本の紹介-桐生市事件: 生活保護が歪められた街で2025年10月10日

 
小林美穂子、小松田健一/著『桐生市事件: 生活保護が歪められた街で』地平社 (2025/3)
 
 生活困窮者に対して、生活保護という制度があるが、多くの自治体では生活保護をさせないように努力をしている。先進国の中で、日本は突出して生活保護が少ないと言われているゆえんである。
 こうした中、桐生市役所では、生活保護受給者にたいして、定められた現金の一部を預かり金として、全額を渡さなかった。明らかに違法行為であるが、本人の希望として処理していた。このほかにも数々の非人道行為が行われていたが、このような行政は他の自治体と比べても極端だった。
 本書は、元東京新聞記者で元前橋支局長の小松田健一らによるもので、桐生市の生活保護切り捨ての状況を克明に記載している。文章は読みやすい。ただし、一部ドキュメンタリー風で、読むのが面倒に感じる部分があった。本書を読むと桐生市の非人道的対応が良くわかるが、なぜ、桐生市が他市に比べて突出して非人道的だったのか、この点は、わからなかった。
 桐生市はもともと絹織物の町として栄えたが、今では衰退の町なので、財政が厳しいのだろうが、しかし、そのような町は全国にいくらでもある。桐生市長は絹織物問屋社長のはずだが、そういった個性が関係しているのだろうか。群馬県は、他県に比べて弱い者いじめが盛んな地域とも思えないので、桐生市役所員が、どのような理由で極端に非人道的だったのか、不思議でならない。

本の紹介-フェイクファシズム 飲み込まれていく日本2025年10月08日

 
金子勝/著『フェイクファシズム 飲み込まれていく日本』日刊現代 (2025/7)
 
 内容は日本政府始め、昨今の日本の状況を否定的にとらえる記述。特に、ニセ情報により誘導される輿論の問題点を指摘する。日本の現状認識に対しては、完全に同意するが、既に知られていることでもあり、また読んでいると、日本のあさましい現状を再認識させられることになり、なんだか悲しくなる。現状を変えるため、著者は処方箋を各所で示しているが、必ずしも同意できるものばかりではない。
 以下に、目次を示す。
  
-目次-
第1章 トランプは世界をどう変えるのか
 分断とフェイクファシズムを乗り越えてカタストロフの時代を生きるには
第2章 アベノミクスをどう終わらせるか
 政治腐敗、経済破綻、フェイクの嵐を解毒する処方箋
第3章 マイナ保険証の失敗の本質
 世界に後れを取るIT産業への真の救済策とは
第4章 エネルギー転換はなぜ必要か
 間違いだらけの原発政策の呪縛を解く
第5章 崩壊する農業と農村を立て直す道
 食料・農業・農村基本法の見直しは「農村破壊法」だ

本の紹介-南京事件 (岩波新書) の続き2025年09月24日

 
 現在、中国が作成した、日本軍による南京大虐殺事件を扱った映画『南京写真館』が、日本を除く世界各国で上映され、興行的成功を収めている。
 表題の書籍とは直接関係ないのだけれど、写真は、南京大虐殺中の1937年12月19日に、大虐殺の中心である上海派遣軍の主計少将・根岸完爾が差し出した葉書。 内容は、慰問袋に対するお礼状で、「とうとう、南京もとりました。ここで、お正月をすることになります。」と記されている。宛名の、臼田義子は萬歳商会(現・㈱バンザイ)オーナー関係者だと思う。

本の紹介-南京事件 (岩波新書) の続き2025年09月20日

 現在、中国が作成した、日本軍による南京大虐殺事件を扱った映画『南京写真館』が、日本を除く世界各国で上映され、興行的成功を収めている。
 日本では、頭の悪いネット右翼が流行っていて、南京大虐殺を否定する人たちがいる。この人たちは、『南京事件は東京裁判のでっちあげで、事件当時どこも報道していなかった』などの、虚偽を信じ込んでいる人もいるようだ。笠原十九司/著『南京事件 新版』 (岩波新書)(2025/7)には、153-155、159、197-199頁で、事件当時広く報道されていた事実を明確にしている。ただし、頭の悪いネット右翼は、岩波新書のようなまともな本を読んで理解することは困難だから、本書は虚偽を信じ込む人に役に立たないかもしれない。
 
 千葉県佐倉市の歴史民俗博物館の展示品に「南京事件を報じる記事 LIFE」があり、誰でも容易に見学できるので、ネット右翼でも、史実を容易に理解できると思うのだが、彼らがどうしてここまで無知なのか理解できない。
 

