謹賀新年2011年01月01日

あけましておめでとうございます、今年もよろしくお願い申し上げます。

 昨年秋に、メドベージェフ大統領がクナシリ島を訪問、今年も、政府高官の訪問が予想されます。ロシアの実効支配が強化されることは、間違いありません。
 また、昨年は、尖閣列島の領有権をめぐって、日中が対立し、いまだに和解していません。

本の紹介-福島みずほ「憲法は誰のもの」2011年01月04日

福島みずほ/著 憲法は誰のもの (明石書店)2006.4.28



 自民党は、2003年の衆議院選挙で躍進すると、憲法改正論議が高まり、2005年10月、新憲法草案を発表した。自民党の新憲法草案は、国民の責任・義務を書き加えたもので、国民に教えを垂れている面が強い憲法草案だった。
 本書は、憲法の意義から説き起こし、自民党の新憲法草案を批判したもの。
 その後、自民党は議席を失い、憲法改正どころか、政権をも失ったので、2005年の自民党新憲法草案を論じる必要はないが、憲法の意義を再確認し、憲法のあるべき姿を理解する上で、本書は意義深いものである。

 学生のとき、一般教養の法学概論の最初の講義で、憲法の目的を学んだことがある。法律は国家を運営するために国家権力が国民に命令するもの、あるいは国家の運営方法をあらかじめ定めたもので、必要に応じて国家権力が改定することが出来るのもである。これに対して、憲法は特異な法律で、国民が国家権力に対して「これはしてはいけない」「これをしなさい」と命令するものである。国家が国民に義務を課す場合は、一般の法律で十分なので、憲法に規定するものではない、と習ったものである。このあと、法とは何か、法は誰が作るか、との話につながっていった。
 自民党の新憲法草案では、国民の責任・義務が大幅に書く加えられており、国家の責任については、法律で変更可能なようになっているところが多い。学生のときに一般教養の法学概論で学んだ憲法の目的とは異なっており、不可解に思った。


 本書の第1章では、この点を説明している。すなわち、憲法は、もともとイギリスのマグナカルタに源を発しており、これは、当時のジョン王の行動を規制するために、当時の貴族たちが突きつけたものだった。現在では、国家の行為を国民の側から規制するために存在する。その観点から見て、自民党の新憲法草案は憲法の目的を逸脱したものであるとの説明である。この説明は、学生のときの一般教養の法学概論の講義で習った内容を歴史的に解いたものであり、憲法の意義が分かりやすく書かれている。
 第2章以下に、自民党の新憲法草案の問題点を個別に指摘している。

 ところで、「法の下での平等」との建前に、疑いを持っていない人も多いと思うが、実際には、そのようなことはなく、国家権力や、それに近いエライ人がすると当然の行為であっても、一般人や、特に、権力に嫌われている人がすると、犯罪で逮捕懲役を食らうことは、珍しいことではない。
 イラクに自衛隊を派遣することに反対するビラを、分譲マンションに投函する目的で、マンション内に立ち入った人が、不法侵入で逮捕され、有罪判決が確定したことがある。
 もう、だいぶ前のことであるが、私の居住しているマンションに、自衛隊朝霞駐屯地の隊員募集ビラが無差別に投函されたことがあった。このとき、私は、ビラを無断投函しないように書いて、自衛隊朝霞駐屯地に転送したら、それ以降、無断投函はなくなった。
 自衛隊朝霞駐屯地が隊員募集のビラを配布するために、無断でマンションに立ち入る行為が不法侵入に問われたことはない。「イラク派遣反対」と「隊員募集」はどこが違うかと言えば、権力に反対するのか、権力の側にあるのか、ただ、それだけの違いである。

沖縄戦・集団自決―歴博のパネル2011年01月06日


 新聞報道によると、国立歴史民俗博物館の沖縄戦・集団自決の解説パネルが、軍の関与があったように修正されたそうだ。 
 開館当初は、軍の関与を示す記述を予定していたが、その後の検討で、削除されたものであるが、2011年1月5日から軍関与があったように記述が変更された。
 国立歴史民俗博物館の展示パネルの目的は、観覧者が歴史を容易に理解することだ。今回の改正で、「日本軍により軍民の一体化が推し進められるなかで米軍に投降すべきでないとの観念が一般にも浸透」「手りゅう弾の配布に示される軍人の指示」との記述が加えられたことは、集団自決の背景を理解する上で、一定の前進である。

