下の記事の追加2006年09月21日

私は、次のように書きました。『日本では、判決は一般に法源とはならず、個々の裁判の独立性が高いので、裁判をした事件以外に対する判決の影響力は元々小さいのです。』

これだけだと、誤解を生む表現でした。説明します。

『憲法 第76条3 すべて裁判官は、その良心に従ひ独立してその職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される。』

 憲法にこのように規定されている為、制度上、司法は完全に独立しています。

 しかし、1つの事件で、下級審、上級審と複数の裁判が行われるときは、司法の整合性を取るために、下級審の裁判は上級審の判断に拘束されます。これが、裁判所法第4条の規定です。
 また、民事訴訟では、実質的には1つのことであっても、複数の訴訟が提訴されることがあります。このとき、夫々の裁判に整合性を取るために、主文に限って既判力をもたせてあります。これが、民事訴訟法第114条の規定です。刑事事件では、判決が確定すると、同一の犯罪を裁判することはないので、民事訴訟の意味での既判力の概念は存在しません。

 実際には、特定の判決に、他の判決が影響します。特に、最高裁判例は下級審に大きく影響します。日本の司法制度では、法律に定められた特別な場合を除いて、最高裁に上告することはできません。ところが、最高裁判所の判例に違反した判決がだされると、それだけで上告理由になります(民事訴訟規則48条,刑事訴訟法405条2号)。このため、実際には、最高裁判所の判例に違反した判決が出されることは、ほとんどありません。

コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。

名前:
メールアドレス:
URL:
コメント:

トラックバック

* * * * * *

<< 2006/09 >>
01 02
03 04 05 06 07 08 09
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30

RSS