日本軍による南京大虐殺を伝える「LIFE 1938/1/10」の表紙
 

国立歴史民俗博物館の解説
 
 ただし、国立歴史民俗博物館では、日本軍の残虐を示すページではなくて、南京から船で脱出する住民の写真のページを展示している。日本軍の残虐を示すページは、あまりにも生々しすぎるので、展示がはばかられたのだろう。
 
これが、LIFE誌の日本軍の残虐を示すページ。写真には英語の解説がある。このような内容。
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(左上写真の解説)
 南京の民間人が、極度の悲しみに暮れながら、日本軍の爆弾の破片で負傷した瀕死の息子を抱えている。これは12月6日、日本軍の隊列が市の高い古城に迫る直前の出来事だ。門の内側に築かれた土塁に注目してほしい。この写真のような、約15万人の南京市民が、南京に留まった約27人の白人男性によって非公式に組織された「安全地帯」で、包囲の間ずっと身を潜めていた。このうち18人はアメリカ人だった。日本軍は、この安全地帯をある程度尊重した。

(左下写真の解説)
 南京市内で日本軍は、兵士と民間人を50人ずつ縛り上げ、処刑した。上の遺体は、死後しばらく経っている。手前の男たちの頭上に電柱と電線が横たわっているのが見える。背景の日本兵は、荷馬車を使って主に食料を求めて商店を組織的に略奪している。南京での組織的な略奪は、日本軍兵站部が威信よりも食料を必要としていたことを示している。
 
(右下写真の解説)
 反日主義者の中国人の首は、12月14日、南京陥落直前、南京郊外の有刺鉄線のバリケードに挟まれていた。12月12日に日本で陥落が祝われた南京では、13日、14日、15日と征服者たちの砲火が浴びせられ続けたが、この首は凍えるような寒さの中、状態を保っていた。16日、上海の日本軍報道官は「南京が完全に静かだとは言えない。おそらくあと2、3日かかるだろう」と認めた。
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本の紹介-南京事件2025年09月18日

 
笠原十九司/著『南京事件 新版』 (岩波新書)(2025/7)

 現在、中国が作成した、日本軍による南京大虐殺事件を扱った映画『南京写真館』が、日本を除く世界各国で上映され、興行的成功を収めている。
 
 本書は1997年に出版された同名の本の改定新版。写真の右が新版で、左が旧版。
 新版は、旧版比べて、章立てが変わっているが、内容的には大きな違いはない。旧版Ⅴ章が、Ⅵ,Ⅶ,Ⅷ章になり、内容も増えている。ここは、南京掃討作戦による日本軍の残虐行為を資料に基づき説明する部分。
 本書は、一般向けに書かれた本で、予備知識なしに、南京大虐殺事件の全貌が理解できる。新版の方が、新たな知見も加わっているので、新版を読んだ方が良いだろう。
 
 当時、南京は中国の首都で、外国人ジャーナリストも多かったので、白昼堂々と行われた日本軍の犯行は、世界に広く知れ渡ることとなり、日本は国際的な非難を浴びた。しかし、日本は国内での報道を禁止したため、多くの日本人には知られることはなく、日本国内では、武勲を喜ぶ民衆であふれた。

 南京大虐殺の犠牲者数は、数万から40万と諸説ある。これは、南京の範囲をどこに定めるのか、時期をどのように定めるのか、何を以て虐殺犠牲者とするのか、という問題があるので、研究者によって犠牲者数が違ってくる。現在、南京市の範囲は、南京城内を含む南京特別区域、六合区、浦口区、江寧区、溧水区、高淳区であるが、本書では、南京の範囲を、現在の南京市に加えて、句容市を含めている。これは、当時の南京市の範囲である。南京大虐殺事件の期間として、本書では、1937年8月15日の海軍航空隊の南京爆撃を起点とし、1938年3月28日の中華民国維新政府樹立までとしている。南京大虐殺犠牲者数は、およそ20万人あるいはそれ以上としている。
 南京大虐殺事件の犠牲者数に関して、まともな研究者の中で、少ない人数を挙げているのは、秦郁彦/著「南京事件」であるが、これに対して、本書は、日本人研究者の中では多めの犠牲者数になっている。

 日本では、ネット右翼など、頭の悪い人たちを中心に、南京大虐殺を否定する人たちがいる。歴史の無知によるデタラメ言説であるが、このような虚偽に対して、本書の帯には、以下の説明があり、読書に便利である。

