本の紹介―北海道ぶらり歴史探訪ルートガイド2019年05月25日

 
北海道の歴史を見て歩く会/著『北海道ぶらり歴史探訪ルートガイド』メイツ出版 (2019.3)
 
 北海道の歴史に関連した名所・旧跡などの観光ガイド。普通の観光ガイドは、食べ物屋やショッピングなどがメインになっているが、本書にはそのようなものはない。
 取り上げている地区に偏りが大きく、札幌が全体の半分程度で、それ以外に小樽・函館などもある。札幌・小樽・函館及び周辺地域を除くと、網走と平取のみ。旭川・釧路・根室などはない。

本の紹介-安倍官邸vs.NHK 森友事件をスクープした私が辞めた理由2019年05月24日

  
相澤冬樹/著『安倍官邸vs.NHK 森友事件をスクープした私が辞めた理由』 文芸春秋 (2018/12)
  
 かなり話題になっている本。記者の執筆のため文章は読みやすい。
 NHKの森友問題取材の中心だった元NHK記者による森友報道の経緯。
 著者がNHK記者時代に森友問題の記事を上げると、小池英雄報道局長を中心とする勢力によって、記事が報道されなかったり、意図が弱められたりしてきたことが、いろいろと書かれている。NHKの記者は東大出の秀才が多い中、小池英雄報道局長は学習院大卒にもかかわらず、報道局長に出世した人なので、安倍政権との距離が相当近い人なのだろうか。
 こういう報道機関に受信料払いたくないよね。

本の紹介-アベ友トンデモ列伝2019年05月15日

 
適菜収/森功/山田厚史/別冊宝島編集部/ほか『アベ友トンデモ列伝 「魔の3回生」から「御用作家」まで安倍政権に巣食う「愉快な仲間たち」』宝島社(2018/12)
 
 安倍内閣は自分の取り巻きを優遇してきたので、変なのがいっぱい現れている。本書は、こうした問題の具体的事例を紹介するもの。多くは、よく知られたことではあるが、こうしてまとめて読むと、安倍内閣の異常さが際立つ。
 本書の最初に取り上げているのは、杉田水脈のLGBT差別発言を擁護した新潮45が廃刊になった話。次が百田尚樹、そして櫻井よしこ、森友と続く。
 こうしてみると、ロクなのがいないなー。
 