写真は、2010年3月16日から2010年12月末までの展示パネル。軍関与の記述は無かった。

 新聞に、新しいパネルの写真があるけれど、文章がよく読めないので、そのうち見に行こうと思います。
 集団自決に軍命令があったことは、いろいろな人の証言で明らかですが、右翼勢力の中には、命令文書が見つかっていないので、軍命令は無かったと主張する人がいます。敗戦に際して、日本軍は、書類焼却等の証拠隠滅を行いました。隠滅作業の最中に、新たな文書を作成して、それを残す人がいるとは考えられないことです。
 また、沖縄戦では、日本軍は、沖縄住民をスパイであると難癖をつけて殺害した例が知られていますが、命令書などは作られず、処刑と称して殺害しています。久米島では、連絡係と称して連れ込んだ少女を日本軍は妊娠させていますが、これも、命令書などは作られていません。

ホームページ更新:
 北方領土問題解説の、終戦前後の年表に、「大陸命」「大海令」を追記しました。天皇の裁可を経た陸・海軍に対する最高統帥命令です。
 大陸命も証拠隠滅される恐れがありましたが、以下の経緯で残されました。
 「昭和20年8月14日大東亜戦争終戦に方り陸軍一般に保管書類焼却 の指令が出されたが、第二課〔参謀本部作戦課〕においては本大陸命(指)綴のみは焼却せず、庶務将校椎名典義中尉が都内某所に隠匿し、第一復員省(局)史実調査部(資料整理部)編成に伴い、占領米軍の公私に亘る一般資料追及の監視を避けて部長宮崎周一中将が自宅に保管した。」
 焼却処分されていたら、右翼勢力は「天皇の統帥命令はなかった」と言い張っていたのだろうか。

http://www.ne.jp/asahi/cccp/camera/HoppouRyoudo/index.htm

http://www.ne.jp/asahi/cccp/camera/HoppouRyoudo/Nenpyou2.htm

本の紹介―尖閣列島・釣魚島問題をどう見るか2011年01月12日

尖閣列島・釣魚島問題をどう見るか―試される二十一世紀に生きるわれわれの英知 (隣人新書)
村田忠禧/著 日本僑報社 (2004/7/1)

 本の右側から70ページ余りが日本語、左から50ページ余りが中国語で書かれている。日本語だけを読む者にとって、新書版70ページの小さい本であるので、内容は豊かとはいえない。

 日本の尖閣領有の根拠は無主地先占であるが、本書では、この点を論駁している。無主地先占が否定されると、日本の領有の根拠が根幹から揺らぐので、本書の指摘は重要である。多くのページ数を、日本の尖閣領有批判に向けているが、中国の論拠にも批判的である。
 分量が少ない割には、ちょっと高いので、なかなか購入する気にはならないかもしれないが、図書館で借りるのならば、尖閣領有の論拠と欠陥の概要を知る上で、一読の価値はあるだろう。


大学入試センター試験2011年01月17日

昨日、大学入試センター試験の数学がありました。
昨年の数1・Aは例年に比べだいぶ難しかったけれど、今年は、例年に戻りました。昨年に比べ、平均点で10点アップしているかな。数1・Aは数学が苦手な子が受験するのだから、このぐらい易しいほうがいいのでしょうか。
数2・Bは例年並み。昨年少し易しかったので、昨年よりも難しく感じた子も多かったと思う。平均点は昨年よりも少し下がったか、同程度か。

それにしても、易しいね。理系で、上位国立を目指す子は、満点に近いだろう。こんなのでは、点差がつかない。
1978年以前、国立大学が、1期と2期に分かれていたときは、東大だけが一次試験をしていました。この時の問題は、基礎的問題だけれど、決して易しくなかった。1979年から、国立大学が共通一次試験をとりいれました。「国立大学にはいる子は、この程度の問題は最低でも出来ないとね」との感じの問題でした。随分、易しく感じた。
1990年に、センター試験となり、私立大学も入ってくると、受験人口が増えて、それに伴って、さらに易化したのでしょうか。こんなに易しい問題では、上位国立大学受験生には、ケアレスミスをなくす競争になってしまい、入学試験として意味をなしていないのではないか。