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南京事件Q&A
・南京事件は東京裁判のでっちあげで、事件当時どこも報道していなかった。
⇒報道されていました。本書153-155、159、197-199頁参照。

・南京入城後ののどかな写真や映像が残されている。
⇒プロパガンダです。検閲もありました。本書81、236頁参照。

・日本軍は規律正しい軍隊だった。
⇒軍紀違反が横行していました。本書68-70、241、242頁参照。

・殺害されたのは便衣兵で問題ない。
⇒捕虜や投降兵を殺害しています。「便衣兵」の認定にも何重もの問題がありました。本書104、152、196-198、256、257頁参照。

・当時、南京には20万人しかいなかった。
⇒20万人は南京城内の安全区の人ロです。被害のあった南京市全体の人ロではありません。本書200、270頁参照。
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本の紹介-現代史の起点 ソ連終焉への道2025年09月12日


塩川伸明/著『現代史の起点 ソ連終焉への道』 岩波書店 (2025/7)

 ゴルバチョフのグラスノスチ・ペレストロイカによって、ソ連は崩壊し、冷戦はソ連の完全敗北で終結した。
 本書は、ロシア・ウクライナ史の大家・塩川先生の近著で、ゴルバチョフ期の政治史を詳細に記す。政治の動きの他に、経済状況にも言及はあるが少ない。政治に関しては、ソ連中央の他に、各共和国のや東欧諸国の政治への言及もある。学術研究書ではなくて、一般向けに書かれているようで、出展等には多くはない。
 本書は、全11章のうち、最初の2章はゴルバチョフ時代以前のソ連政治を記すが、ここは、予備知識の確認程度の内容で、記述のメインではない。3章以降がゴルバチョフ期の政治史で、内容は高度なので、ソ連政治やゴルバチョフ時代の政治に対する予備知識がないと、読むのはつらいと思う。また、本書は、政治史が記述のほとんどで、経済は少なく、また、民衆に対する記述はほとんどないので、この点の予備知識がないと、なんとなく消化不良の感があるかもしれない。
 本書は、塩川先生の著書らしく、記述の内容は客観的・高度で信用できると思う。

本の紹介-追跡公安捜査2025年09月05日

 
遠藤浩二/著『追跡公安捜査』毎日新聞出版 (2025/3)
 
 本書は全6章からなり、最初の2章が国松長官狙撃事件で、残りの4章が大川原化工機事件。毎日新聞記者の執筆のため読みやすい。
 
 国松長官狙撃事件とは、オウム真理教事件のときに、警察庁国松長官が自宅を出たところで狙撃された事件。この事件は警視庁公安部が対応したが、結局犯人逮捕に至らず時効が成立した。本書によると、公安部の見立てではオウムの犯行ということに決められたので、それに反する情報はすべて無視して、オウム一点張りで操作したために、結果、犯人取り逃がしにつながったことが記される。この件で、公安部はバカであると言えるが、犯罪的ではないだろう。
 
 大川原化工機事件とは、噴霧乾燥機を中国に輸出した際、貨物等省令に定める輸出許可を得ていなかったとの容疑で、警視庁公安部が大川原化工機の社長以下3人を逮捕し、検察は起訴後に控訴取り下げ刑事裁判が終了した事件。この事件は、警視庁公安部による証拠隠し、証拠捏造が明るみに出て、国と都に対して1億6600万円余の損害賠償支払いが高裁判決により確定した。
 逮捕された一人は、東京工業大学出身の当時相談役だった技術者だったが、逮捕中にガンが見つかり、保釈申請したものの裁判所は保釈を拒否し、その結果、進行ガンで死亡している。また、捜査を主導した警視庁公安部の警部・警部補が事件後に昇進している。要するに、警視庁公安部は自分が出世するために、証拠を捏造し、無実の民間人を逮捕し、検察官、裁判官と一体となって、無実の技術者を病死に追い込んだものだった。
 本書では、大川原化工機事件について、公安部が捏造した手口を含め、事件の経緯が詳しく書かれている。国松長官狙撃事件同様、公安刑事の見立てにより捜査が開始され、見立てが正当であるように証拠を捏造したものだった。見立て捜査の是非について、私にはわからないが、見立に反する証拠を故意に廃棄することや、見立てに合うように証拠を捏造することが誤りであることは論を待たない。
 なお、大川原化工機事件に関し、国と都に対する損害賠償請求は、本書出版後に、国・都側全面敗訴の控訴審判決が出され、確定した。敗訴確定を受けて、警視庁・検察庁は冤罪被害者に対して謝罪している。
 
