本ーサガレン2020年07月03日

 
梯久美子/著『サガレン 樺太/サハリン 境界を旅する』 KADOKAWA (2020/4)
 
 著者はノンフィクション作家。著者の2度のサハリン旅行の記録。著者は鉄道ファンのようで、サハリンの鉄道に対する記述が多い。
 前章は北サハリンのノグリキまでの列車旅行とノグリキで計便鉄道の廃線跡を訪ねた時の記録。紀行文のほかに、林芙美子の『下駄で歩いた巴里』への言及がある。
 後章は宮沢賢治の話が中心。

本ー映し出されたアイヌ文化2020年07月02日

  
内田順子/著『映し出されたアイヌ文化』吉川弘文館(2020.3)
  
国立歴史民俗博物館は英国人医師マンローが1930年代に二風谷で撮影した映画や写真を所蔵している。
本書は、マンローが残した写真に解説を施したもの。写真が主体。

本の紹介-尖閣諸島をめぐる「誤解」を解く2020年06月30日


笘米地真理/著『尖閣諸島をめぐる「誤解」を解く 国会答弁にみる政府見解の検証 』日本僑報社 (2016/7)

 現在、日本政府は「尖閣諸島は日本固有の領土であり、領土問題は存在しない」と説明している。このため、多くの日本人は、昔から日本はこのように主張してきたのだろうと思っている。

 本書は著者の修士論文に加筆したもの。日本政府の尖閣に対する国会答弁を中心に、日本政府の尖閣主張の変遷を解明した。その結果、戦後、日本政府が尖閣領有を主張するのは、周辺海底で原油の埋蔵が推定されるようになって以降のことで、それ以前、日本政府は尖閣をよく知らなかったことや、固有の領土との説明をしていないことを明らかにしている。
 本書は学術論文がベースとなっているので、内容も学問として事実を解明することが目的であって、一方的な主張をするものではない。出典も詳細に記されている。

   本書、第一章は国会答弁を調査することにより、日本政府の尖閣の説明の変遷を解明している。ここでは、日本政府が尖閣の領有を主張するようになるのは、石油資源問題との関連が最初であることが示される。
●1955年2月 立川漁政部長
 ヘイル演習場と漁釣島だろうと思います。
●1955年3月 伊関国際協力局長
 沖縄の南でございますね。私の方もあの点は詳しいことは存じていません。
●1955年7月 中川アジア局長(第三清徳丸事件の答弁)
 琉球の一番南の方の台湾に近い島、非常に小さな島のようでありますが、武装した船によって・・・。
●1955年12月 重光外相(第三清徳丸事件の答弁)
 この問題が今日わが方の希望するように解決したという報告をまだ受けておらぬことを遺憾といたします。
●1967年6月20日 塚原総務長官(尖閣に台湾人が住み着いたとの報道に関して)
 新聞で見た程度でありまして、私は何らの報告を受けておりません。
●1967年7月 佐藤首相(尖閣に台湾人が基地を設けているようだとの件に関して)
 これはやはり施政権者から話さすのが本筋だ、かように思います。
●1968年8月 東郷アメリカ局長(尖閣に台湾人が基地を設けている件に関して)
 尖閣列島その他の領海侵犯の問題については、・・・米政府当局に対しまして善処方を申し入れてきておるわけでございます。・・・今日まで満足な結果はまだ得られておりません。

 尖閣周辺の海底に、大量の石油が存在する可能性がわかると、日本政府はにわかに尖閣の領有を主張するようになった。

●1970年4月 山中総務長官
 石油資源の問題に関連をいたしましては、尖閣列島の海底資源の問題がございます。・・・私どもとしては、明らかに石垣島に属する島でございまするし、それらの点については、資源について、二百メートル以上でありますといろいろと議論も出るかもしれませんけれども、大体において異論は出ないものという判断でもって進めておる次第でございます。
●1970年8月10日 愛知外相
 尖閣列島については、これがわがほうの南西諸島の一部であるというわがほうのかねがねの主張あるいは姿勢というものは、過去の経緯からいいまして、国民政府が承知をしておる。

