者たちだったそうだ(P32)。
 本覚寺詐欺の手口は、相談に訪れた人に対して、先祖の霊が苦しんでいる等の脅しをかけて、供養料など名目で多額の金銭をとったものである。真如苑では、先祖の霊が苦しんでいる等の脅しをかけて護摩焚きを進めているので、このような新興宗教信者が本覚寺詐欺に引っかかったのは理由があることだったのだろう。

本覚寺詐欺事件について、良くまとまっているので、関連部分を引用する。

 週門誌などで書かれている「霊視商法」とは、宗教法人「本覚寺」(西川義俊管長)が、新聞折り込みチラシで、悩みを持つ人を集めては「霊視鑑定」と称するものを行い、除霊しないと不幸になると脅して、多額の供養料などを取っているというものである。
 九二年九月二十日号の「サンデー毎日」によると、国民生活センターに寄せられた被害は約四百五十件、要求された額は合計で約四億五千五百万円にものぼるとしている。
 本覚寺の本山は茨城県久慈郡大子(だいご)町。首都圏八カ所にある道場は、「春光寺 千葉市」「実証寺 柏市」「法輪寺 東京・池袋」「昇雲寺 東京・恵比寿」「迎春寺 国立市」「明星寺 大宮市」「光明寺 横浜市神奈川区」「幸福寺 厚木市」
 この本覚寺は、雑誌・月間「住職」(九〇年十月号)などによると、同寺の金銭上のトラブルから殺人事件まで起こしている。
 八九年九月二十四日、本覚寺東京寺務所内で、元管理本部長の近江伸夫氏が、胸や腰など五ヵ所を刺されて死亡するという事件である。事件発生後十一カ月ぶりに、犯人が逮捕されたが、犯人四人は本覚寺内部の職員たち。犯行の動機は、本覚寺からの独立をめぐる金銭上のトラブルだった。八九年当時の本覚寺の収入高は九億一千万円を超えている。
 また、同年の四月、本覚寺は京都の真言宗醍醐派の総本山・醍醐寺の保証書を偽造、銀行家ら六億円の融資を受けていたことが明らかにされ、寺側も保証書偽造の事実を認めている。
 新興宗教ビジネスという言葉もささやかれるほどに、宗教法人の税制優遇措置をねらって、遊園地や不動産会社までもが競って宗教法人を名乗り、またバブル時代金儲けイコール宗教法人とまで言われてきた。この急成長を遂げている宗教法人"本覚寺"とはー。
 管長は西川義俊氏。宗教の世界に入る前は、健康食品や避妊具などの販売会社「㈱協和」を経営していたが、そのやり口はスキンー箱を四、五万円で売りつけるという暴利をむさぼるものだった。その後、地元の曹洞宗系の寺院とタイアップして、「水子供養奉賛会」と称し、木製の小さな水子菩薩像などを売るようになった。このとき、西川管長は、新聞の折り込みチラシを利用している。その後、八五年六月に口本仏教指導会を設立し、翌八六年には、本覚寺の前身である「実修学院」を千葉県柏市に開設している。仏壇やら仏像の販売をしながら、何んとしても宗教法人をとりたいと、真言宗醍醐寺にとり入り、末寺としての単立の宗教法人本覚寺を仕立て上げた。健康食品から水子供養へ。そして宗教法人へと移っていった背景を考えると、いつも売りつけられる側(買う側)が主婦だということが共通している。
 健康食品と言えば、どんなに高くても、つい買ってしまう主婦の心理。また、中絶経験を持たない主婦をさがす方がむずかしい状況をうまくつかんでの水子供養を商品にした西川管長は、ある意味で日本の主婦の感覚を巧みに利用した人物と言えよう。新興宗教の信者の七、八割が主婦で占められているという世界各国の中でも特異な日本の状況を西川館長は知っていたのかどうか……。
 前述の月刊「住職」や「サンデi毎日」などによると、各道場に電話をかけてくる主婦らを霊能教師とよばれる女性たちが待ち受けて、霊の障りなどを持ら出し、脅したりすかしたりして入信させる。入信というのは、先祖供養や水子供養などをさせることで、夫婦両家の供養なら百三十万円、それがうまくいくと、次から次へとさまざまな供養をすすめて金を出させる。保険を解約させたり、サラ金でお金を借りることをすすめたりもする。信者の多くは、家族に内緒で相談に来る人が多いため、表立ってのクレームをつけられない。この点を利用しての行為は、まさに霊視を売りものにした商法と名付けられてもしかたがないだろう。
 霊能教師の女性たちは、本覚寺で得度を受け、一ヵ月の特別研修を終えた入たちと言われているが、実際は、相談には来たがお金が払えない人(離婚、母子家庭など)がその役割を押しつけられ、寺側から与えられたマニュアルどおりに「霊視」をして、「供養献金」を強要しているのが実態である。また、霊能教師には月一千万円から三千万円程度の"売り上げ"がノルマとして課せられているということである。
 本覚寺が九二年九月に出したB4判四頁にわたる見開きのチラシ「雪視案内」によると、四面に「救いのための寺の運営と儀式の行事」と「女性修行者募集」が載っている。また、一面にある「宗教の役割」を読むと、本覚.寺の監視商法とはこれ如何に?という文章もある。
 「(略)宗教はお金がすべての物質主義の社会とは、ある意味で一線を通した立場に立っています。その宗教や神仏までも、金銭感覚だけではかろうとする現代社会の風潮に対しては、はっきりと対立する立場にあります(略)}と。
 本覚寺は、前述したように茨城県の本山と、東京、千葉、神奈川、埼玉の四都県に八カ所の寺院を持つ他に、財務、人事などの本部機能として東京寺務所がある。職員数は本部約七十人、全部で約三百人と言われている。
 九二年三月期の総収入額は約七十五億六千五百万円にものぼっている。この多くは、主婦たちの悩みをえさにしての霊視による供養料である。

 この霊視商法の多額な金額は、果たしてどこへ流れているのか。十月四日、朝日、毎日、読売、その他、地方紙といわれている新聞紙上にまで広告が出た。広告主は高野山真言宗総本山金剛峯寺。高野山奥の院命源寺とは関係ないという内容の謹告である。
 本覚寺は、高野山金剛峰寺の地続きに土地を購入。そこに供養塔を建立している。始めて訪れた人は、金剛峯寺の一寺と思い込んでしまう場所である。十月十五日には第一回の伽藍の落成式も行われた。
 本覚寺側は多額な供養料を要求するときは、「高野山に位はいなどを供養する本堂をつくるから」と言ったり、「高野山にお地蔵さんを建ててあげるから」と言って一体三百万円から一千万円ほどを出させている。
 高野山金剛峯寺としては、地名である高野山の名前を使うなとは言えないが、同一視される誤解が生じていることから、前記のような謹告となったわけである。
 しかL、それにしても、霊視商法による多額な金集めのターゲットになっている主婦たちは、どのような生き方の中ですがって、だまされているのだろうか。(P14~P20) 
 また、P24には浦和の高校教師夫妻の長男刺殺事件に本覚寺詐欺事件が関係しているとの記述があるが、いつの事件なのか書かれていないので、そのうち、新聞を調べてみようと思う。

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