 本書では、公安部の見立て捜査の問題を再三指摘している。国松長官狙撃事件、大川原化工機事件共に、公安部の見立て捜査が失敗の原因に含まれるとの見解は一理あると思う。しかし、大川原化工機事件は、捜査方針を誤ったことが問題なのではなくて、大川原化工機に有利な明白な証拠を隠蔽し、公安部に有利な証拠を捏造した点が、大きな問題である。こんなことをされたら、誰だって死刑になってしまう可能性がある。なぜ、このような暴挙が警視庁でなされるに至ったのか、この点について本書では、捜査員の問題との指摘にとどまっている。しかし、公安部の捏造の背景として、安倍政権における警察官僚の重用、それに伴う警察官僚と政治権力中枢の関係強化などがあったとの指摘もある。本書では、そういった広い視野での原因に対する検討が少なく、ちょっと物足りなさを感じた。

本の紹介-ミリンダ王の問い2025年08月27日

 
中村元、早島鏡正/訳『ミリンダ王の問い 1 インドとギリシアの対決』ワイド東洋文庫(2003/5)
 
 本書はミリンダ王と仏教側のナーガセーナ長老との対談で、ミリンダ王が問いナーガセーナが答えるもの。BC130~BC150ごろ、北西インドにあったギリシャ人王権のメナンドロス1世は、ミリンダ王と呼ばれた。ミリンダ王の時代は、大乗仏教以前の部派仏教の時代であるが、ナーガセーナがどの部派だったのかは分からない。
 
 本書は東洋文庫から1963年に出版され、2003年にワイド版が出版された。本書は、全3巻の第1巻で、第1巻の範囲が最初に成立した部分で、第2巻、3巻の範囲は、その後に成立したものと考えられている。本書第1巻の最後には中村元の解説が付き、第3巻の最後には早島鏡正の解説がつく。
 
 ミリンダ王はギリシャ哲学を身に着けていたので、仏教思想に疑問を持っており、それを解明するために、ナーガセーナに質問したもの。ナーガセーナは多くの場合、比喩をもって答えている。
 
 最初に、ナーガセーナはナーガセーナとは単なる名称であって、人格的個体は認められないと説く。名称と実態に関する形而上学的解釈に対する空観の立場とすれば容易に理解できるが、竜樹はもっと後の人。
 無我と輪廻について、ミリンダ王は質問している。ギリシャでもキリスト教でも、魂の存在は自明なのだろう。これに対して、仏教は無我説であるから、我としての魂は認められない。しからば、何が輪廻するのかという質問だ。ナーガセーナは火の譬えによって答える。火は燃焼現象なので、新たな薪を足せば火は永続するがだからといって火の実態があるわけではないことは、多くの人が同意するだろう。でも、人間は生理現象のほかに、身体という実態があるのだから、その類推で、魂の実態がどこかにあるような気がする人が多いだろう。このため、火の譬えで、どれだけの人が納得するのか、はなはだ疑問だ。
 本書3巻の結びでは、ミリンダ王はナーガセーナの答えに感動して、仏教に帰依している。お話としては、そうなるのだろうが、実際に、たとえ話で説明されただけで、仏教に帰依するか疑問に感じた。
 
 本書はギリシャ哲学側からの古代仏教哲学に対する質問と回答である。しかし、現代人思考の基層はギリシャ哲学的なので、本書は、現代人の古代仏教思想への問と解答のような気がする。

本の紹介-増補 南京事件論争史2025年08月26日

 
笠原十九司/著『増補 南京事件論争史』(2018.12)平凡社
 
 最近、櫻井よしこ氏が「南京大虐殺はわが国の研究者らによってなかったことが証明済みだ」との発言をしたそうで、南京事件がちょっとした話題になっている。「南京大虐殺はなかった」との主張は、神主・フィクション作家・ギャグマンガ家などによってなされたことがある。邪教・フィクション・ギャグは、真実を語るものではないので、「無かった」と主張があっても良いように思う。
 
 では、史実はどうだったのか。本書は、近現代史が専門の笠原十九司によるもので、各人の主張を比較検討し、「南京虐殺なかった」説は史実に反することを明らかにしている。本書は2007年に出版された本の増補改訂版。
  
(以下は、2019年に書いた記事の再掲です)
  
