本の紹介―ウクライナ戦争後の世界秩序2025年10月27日

 
下斗米信夫/著『ウクライナ戦争後の世界秩序』(2025/6)集英社
 
 ソ連・ロシア地域の政治史が専門の下斗米伸夫・法政大学名誉教授による、ウクライナ戦争の解説書。
 タイトルは「ウクライナ戦争後」となっているが、本の2/3はウクライナ戦争やロシア・ウクライナ史の解説に充てられている。
 
 テレビ番組で、ロシアウクライナ戦争を解説している専門家の多くは、ロシア・ウクライナ史やロシア・ウクライナ政治に対する知識が乏しいと感じられる人が多く、単なるウクライナ応援プロパガンダになっている場合が多い。こうした中、本書は、ロシア政治史が専門の学者の著書のため、ウクライナ戦争に対して、客観的事実の記述が多く、この戦争を正しく理解する上で有益だ。
 
 ウクライナ戦争の開始を、2022年のロシアの侵攻とする見解と、2014年のマイダンクーデターとする見解がある。前者は、歴史を近視眼的に見る立場で、ウクライナ応援団に多い。後者は、ロシア関連地域の歴史研究者などに多いが、親ロ派、親ウ派どちらとも限らない。本書の著者は後者の立場のようだ。また、マイダンクーデターに対して、米国(USAID,CIA)の関与がどれだけあったのか諸説あるが、著者は米国とウクライナ親NOTO派勢力によって起こされたとしており、親ロ派の主張に近い。ただし、2022年のロシアによる進攻を批判しており、この点では親ロ派とは言えない。
 
 本書のタイトルは「ウクライナ戦争後の世界秩序」となっている。本書の後半1/3はウクライナ戦争が東西冷戦とは異なる事を説明した後、今後の展望として、グローバルサウスあるいはBRICSの経済発展を指摘し、西側世界の相対的弱体化を指摘している。
 
 著者の見解でいただけない点がある。2022年のロシア進攻に際して「プーチンは3日で狩猟できると考えていた」と書いている。著者は読心術でプーチンの心を読んだとでもいうのだろうか。全くばかげた記述だ。プーチンは、人なのだから、ウクライナ進攻に際して、3日で終わる可能性も、もっとかかる可能性も、いろいろな可能性を考えたに違いない。当たり前ではないか。そして、それぞれ起こった事態に対して、適切な対応をとった。

コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。

名前:
メールアドレス:
URL:
コメント:

トラックバック

* * * * * *

<< 2025/10 >>
01 02 03 04
05 06 07 08 09 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31

RSS