ウクライナ・ロシア戦争(クルスク方面) ― 2025年02月12日
昨年8月、ウクライナ軍は突如ロシア領クルスクに侵入し、幅50㎞、深さ20㎞範囲を占領した。ここは僻地で、戦略的価値に乏しいため、ロシア軍の警備も手薄だった。ウクライナはここを占領した後どうするつもりだったのか不明だが、大方の予想通り、クルスク州派遣ウクライナ軍はじり貧となり、すでに、占領地の7割は奪還されている。ウクライナが占領した地域のうちでスジャは人口6000とそれほど僻地でもない。現在、ウクライナが占領している中で、大きい町はスジャのみ。ここが陥落するとクルスク占領ウクライナ軍は終わりとなる。
昨年12月中旬、ロシア軍はスジャ南側のMakhnovkaからウクライナ軍を追い出した。ここがロシアに落ちると、スジャの維持は大変になるが、ロシア軍はMakhnovkaを維持することなく撤退し、ウクライナ軍が支配するところとなった。
1月5日、クルスク東北部地域で、ウクライナ軍が新たな攻勢を始めたとの報道があった。しかし、この攻勢は二日で終結し、ウクライナの敗北に終わった。攻勢と言っても数個小隊か中隊クラスの軍が突出したもので、プロパガンダ効果以外の実質戦果が得られなくても当然だった。
2月6日、Makhnovkaから南東方向に向けて、ウクライナ軍の進軍があった。今度は、合計二個大隊規模と、それなりの兵力だったため、Cherkasskaya Konopel'ka、Fanaseevkaを占領した。両方とも非常に小さい集落。その東にあるUlanokは多少大きな集落であるが、ロシア軍に阻止された。現在、Fanaseevkaは、すでにロシア軍に奪回されたとの情報と、いまだにウクライナ軍が保持しているとの情報がある。Cherkasskaya Konopel'kaはいまでも、ウクライナ軍が支配している模様。
ここ数か月、ウクライナ軍は全線で敗北を続けていたが、今回のクルスク南東部は久しぶりにウクライナ軍の小勝利となっている。
しかし、スジャ北西9㎞のSverdlikovoはロシア軍の攻勢が活発で、ロシア軍はクロニャ川を越えて進軍しているとの情報がある。図の赤丸印の地点は道路の交差点であり、ここをロシア軍が制圧すると、クルスクウクライナ軍の補給は困難になる。Sverdlikovoとスジャの間には村はなく、Sverdlikovoが陥落するとウクライナ軍としては交差点の防衛は困難になる。
2月になってから、Pokrovsk方面でも、ウクライナ軍が多少の成果を上げている。これは、ここ数か月無かったことであるが、この原因として、ロシア軍が兵力の交代期にあることと、1月下旬の気温が多少高くて、雪が解けて泥濘状態になったため、ロシア軍の機械化部隊が活発でなかったことがあげられる。また、政治の動きと何らかのリンクがある可能性もあるが、今のところ分からない。
2/13追記
Cherkasskaya Konopel'ka、Fanaseevkaのウクライナ軍はすでに掃討された模様。ウクライナの進軍はいったい何だったのだろう。
Toretsk(ジェルジンスク)解放 ― 2025年02月08日
ロシア国防省はトレツクの解放を宣言した。
ここは、先月中旬には、ほぼ解放済みだったが、北に隣接するトレツカヤ鉱山とボタ山をウクライナ軍が抑えていたので、なかなか解放宣言が出されなかった。
ここは、先月中旬には、ほぼ解放済みだったが、北に隣接するトレツカヤ鉱山とボタ山をウクライナ軍が抑えていたので、なかなか解放宣言が出されなかった。
USAID ― 2025年02月06日

USAID(アメリカ合衆国国際開発庁)は非軍事の海外援助を行う政府組織との触れ込みで、世界各地で、政府転覆等の謀略活動を行っている。トランプはUSAIDの解体を行う見込み。
昨年末あるいは年初に、ドネツク西部のKurakhovoが解放された。写真の場所は、KurakhovoのUSAID事務所だったらしい。
Velikaya Novoselka解放 ― 2025年01月31日
数日前から、Velikaya Novoselkaが解放されたとの情報がある。ここに駐屯していたウクライナ第110旅団は完全に壊滅した模様。Velikaya Novoselkaは、ドネツク州の西端の僻地で、ドネツク州ウクライナ軍南西地区の防衛拠点だった。これほど早く、Velyka Novosilkaが陥落したのはどうしてなのか。物資・人員不足に加えて、ウクライナ兵の士気が低下しているのだろう。
