本の紹介-仏教の思想 8 不安と欣求<中国浄土>2026年08月03日

  
塚本善隆、 梅原猛/著『仏教の思想 8 不安と欣求<中国浄土> 』角川ソフィア文庫(1997/6)
  
中国における浄土教の解説。慧遠、曇鸞、道綽、善導をとりあげているので、日本の時代区分としては、古墳時代から飛鳥時代ごろになる。
 
本書は3部構成で、第1部が仏教学者・塚本善隆の著述で全体の半分程度を占める。第3部は哲学者・梅原猛の著述。第2部は小さな章で二人の対談。この形式は、本書のシリーズの他書と同様である。
 
第1部、第3部ともに4人の念仏者、慧遠・曇鸞・道綽・善導の伝記風紹介が中心で、2つの部で重複しているように感じられる部分が多々ある。もっとも、著者の二人はそれぞれ異なった立場で書いているので、無意味な重複というわけではない。
4人の念仏者のうち慧遠は「般舟三昧経」に基づく、瞑想の手段としての念仏であり、日本の浄土教につながるものではない。曇鸞・道綽・善導は「阿弥陀経・観無量寿経・大無量寿経」による念仏で、これが日本では浄土宗や浄土真宗につながっている。
第1部では伝記のほかに、当時の社会状況なども書かれるが、話が若干飛ぶきらいがあって読みにくく感じた。
第3部では、4人の念仏者のほかに、羅什を取り上げる。この中で、龍樹作と伝えられる「大智度論」は羅什による偽作であるとの説が展開されている。哲学者としての思想面からの判断なのだろう。また、曇鸞が龍樹の易行道と説明する内容は、実際の龍樹の思想とは全く異なるとの指摘や、世親作と伝えられる「浄土論」について、曇鸞の偽作ではないかとの推測が示されている。梅原猛は羅什や曇鸞に対して、批判的なイメージを持っているようだ。
本書では、善導以降の中国浄土教について、ほとんど触れられていない。あまり見るべきものがなかったことは事実だろうが、何らかの記述が欲しかったと思う。
  
なお、本書は1968年に単行本で出版されたものの文庫本。

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