報道によると、センター試験も易しいバージョンと難しいバージョンを作ることが検討されているそうです。

結婚詐欺殺人2011年01月18日

  
 雑誌g2の2010年6月号に掲載された、ノンフィクション「別海から来た女(佐野真一/著)」を読んだ。40ページほどの小品。婚期を逃した男性や老人から高額な金をだまし取った挙句、複数の男性を次々と殺害した、まれにみる凶悪な結婚詐欺犯『木嶋佳苗』のルポ。
  
 この事件は、犯行の特異性と、犯人の容姿の特異性(要するにデブでブス)から、スキャンダラスに報道された。このノンフィクションは、そのようなスキャンダラス報道とは一線を画し、木嶋佳苗の出身地である北海道別海町のほかに、犯行のあった千葉県、木嶋の曽祖父の出身地福井を訪ね、インタビューし、犯人の生い立ちと、現代社会の孤独性にスポットを当てている。   
   
  
 別海町は、根室市と並んで、北方領土問題の地元です。このノンフィクションでは、北方領土問題の話は全くありませんでした。でもね、北方領土問題は国の金が地元に投入されていて、木嶋佳苗の祖父は町会議長を長く務めた人なのだから、北方領土利権に何らかの関係があるでしょう。こういった利権が、凶悪犯罪者を生んだ下地になっているのではないだろうか。

大陸命 ― ホームページの追記2011年01月22日

 北方領土問題 関連資料 のページに、終戦期の大陸命を掲載しました。


 日本では、8月15日を終戦記念日と称して、戦没者追悼式を行うが、アメリカをはじめとした戦勝国では9月2日か3日を戦勝の日とすることが多い。戦争を終結させるには、それなりの手続きが必要なので、そのうちのどの日を終戦の日とするのかは、それぞれの国によって違うこともあるだろう。

 日本軍の最高責任者は天皇裕仁だったので、天皇の軍に対する命令が、どのようなものだったのかを見ることが、日本側から見た戦争終結の姿を正しく理解することにつながる。

 『大陸命』とは天皇の陸軍に対する統帥命令。大本営で立案され、参謀総長から天皇に上奏され、天皇の裁可を受けた後、各指揮官に伝達された。


1945/5/9~5/30 
 昭和20年5月、日本軍は対ソ連戦に向けて、戦争準備を行った。対ソ連戦の作戦準備命令関連の大陸命を掲載した。

1945/8/9~8/14
 昭和20年8月9日、ソ連は日本に宣戦布告し参戦した。ソ連参戦以降の大陸命を掲載した。

1945/8/15~8/28
 ポツダム宣言13条では、日本国に対して、ただちに軍隊の全面的な無条件降伏を宣言することが定められている。しかし、日本政府は、日本軍の無条件降伏命令を8月15日以降も出すことなかった。大陸命による停戦命令は以下のようになっており、ポツダム宣言により指示された無条件降伏命令は9月2日の降伏文書調印まで出されていないことが分かる。
 8月15日、各軍は現任務を続行、但し積極進攻作戦を中止する。
 8月16日、即時戦闘行動を停止する、但し止むを得ざる自衛の為の戦闘行動は之を妨けず。
 8月19日、内地の陸軍は、8月22日0時以降一切の武力行使を停止する。
 8月22日、外地の陸軍は、8月25日0時以降一切の武力行使を停止する。但し支那派遣軍は局地的自衛の措置を実施することを得。
 この時期の大陸命を掲載した。

1945/9/2
 この日、降伏文書の調印がなされたが、同日、軍に対して『敵対行為を直ちに終止し、武装を解除』することが命令された。
 日本がポツダム宣言の条項を正式に実施した重要な命令なので、大陸命と大陸指を掲載した。


