本の紹介-尖閣諸島の石油資源と日中関係2022年08月15日

  
亀田晃尚/著『尖閣諸島の石油資源と日中関係』三和書籍 (2021/7)
 
 本書は、主に、東シナ海の海底油田・ガス田開発にまつわる、関係各国の対立と協力に関する研究書。このため、参考文献の紹介も多い。一般読者を対象とした啓蒙書ではない。
 第一章は戦後、石油が資源として重要になったということで、特に興味ある記述はなかった。
 第二章はECAFE等による東シナ海石油埋蔵量の推定調査の話。1960年代の終わりごろに、東シナ海、尖閣周辺海域に膨大な石油埋蔵があるとの推定がなされた。
 第三章は中国、台湾の石油の関心。この中で、中国が尖閣を主張するようになったのは、埋蔵石油が原因であるとしている。確かに、それがなかったわけではないだろうが、中国が尖閣領有を主張してきたのは、沖縄返還のときであって、ECAFEにより東シナ海の石油埋蔵が推定されたときとはずれている。もっとも、石油埋蔵の推定は、ある時に急に言われるようになったのではないので、沖縄返還のころに、石油の埋蔵を主張したものもある。この時代、中国には海底油田開発の能力はなかったようだ。
 第四章は1970年代、日本の海洋油田探査。1967年の衆議院商工委員会で、政府は大陸棚のボーリングは水深20から30メートルのところで行い、150メートルの水深のところでは調査能力がないと解答した。
 第五章は日中ではなくて日韓の海底油田探査協力。当時、日本は日韓中間線をEEZの境界と主張していた。しかし、日韓協力では日本が主張する中間線の日本側で、日韓合同調査が行われた。
 第六章は「70年代の日中共同開発への指向」。あまり興味のある内容ではなかった。
 第七章は尖閣問題。海洋油田の話というわけではない。尖閣問題に関しては、多数の著書でいろいろな説が唱えられるが、本書は、主に日本政府の説に沿っている。
 第八章は「最近の海洋をめぐる日中関係」
 本書を読んでいてわからなかったのだが、東シナ海には、結局、どれほどの石油埋蔵があるのか、商業レベルに乗るのか。1970年以前は、地層の形から膨大な石油埋蔵の可能性が指摘された。その後、日本の国会では、大した量がないことが報告されるなど、日本の石油開発熱は冷えていった。中国は東シナ海でガス田掘削をするなど、多少は開発しているが、商用レベルに乗るほどの成果は出ていないようだ。もし、石油埋蔵が大したことないのならば、尖閣問題と石油問題をリンクさせる理由は、もはや、ないはずだ。

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