   以降、日本政府からは、一貫して日本の領土であるとの主張が続く。

 第二章は1970年以降どのような経緯で日本の領土主張がなされてきたかを文献調査により明らかにしている。それによれば、国士館大学教授・奥原敏雄らによる南方同胞援護会「季刊沖縄第56号」の研究が元になっている。また、日中間での棚上げ合意があったことを説明している。

 第三章では、日本政府の公式見解と実務対応の相違、および「固有の領土」論の問題点について記述されている。
 最終第四章では、尖閣問題の解決策の提言。 

本-親が創価学会2020年06月27日


島田裕巳/著『親が創価学会』イースト新書 (2019/4)

 宗教学者・島田裕巳の著作。特に興味が持てる内容ではなかった。
 両親が創価学会の場合、子供も当然に入信させられるが、結婚の時に結婚相手との間で問題が起こることがある。片親が学会員の場合子供の成長過程に両親の対立が影響する。
 本書では、創価学会とはどんなところかを示した後、創価学会員を親に持った子供に起こる問題を説明している。しかし、本書で触れられた内容は、一般に広く知られたことではないだろうか。特に目新しいものは感じなかった。

 本書の最後のところに以下の記述がある。
 家のあり方が、そこに育つ子供に多大な影響を与えるということは、決してなくなっていない。…「親が創価学会」ということを「親が歌舞伎役者」「親が農家」「親が自営業の社長」などと置き換えてみれば、問題が実は普遍的なものであることが分かってくるのではないだろうか。
 本書を読んで何となく物足りないものを感じたが、この一文を読んで物足りなさの原因が分かったような気がする。「親が歌舞伎役者」「親が農家」「親が自営業の社長」は全て職業継承の問題だ。「親が浄土真宗の寺の住職」の場合、そこに育つ子供の職業選択に多大な影響を与えるのは当然だ。しかし、「親が浄土真宗の檀家」「親が曹洞宗の檀家」などは、子供に全く関係ないことだろう。
 「親が創価学会員」と「親が浄土真宗の檀家」では、なぜそこに育つ子供への影響が違うのか。

本の紹介ー南極に立った樺太アイヌ2020年06月24日


佐藤忠悦/著『南極に立った樺太アイヌ 白瀬南極探検隊秘話』青土社 (2020/4)

2004/6にユーラシア・ブックレットから出版された『南極に立った樺太アイヌ―白瀬南極探検隊秘話 』の増補新版。
 
 白瀬中尉率いる南極探検隊は、明治45年(1912年)に南極に上陸し、南緯80度地点にまで到達した。この探検にはカラフト犬が参加し、犬の世話係として二人の樺太アイヌが南極探検に参加した。
 本書は第1章で樺太アイヌと二人のはなし、第2章は樺太アイヌを中心とした南極探検のようす、第3章は二人の樺太アイヌ及び白瀬中尉の南極探検後の話。
 
 本書は参考文献も豊富で、著者が白瀬中尉の南極探検に相当な知識を持っていることがうかがわれる。でも、私には、何となく読みにくい文章に感じた。

本の紹介-中国の「爆速」成長を歩く2020年06月23日

 
西牟田靖/著『中国の「爆速」成長を歩く』イースト・プレス (2020/3)
 
 フリージャーナリスト・西牟田靖の近著。
 著者は二十数年ぶりに中国を取材した。本書は、著者の最近の取材と、かつての取材とを比較して、中国の発展の状況を記したもの。内容は、「開発」「食べ物」「格差」「交通」「お金」「マナー」「産業」「不動産」「出版とIT」「治安維持」「観光」「民族」と12の章に分かれ、それぞれで、2度の取材旅行の比較をしている。内容の多くは著者自身の取材であるが、一部他の文献による解説を加えている。
 本書は取材がメインで事実を淡々と客観的に記載しており好感が持てる。また文章も読みやすい。

