最小絞り2008年08月06日

 現在売られている35mm判カメラでは、多くのレンズの最小F値はF22かF32である(広角系を除く)。どのような理由で、F22あるいはF32と定められているのだろう。(なお、絞りの値は√2の累乗数なので、F22とF32の間の値が採用されることはない。)
 
 写真撮影のとき、一般に、絞りを絞ると描写は鮮明になる。レンズ中心付近を通った光線と、周辺を通った光線とでは、結像位置が異なりこれが収差になるが、絞りを絞ると、レンズ周辺を通る光線がなくなるので、像が鮮明になるためである。しかし、だからといって、どんなに絞っても良いかというとそういうわけでもない。光は波動であるため、小さな円を抜けると、回折現象が起こって、像がぼやける。
 レイリー限界・ドーズ限界は、レンズの口径と分解能の関係を表すものであり、次式で与えられる。

 ドーズ限界(秒)=115.8/D  
 レイリー限界(秒)=127.5/D  (555nmの波長の光)
    ここで、Dはレンズ口径をmmで表したもの。

 200mmF32のレイリー限界を求める。D=200÷32=6.25 であるので、
 レーリー限界=20.4秒=0.000099rad
 これはフイルム面上では0.000099×200=0.02mm=1/50mmとなる。
 すなわち、どんなに鮮鋭な描写をするレンズを作ったとしても、200mmF32では、フイルム面上で0.02mmよりも細かい描写をすることはできない。これが、理論上のレンズ解像度の理論限界である。

 他の焦点距離のレンズでも、F32のレイリー限界は、フイルム面上で0.02mmになる。また、F22のレイリー限界は、フイルム面上で0.014mmになる。

 フイルム面上で30本/mmのパターンを考えると、線の幅は0.017mmなので、F32のレイリー限界は30本/mmのパターンよりも少し甘く、F22のレイリー限界は30本/mmのパターンよりも少し厳しいことが分かる。このように、35mmサイズのレンズの最小F値は、フイルム面上で30本/mmのパターンを何とか撮影できる程度に定められていることが分かる。

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