なお、逃げ遅れたウクライナ兵が、軍服を脱いで民間人に偽装して地下室などに逃げ隠れているので、解放が完了したわけではない。
なお、逃げ遅れたウクライナ兵が、軍服を脱いで民間人に偽装して地下室などに逃げ隠れているので、解放が完了したわけではない。
本の紹介-学力喪失 ― 2025年01月30日
今井むつみ/著『学力喪失 認知科学による回復への道筋』(2024/9)岩波新書 新赤版 2034
横書きの本。
算数ができない子供、特に数直線の概念や、分数が理解できでいない、あるいは単位付き数が理解できていない原因を認知科学の立場で解明し、指導方法を提案している。理解できていない子供の中では、どこで躓いているのかは、子供によって異なる。これを解明するテストをいろいろと提示する。
算数の文章題ができない子供は、大きく分けて、算数ができない子供と、問題文が理解できない子供がいる。本書は、算数ができない子供に寄った対策で、問題文が理解できない子供対策は薄いように感じる。算数教育に特化したものならば、これもいいだろう。しかし、分数概念が理解できないことよりも、2~3行の文章が正しく理解できない方が、実社会では不都合が多いだろう。最近のネット右翼には、文書を理解する能力に欠けるため、他人の文を勝手解釈して、誤った言説を振りかざす者も多い。このような社会の弊害を少なくするためにも、2~3行の文章が正しく理解できる能力を養ってほしい。
本の紹介-プーチン戦争の論理 ― 2025年01月29日

下斗米伸夫/著『プーチン戦争の論理』(2022/10)インターナショナル新書
ロシア関連地域の政治史が専門の下斗米伸夫・法政大学名誉教授によるロシア・ウクライナ戦争の解説。戦争開始後8か月で出版された本なので、その後の戦争の経緯や、国際社会のかかわりなどは記述がない。
著者はロシアによる侵攻には批判的であるが、単にロシア悪者論で思考停止することなく、本書はこの戦争を理解するために、ウクライナ現代政治史、ロシア現代政治史のほか、ロシア史の観点を含めて、総合的に戦争を俯瞰しており、好感が持てる。
戦争開始当時、テレビには廣瀬陽子先生をはじめ、ロシア・ウクライナ政治にはあまり詳しいとは思えない人たちが、ロシア悪者論の一方的言説を流していたけれど、そのような解説に比べて、本書の著者はロシア及び関連地域政治史の専門家だけって、客観的で冷静な判断になっている。ウクライナにはバンデラ・ステツコらによるナチス協力の歴史があり、この関係でプーチンの主張の中にはウクライナ・ネオナチ問題がある。本書はウクライナの歴史に関する記述が薄いため、ネオナチ問題理解には不足を感じる。
ウクライナ-ロシア戦争 ― 2025年01月23日
ロシアの攻勢により、各地でウクライナ軍が敗北している。
クルスク
1月に入って、スジャ南のMakhnovkaをロシアが制圧したが、ウクライナが奪回した模様。スジャが陥落すると、クルスクのウクライナ軍は終わるので、必死の抵抗を続けているようだ。ただし、スジャの北15kmのMalaya Loknyaあたりは、ロシアの攻勢により、ウクライナ軍は支配地域を失っている。総じて言えば、ロシアが優勢だが、戦線は遅々としている。
チャソフヤール(Chasov Yar Chasiv Yar)
チャソフヤールはバフムトの西10㎞、Toretskの北20㎞、コンスタンチノフカの北東10㎞にある。
中心部の耐火レンガ工場と、その西隣の高層ビル群の攻防が焦点。耐火レンガ工場はロシア軍が制圧した後、ウクライナ軍が奪回するも、再びロシア軍が制圧。この後、ウクライナ軍が一部を再奪回したとの情報もあったが、現在は、ほぼ全体をロシア軍が制圧している模様。
西隣の高層ビル群は、おおむねウクライナ軍が支配しているが、南部をロシア軍が制圧している。さらに、北部隣接地域はロシア軍が支配しており、高層ビル群の西は池になっているので、ウクライナ軍は包囲された形になっている。こうなると、陥落は時間の問題と言ってよいだろう。
ポクロフスク(Pokrovsk)
ロシア軍による包囲が進んでいる。
ポクロフスクの西にあるUdachneの一部をロシア軍が制圧したが、ウクライナ軍が追い出したとの情報がある。Udachneを取られると、ドニエプロペトフスク州境界まで、小集落が一つあるだけなので、ウクライナ軍としては死守したいところだが、物資・人員不足のウクライナ軍が持ちこたえるのは無理だろう。
Velyka Novosilka