また、やさしい北方領土問題のページにも、関連する記述を追記した。

南京大虐殺を伝えるLife誌2011年01月26日


ホロコースト犠牲者を想起する国際デー:
 1月27日は、ソ連軍によってアウシュビッツ強制収容所が解放されたことにちなみ「ホロコースト犠牲者を想起する国際デー」です。
ドイツは過去の犯罪を真摯に受け止めています。ヒットラーの親戚でない人にとって、ヒットラーの犯罪を弁護する必要はないのでしょうけれど。


南京大虐殺:
 南京大虐殺を伝えるLife誌(1938年1月10日号)を入手しました。写真は、虐殺を伝えるページの次のページ。生首の次は能天気な写真。
 日本には、南京大虐殺を隠蔽しようとする勢力があります。どうして?? 南京大虐殺は、大日本帝国軍人の犯罪なのだから、今の多くの日本人には責任ないでしょう。大日本帝国軍人になろうとしている人もいないでしょうに。私も、大日本帝国軍人だったことは無いし、今後そんなのになる予定もない。


佐藤優のマンガ2011年01月30日


憂国のラスプーチン 第1巻 読みました。マンガだから「読む」ではなくて「見る」かな。
主人公の絵が、佐藤優本人に比べ、カッコよく誠実そうにかかれていて、ちょっと違和感があります。

内容は…まあ、マンガなので…

ネット右翼2011年01月30日

 少年のころ、学生の左翼運動が盛んで、一流大学の多くの学生が、左翼運動をしていた。彼らは、読書をして、理論学習に熱心だった。当時も、右翼学生はいたけれど、彼らは国士舘大学をはじめ、恥ずかしくなるような低偏差値の学生だった。言っていることも、単に馬鹿の一つ覚えよろしく「天皇陛下万歳」を叫んでいるように感じた。
 このため、『左翼=勉強ができる』『右翼=バカ』との印象を持っていたのだが、左翼・右翼の違いは、思想の違いであって、能力の違いではない。しかし、現実の右翼と左翼を比較すると、明らかに能力に違いがあって、不思議だった。 
 今になって考えてみると、これは当時、左翼が盛んだったので、まともな学生の多くが流行の左翼になっていたのだろう。国士舘大学にしか入れなかったような、低偏差値の学生は、左翼にも右翼にも付いて行けず、単に、バカの雄叫びを上げていたのだろう。これが、右翼っぽく聞こえたにすぎない。
  
 最近、ネット上では、ネット右翼と称する青年たちがいる。なかでも、「在日特権を許さない市民の会(略称:在特会)」はネットの書き込みや、動画の投稿などで有名である。単に、汚い言葉で、在日韓国朝鮮人を罵り、根拠のない言説を振りまいているだけの、到底右翼とは思えない、低能集団のように感じる。
  
 雑誌g2の2010年12月号(Vol6)に、ネット右翼の「在日特権を許さない市民の会」の記事がある。
 
 在特会の会長は、高校では目立たない存在で、卒業後、大学には行かず、目立たない人生を送っていたようである。それが、アジテーションを習い、賛同者が集まり、現在のようになった。
 もともと、成績が悪い子が、高校で勉強せずに、大学も行かないで、ネット右翼になったとしても、まともな思想は持ち合わせず、単に、汚い言葉でののしるだけの存在になってしまう。
   
 少年のころ、国士舘大学の右翼学生は、バカの雄叫びをあげているだけのようだったが、最近目にする、在特会の主張は、かつての国士舘大学学生レベルにも達していないように感じる。実際に、国士舘大学にも入れないような青年が、中心メンバーなのだろうか。
 ただし、能力が乏しい青年が、韓国人や中国人を排除しようとする気持ちは理解できる。現在、日本の企業は、無能な学生を採用する余裕がなくなっているので、無能な日本人青年は不採用にして、優秀な韓国・中国人を採用することも多い。これは、日本人が無能で、韓国・中国人が有能であると言うことではない。日本人にも、韓国・中国人にも有能な人材・無能な人材があるが、能力主義の社会では、日本人でも、無能なものは企業は採用しないと言うことである。
 日本の社会が無能な人間を排除するようになり、彼らの行き場所が、ネット右翼以外になくなってしまったのだろう。
 

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