本-検証 政治とカネ2024年07月02日

 
上脇博之/著『検証 政治とカネ』岩波新書7月新刊
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チャソフヤール東地区、解放間近2024年07月03日

 
 2023年5月、プリゴジン率いるワグネルは、ウクライナの要塞都市バフムトを解放した。チャソフヤール(チャシフヤール)はバフムトの西10㎞にあり、バフムトへの軍事物資供給基地だったが、バフムト陥落後、ウクライナ軍はここを要塞とした。チャソフヤールは運河により、東西二つの地区に分かれている。2024年2月にドネツク北西のアウディーイウカが解放されると、バフムト西部戦線が活発化した。
 7/2時点で、ロシア軍は、チャソフヤール東地区をほぼ制圧した模様。

本の紹介-北朝鮮拉致問題の解決2024年07月04日

 
和田春樹/編著、田中均・蓮池透・有田芳生・福沢真由美/著『北朝鮮拉致問題の解決』岩波書店
 
 岩波書店の単行本。編著者の和田春樹は、ロシア史・朝鮮史の研究者。
 北朝鮮拉致問題は小泉内閣のときに生存者5人が帰国し、8人の死亡が伝えられた。これに対して、救う会主導の被害者家族会は全員の一括帰国を求めたため、日朝交渉は膠着し現在に至っている。救う会は北朝鮮に反対する右翼系団体で、メンバーには暴力団風のものもあった。北朝鮮から死亡の詳しい状況が伝えられていない者もあったので、被害者家族が、死亡を受け入れられない気持ちは理解できるが、それと外交は異なるだろう。事実、他に拉致被害者の生存がいることが伝えられたときに、救う会・家族会は、全員一括帰国を主張し、生存者の調査を辞めさせた。
 拉致被害者のうち、横田めぐみさんは、死亡のいきさつが帰国した拉致被害者や、北朝鮮で結婚した夫の証言などで、かなり詳しく伝えられた。これによると、鬱病発症後に結婚したが、出産後再び産後鬱になり自殺したとのことだ。横田めぐみさんの遺骨の一部が、元夫からもたらされるも、科警研の鑑定では「DNAが検出されなかった」となり、別の鑑定では「別人のDNAが検出」となった。これに対して、細田官房長官(当時)は、「別人の骨」と断定した。「別人のDNAを検出」したとする大学助教は、その後、警視庁に栄転し、マスコミ取材を一切拒絶している。北朝鮮からもたらされた遺骨は、日本政府が抑えており、再鑑定がなされていない。
 
 本書は、拉致の実態・拉致問題と日朝交渉、救う会と家族会、横田めぐみさんの問題など、拉致問題を事実に基づいて書かれており、拉致問題の全貌を知ることができる。右翼のプロパガンダを声高に唱えたいだけの人には、本書は適切ではない。
 「めぐみへの誓い-奪還」なる劇・映画が上映されることがあるが、著者の蓮池透・有田芳生によれば、事実と異なり、北朝鮮をフィクションで批判する部分が入っているとのことだ。拉致問題を考える上で、事実は何かという点を正しく抑えることが肝心と思う。

本-空と慈悲の物語 維摩経2024年07月17日

 
釈徹宗/著『空と慈悲の物語 維摩経』NHK100分de名著・NHK出版(2022/1)
 
 維摩経は「空」を解く大乗経典ではあるが、他の教典と違って、在家の信者・維摩詰が釈迦の高弟や菩薩に対して教えを説く内容。
 本書は25分の放送4回分に加えて、本のための最終章からなる。放送内容は維摩経内容の雰囲気が分かる解説だが、維摩経の位置づけの説明が乏しいので、25分4回の放送を聞いただけでは、数ある経典の中の一つの経典の雰囲気がわかるだけに終わってしまうのではないだろうか。最終章には大乗仏教の中での維摩経の位置づけが書かれているが、少ない。
 いずれにしても、ページ数が少なく、何となく燃焼不足の感じがした。

本の紹介-パスカル「パンセ」 「考える」ことが、すべてだ2024年07月18日

  
鹿島茂/著『パスカル「パンセ」 「考える」ことが、すべてだ』NHK100分de名著 NHK出版(2012.6)
 
今から数十年前、中学生のときに、パンセの翻訳本を読んだ。特にこの本を読みたかったわけではなくて、単に、学校の図書館にあった思想系の本で、一番、分厚かった本を読んでみた。書かれた内容はあまり理解もできなかったし、あまり共感できなかったが、人の心を探求することは、おもしろそうだと思った。自分の人生を振り返ると、斜に構えた人生を送ってきたが、人の道に反することもなく、いかがわしい新興宗教に嵌ることもなく、普通の人生を歩んだと思う。パンセに教えられた「心について考える」ということが、自分の基本にあったため、道を誤らないで済んだのかもしれない。もっとも、パンセはキリスト教に基づいており、私の考えは、仏教に基づいているので、私の人生の中で、パンセがそれほど大きな影響を持っていたわけではない。
 
パンセは、パスカルが考えた人の心に関するいろいろなことが、寄せ集め的に書かれている。本書では、パンセのいくつかの文章を取り上げて、パンセの雰囲気を説明するものだけれど、薄い本なので、パンセの全貌がわかるものではない。パンセに興味のある人は、全訳を手に取ってみると良いだろう。半分くらい読むと、飽きてくるかもしれない。