今月中ごろ、ロシア軍がVelyka Novosilkaに隣接するVremivkaに入ったとの情報があった。数日後、Vremivkaはロシア軍が制圧し、いまではVelyka Novosilkaの東部から侵入している。ウクライナ兵は北西部の川を使って、なんとか逃げだしている模様。これほど早く、Velyka Novosilkaが陥落寸前になったのはどうしてなのか、理解できない。物資・人員不足に加えて、ウクライナ兵の士気が低下しているのだろうか。
追記(1/24):
Velyka Novosilkaのウクライナ軍が南北に分断され、南側のウクライナ軍が包囲されたとの情報がある。Velyka Novosilkaの南部には高い建物はほとんどなく、ここを死守する理由はあまりないだろう。南部ウクライナ軍が包囲されたとの情報が事実ならば、包囲される前に、なぜ脱出しなかったのか。よほどの作戦ミスだろうか。
クルスク
1月に入って、スジャ南のMakhnovkaをロシアが制圧したが、ウクライナが奪回した模様。スジャが陥落すると、クルスクのウクライナ軍は終わるので、必死の抵抗を続けているようだ。ただし、スジャの北15kmのMalaya Loknyaあたりは、ロシアの攻勢により、ウクライナ軍は支配地域を失っている。総じて言えば、ロシアが優勢だが、戦線は遅々としている。
チャソフヤール(Chasov Yar Chasiv Yar)
チャソフヤールはバフムトの西10㎞、Toretskの北20㎞、コンスタンチノフカの北東10㎞にある。
中心部の耐火レンガ工場と、その西隣の高層ビル群の攻防が焦点。耐火レンガ工場はロシア軍が制圧した後、ウクライナ軍が奪回するも、再びロシア軍が制圧。この後、ウクライナ軍が一部を再奪回したとの情報もあったが、現在は、ほぼ全体をロシア軍が制圧している模様。
西隣の高層ビル群は、おおむねウクライナ軍が支配しているが、南部をロシア軍が制圧している。さらに、北部隣接地域はロシア軍が支配しており、高層ビル群の西は池になっているので、ウクライナ軍は包囲された形になっている。こうなると、陥落は時間の問題と言ってよいだろう。
ポクロフスク(Pokrovsk)
ロシア軍による包囲が進んでいる。
ポクロフスクの西にあるUdachneの一部をロシア軍が制圧したが、ウクライナ軍が追い出したとの情報がある。Udachneを取られると、ドニエプロペトフスク州境界まで、小集落が一つあるだけなので、ウクライナ軍としては死守したいところだが、物資・人員不足のウクライナ軍が持ちこたえるのは無理だろう。
Velyka Novosilka
今月中ごろ、ロシア軍がVelyka Novosilkaに隣接するVremivkaに入ったとの情報があった。数日後、Vremivkaはロシア軍が制圧し、いまではVelyka Novosilkaの東部から侵入している。ウクライナ兵は北西部の川を使って、なんとか逃げだしている模様。これほど早く、Velyka Novosilkaが陥落寸前になったのはどうしてなのか、理解できない。物資・人員不足に加えて、ウクライナ兵の士気が低下しているのだろうか。
追記(1/24):
Velyka Novosilkaのウクライナ軍が南北に分断され、南側のウクライナ軍が包囲されたとの情報がある。Velyka Novosilkaの南部には高い建物はほとんどなく、ここを死守する理由はあまりないだろう。南部ウクライナ軍が包囲されたとの情報が事実ならば、包囲される前に、なぜ脱出しなかったのか。よほどの作戦ミスだろうか。
鮭皮製 ― 2025年01月22日
樺太玉 ― 2025年01月21日
現在、東京国立博物館本館のアイヌ・琉球展示は樺太アイヌ関連の物が多いように感じた。
下写真は、北海道アイヌの樺太玉。
樺太玉;北海道アイヌ(室蘭)19世紀
江戸時代、アイヌの人たちはガラス玉が好きだった。このため、樺太経由で大陸からガラス玉が流入していたことは間違いないが、江戸など日本からもガラス玉が流入していた。このため、樺太渡来の玉か、日本渡来の玉かを見分けることは難しいはず。樺太アイヌの物ならば、樺太玉の可能性が高いが。東博の説明には『樺太玉』と書かれているので、樺太渡来と判断したのだろう。
下写真は、手元にあるアイヌ玉。左は比重2.4、右は比重2.5とどちらもソーダガラスと同程度。
樺太渡来か、江戸時代の日本渡来か、あるいは大正時代のアイヌブームの時に作られたお土産品かなど、判断がつかない。