 2007年は「南京虐殺がなかった」とする説の破綻がほぼ確定的となった年だった。「南京虐殺なかった」説を唱える人は、匿名の怪しい人、神主、ギャグマンガ家など、歴史学者でない人たちが多かった。そうした中、亜細亜大学教授・東中野修道は「南京虐殺なかった」説を唱える歴史学者として脚光を浴びていた。しかし、東中野修道の南京事件研究にたいして、名誉棄損であるとの訴えがなされ、2007年に下された判決では「学問研究の成果というに値しないと言って過言ではない」との理由で、東中野修道に損害賠償支払いが命じられた。
 亜細亜大学教授・東中野修道の「南京虐殺なかった」説の手法は、彼の嫌う資料の中に、少しでも疑問点があると、それを誇張して、すべての資料が虚偽であるかのように吹聴し、彼の妄想が真実であるとの主張をするものだった。本書においても同様な指摘がなされている(P245)。また本書に指摘はないが、東中野修道の説は写真の検証に対する無知が露呈するなど、致命的な欠陥が明らかになり、東中野修道説は破綻した。
 
 本書は2007年に出版された本に加えて、それ以降の状況が加筆されている。第7章「2007年」から第9章「2010年代後半」まで、ページ数にして74ページになる。
 
 「南京虐殺なかった」説の破綻が歴史学上は明白になった後、2007年以降は、自民党政府、特に安倍政権による、強引な政治介入の時代になった。南京大虐殺をモチーフとした映画を上映禁止としたり、教科書検定で政治介入するなど、政治主導による南京虐殺否定論がすすめられている。
 さらに、日中両国政府主導で実施された、北岡伸一・東大名誉教授らを中心とした日中歴史共同研究の成果の中で、日中共に南京虐殺を史実として認定されると、これを無視する態度をとるなど、明白となった史実を無視する傾向が続いている。
 このような右翼・自民党に対して、南京事件の真相解明の研究も進んでいる状況が示されている。
 なお、東中野修道が南京事件論争から退場した後、立命館大学名誉教授・北村稔が「なかった」派の論客となったと思っていたのだが、彼の言説も否定されたようだ。現在は、評論家の阿羅健一が論客のようだ。歴史学研究として南京虐殺が認定された後でも、評論ならば妄想でも何でもありなので、評論家ではちょっね。
 
 p325~p330に南京事件否定派が通州事件へシフトしているとの記述がある。通州事件とは、日本の傀儡政権に雇われた中国人が反乱を起こして、麻薬密売関係者等、日本人・朝鮮人を殺害した事件であるが、大日本帝国政府は、歴史全体を見ることなしに「中国人が日本人を殺した」として、敵愾心を煽り立てるのに利用した。  
 日本軍は阿片を中国に密売して戦費を調達していたため、害毒の大きいケシの新種改良が行われた。現在、東京都薬用植物園では、このケシを見ることができる。美しい花で、一見の価値があります。5月中旬が見ごろです。 
 
旧版については、以下に感想を書きました。
http://cccpcamera.asablo.jp/blog/2008/01/06/2548242
 
通州事件については以下に解説を書きました
http://cccpcamera.asablo.jp/blog/2018/07/29/8928254
http://cccpcamera.asablo.jp/blog/2018/08/06/8934331
http://cccpcamera.asablo.jp/blog/2006/09/10/518422
 
東京都薬用植物園のケシの花の写真はこちら
http://cccpcamera.asablo.jp/blog/2010/05/16/

本の紹介-仏教の基礎がよくわかる本2025年08月25日

 
アルボムッレ スマナサ-ラ/著『仏教の基礎がよくわかる本 宗教に頼り信仰に縋る弱い自分よ、さらば』(2000/9) 国際語学社
  
 100ページ程度の薄い本で、文字も大きく、文章も平易で読みやすい。
 テーラワーダ(上座部仏教)のスマナサ-ラ長老による仏教の基礎解説。日本の大乗仏教は、釈迦の仏教とはだいぶ異なってしまったが、テーラワーダは釈迦の仏教の特色を色濃く残している。本書は、テーラワーダによる仏教初歩の説明で、仏教の基礎は心の修養であると説く。具体的には、五戒を守る事、慈悲の瞑想を行うこと、そのために行うヴィパッサナー瞑想の具体的なやり方が説明されている。
 上座部仏教は、心をどう理解するかの知恵と、心をどのように修養するのかということと、そのための修業の実際のやり方が具体的にわかりやすく示されていて、実践的な宗教だ。

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