本の紹介ー弥生人はどこから来たのか 最新科学が解明する先史日本2024年07月22日

 
藤尾慎一郎/著『弥生人はどこから来たのか 最新科学が解明する先史日本』吉川弘文館 (2024/2)
 
 日本の水田稲作の始まり、弥生時代に変容する過程を、炭素14、酸素16,18比、DNA分析などの物理・化学的手法などを使って、明らかにした最新の研究。
 
 従来の説明では、水田稲作は、紀元前4世紀ごろ、朝鮮半島や中国南部から、九州北西部にもたらされ、そこから弥生時代が始まったとされていた。また、この時、少数の渡来人と縄文人が混血し、弥生人が作られたとされていた。水田稲作はその後200年ほどで、日本に広く伝わったと考えられていた。
 
 本書によると、このような従来の弥生時代観は完全に覆される。水田稲作は朝鮮半島から紀元前10世紀に九州北西部に伝わったこと、弥生人の祖先は、縄文人との混血よりも、むしろ渡来人の人口増加によることが大きいこと、水田稲作は数百年かけてゆっくり日本への伝搬したことが解明されている。
 
 佐倉にある歴史民俗博物館の展示では、弥生時代の説明が本書のようになっていて、かつての歴史教科書とは異なっていた。近年の研究成果に基づいているのだろう。

本-詭弁社会2024年07月29日


山崎雅弘/著『詭弁社会 日本を蝕む怪物の正体』祥伝社新書(2024/2)
 
著者の主張はその通りと同意できるのだけれど、読んでいて特に興味が持てる内容ではなかった。

本の紹介-誰も書かなかった統一教会2024年07月31日


統一教会の悪質性を、異なった視点から再確認できる好書
 
有田芳生/著『誰も書かなかった統一教会』(2024/5) 集英社新書
 
 安倍元総理が射殺されると、統一教会問題がマスコミをにぎわせた。著者は事件後、いち早く『改訂新版 統一教会とは何か』を上梓し、統一教会と政治の癒着関係を明らかにした。
 本書はそれに続くもので、安倍襲撃のいきさつの他、統一教会の歴史、北朝鮮との関係、世界日報編集長殺人未遂事件、朝日新聞社襲撃殺人事件を統一教会との関連で取り上げている。安倍射殺以降、統一教会問題がマスコミに盛んに取り上げられたが、多くは、政治家との癒着・信者の収奪だったので、本書の記述は、統一教会の全貌を知るうえで貴重だ。
 
ウクライナ・ナチス
 2014年、ウクライナのネオナチを中心に起こされたクーデターにより、人種差別・人権弾圧がウクライナの国是となった。また、ヤロスラフ・ステツコなど、第二次大戦中にナチスに協力し、ユダヤ人殺害に積極的に関与した者が称賛されている。ステツコは、第二次大戦終結後に海外に逃れ、国際反共団体の結集に尽力した。
 2024年3月、ウクライナ西部のテルノポリ州議会は、元ナチス親衛隊員でウクライナ系カナダ人に、ヤロスラフ・ステツコ記念名誉バッジを授与した。
 
 ウクライナのナチスと、統一教会の関係はあまり知られていないが、本書には以下の記述があり、文鮮明が国際反共運動にかかわる過程で、ステツコの役割が記載されている。
(P49)
朴軍事独裁政権下、教団は「勝共」に再編
 宗教団体を名乗る統一教会が、なぜ極めて政治イデオロギー色の強い「勝共」を活動の軸に据えるようになったのか。
 第2次世界大戦中、ウクライナの独立運動に参加していたヤロスラフ・ステツコがナチスドイツに逮捕され転向し、ユダヤ人の虐殺に手を染め、1946年に反共団体・反ボルシェビキ国家連合(ABN)を結成、ドイツで結成大会を開催する。1950年代後半には台湾をしばしば訪問し、中国国民党総裁で、国共内戦では毛沢東率いる中国共産党と戦った中華民国総統・蒋介石の言動に共鳴していた(『インサイド・ザ・リーグ」社会思想社)。
 同じころ、韓国・ソウルでは、韓国の李承晩大統領と中華民国の蒋介石総統の提案で、アジア人民反共達明皿(APACL)が1954年に結成される。奇しくも、同年は韓国で統一教会が設立された年だ。そして、APACLの動きに注目したステツコは、1958年にメキシコで開催された世界反共連盟発足準備会議に参加した。その後、ステツコの反共グループは共産圏の東欧から南米に逃れ、彼に帯同する国際的な反共グループが韓国で見出したのが文鮮明だった。当時、韓国では1961年に軍事クーデターで権力を掌握した朴正煕が「勝共」を掲げており、文鮮明と統一教会は韓国国内においても「勝共」という特別な役割を与えられ、再編される。
 一方、世界で胎動しはじめた反共団体はやがて合従連衡し、1966年、中華民国でAPACLを母体として世界反共連盟(WACL)の結成に結実する。創設時の中心メンバーは中華民国の蒋介石総統、韓国の朴正煕大統領、日本の大物右翼の笹川良一、児玉誉士夫、そして統一教会の文鮮明の5人。WACLはその後、中南米をはじめ世界各地の反共活動に資金や武器を提供し、テロ活動も行なっていく。
 こうした歴史的経緯があるので、韓国で統一教会が国際勝共連合を利用して展開した運動を、反共法を制定してまで共産主義に対抗していた朴正煕政権は当然のように庇護した。教団と政治の利害が一致したのだ。

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