本の紹介ーアイヌ絵巻探訪2020年06月21日

 
五十嵐聡美/著『アイヌ絵巻探訪 歴史ドラマの謎を解く』北海道新聞社 (2003/04)
 
宝暦年間に絵師小玉貞良によるアイヌ絵が流行した。本書は、主に小玉貞良のアイヌ絵の解説。
小玉貞良のほかに、村上島之允や蠣崎波響なども取り上げている。

本の紹介ー教育は何を評価してきたのか2020年06月20日


  本田由紀/著『教育は何を評価してきたのか』(2020.3)岩波新書

  明治以降の日本の教育の枠組みを「垂直的序列化」と「水平的画一化」ととられ、明治以降の教育行政を説明している。
  以下に本の表紙裏に書かれている紹介文を記載する。
 なぜ日本はこんなにも息苦しいのか。その原因は教育をめぐる磁場にあった。教育が私たちに求めてきたのは、学歴なのか、「生きる力」なのか、それとも「人間力」なのか――能力・資質・態度という言葉に注目し、戦前から現在までの日本の教育言説を分析することで、格差と不安に満ちた社会構造から脱却する道筋を示す。
 新教育基本法に掲げられている教育の目的に「真理を求める態度を養う」とある。一般に「態度」とは「表情・身ぶり・言葉つきなど身体の行為」のことをいうので、「真理を求める態度」とは不思議な表現だ。「態度」の用語は教育行政では独特の使い方をしているようだ。

本の紹介ー『華厳経』『楞伽経』2020年06月18日

 
中村元/著『大乗仏典Ⅳ 発展期の大乗経典 (こころを読む)』東京書籍 (1988/03)
中村元/著『『華厳経』『楞伽経』 (現代語訳大乗仏典5)』東京書籍 (2003/11)
 
華厳経と楞伽経の解説。経の一部を書き下し文で示し、注釈、現代語訳を付けている。このような形式で、華厳経の思想を示しているのであるが、著者が抜き出した部分が、華厳経全体の中でどのような位置にあるのかが分からない。著者の華厳経理解は理解できるとしても、それが華厳経の理解でよいのか、何となく読んでいて不完全燃焼の思いが残る。
 
2つの本は、旧版と新版。新版には、最終章に特論「人類の思想史における華厳経」が付録として付け加えられている。

本の紹介ー『人間革命』の読み方2020年06月07日

 
島田裕巳/著 『『人間革命』の読み方 』KKベストセラーズ (2017/12/9)

 宗教学者・島田裕巳による『人間革命』の解説書。

 『人間革命』は創価学会2代目会長・戸田城聖の伝記で、創価学会の正史となっている。著者は、創価学会3代目会長の池田大作とされる。

 本書は、『人間革命』の概要のほか、『小説・人間革命』『人間革命第2版』『新・人間革命』や『映画・人間革命』にも触れられる。
 『小説・人間革命』は戸田城聖・自身による伝記小説。『人間革命第2版』は池田大作が日蓮正宗と対立した後、都合の悪い部分を書き換えた改定新版で、現在市販されているもの。『新・人間革命』は池田大作の伝記。『映画・人間革命』は丹波哲郎主演の映画。

 本書は、200ページ強の新書本で、創価学会に詳しくない一般読者を対象としたものなので、深い考察はないが、『人間革命』や『小説・人間革命』がどんなものであるかを一通り理解する上で有益な本である。記述の内容は、宗教学者として客観的に書かれている。このため、池田大作を妄信している創価学会信者や創価学会と対立する新興宗教信者には大いに不満な記述かもしれない。なお、本書は『人間革命』の説明であって、創価学会一般の説明ではない。

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