 参考のために、目次を記載する。
  
目次
 
『新潮45』休刊騒動の核心
「自称文芸評論家」小川榮太郎の大罪“便所の落書き”を放置すればメディアの致命傷になる
 
出版界に『殉愛』騒動再び
「日本人の美徳」を毀損する百田尚樹ベストセラー『日本国紀』のパクリ疑惑
 
「強制連行」をめぐる主張は「でっちあげ」だった
「従軍慰安婦訴訟」で暴かれた櫻井よしこ氏のデタラメ「捏造裁判」
 
「保守」の正体をあぶり出した「森友」事件
「籠池マネー」に群がった政治家・保守文化人たちのえげつない「変節」
 
告発された「安倍ベッタリ記者」の教訓
封印された「レイプ事件」「逮捕」を免れた元TBS記者「山口敬之」が論壇から消えるまで
 
2012年大量当選組は自民党「劣化」の象徴
「安倍勇退」で絶滅が囁かれる「魔の3回生」たちの末路
 
自殺、逮捕、証人喚問、そして次官更迭…
疑惑の女王「片山さつき」に見る「大蔵省昭和57年入省組」呪われた恐怖の伝説のすべて
 
130億円の税金をさらった「加計学園」
国民を「だまし続けて」2年間「総理腹心の友」加計孝太郎と官邸官僚たちの「罪と罰」
 
限界近づく「アベ友夫婦」の賞味期限
加計学園問題で「黒幕」を演じた「下村博文」の“改憲”大暴走
 
世界遺産登録で「ゴリ押し」推進
究極の肩書き「首相の幼馴染み」内閣官房参与「加藤康子」女史と怪しいブレーンたちの来歴
 
森友スクープ記者がNHK辞職!
「大本営メディア」を宣言した「読売・産経・NHK」記者たちの苦悩
 
不安視される「大企業優遇政策」の限界
乳・晋太郎の代から続く財界の華麗なる「アベ友人脈」
 
「ポスト安倍」候補と囁かれる政権の黒幕
「アベ友リスク」を管理し続ける不動の「ミスターナンバー2」菅義偉官房長官の「来歴」と「野心」
 
「巻末コラム」アベノトリビア
先祖、結婚、後継者問題までいまさらきけない「安倍晋三」15のキーワード

本―幕末会津藩松平容保の慟哭2019年05月13日

  
鈴木荘一/著『幕末会津藩松平容保の慟哭 北方領土を守った男たちの最期』 勉誠出版 (2018/10)
   
幕末から明治にかけて、京都守護をになった会津藩は歴史に翻弄される。本書は、この時の歴史がメイン。
それより前、文化5年に会津藩は樺太・宗谷を警備したので、この点にも少し触れられている。
なお、著者は吉田松陰に対して否定的。

本の紹介ーガイサンシーとその姉妹たち2019年05月05日

 
班忠義/著『ガイサンシー(蓋山西)とその姉妹たち』梨の木舎 (2006/09)
 
 独立混成第四旅団は、日中戦争で日本軍が占領した山西省に派遣され治安維持にあたった。この旅団は現地中国人女性を拉致監禁し、連日連夜に渡って激しい輪姦を繰り返した。
 本書は、日本軍による輪姦の状況を聞き取り調査したルポルタージュ。著者は何度も現地に入って調査しており、本書の記述は調査ごとのルポになっている。著者は上智大学大学院、東京大学大学院で学んだジャーナリスト・ドキュメンタリー作家。
 
 本書のタイトル「ガイサンシー(蓋山西)」とは「山西省随一の美女」の意味。山西省孟県西部に住む「候冬娥」のことで、美人の誉れ高く「蓋山西」と呼ばれていた。
  
 独立混成第四旅団の部隊は蓋山西のほかに何人もの女性を拉致し部隊に隣接する小屋に監禁し、昼は兵士がかわるがわる強姦し、夜は部隊長・曹長・情報班長らが強姦した。日本軍兵士による拉致は、抵抗する女性を数人の兵士が引きずったり、逆さづりに担ぐなどした、強引なものだった。また輪姦により体を壊しても、輪姦が止む日はなかった。蓋山西は立つこともできないほど体を壊すと、ようやく解放された。拉致監禁され性奴隷にされた女性の中には、親族が高額の金を払って解放されたものも多い。
 
 独立混成第四旅団の部隊による組織的な輪姦が起こったきっかけとして、本書では「百団大戦」を挙げている。百団大戦とは、昭和15年8月に、八路軍が大兵力を動員し日本軍に対し一斉攻撃を行った戦いをいう。この攻撃に対して、日本軍は大規模な八路軍掃討作戦を発動し、独立混成第4旅団は「敵性ありと認めた一部の住民の殺害」を命じた。この命令に従って、中国人美女を「敵性あり」と口実をつけ、拉致監禁し輪姦を繰り返したものだったのだろう。性奴隷にされた女性の中には初潮前の少女もいた。
 
 2011年12月10日、NHKで『証言記録 兵士たちの戦争 中国華北 占領地の治安戦~独立混成第4旅団~』が放映された。ここでは「戦争が長期化する中で、一部の将兵の間で軍紀の乱れが目立つようになる、司令部は軍紀の徹底を再三にわたり指示したが、広大な地域に分散配置された部隊の末端にまで徹底することは困難だった」とし、さらに、旧日本軍人により「強姦は禁止されていた」との証言が語られている。これでは、一部部隊の末端兵士の不正行為だったかのように問題が矮小化されてしまっている。
 しかし、蓋山西は末端兵士に強姦されたのではなくて、部隊長の命令による性奴隷化だった。本書には、旧日本軍兵士による証言として、末端兵士の中には強姦することを嫌がるものもいたが、古参兵の命令により強姦したとの証言も記載されている。軍人勅諭には『下級のものは、上官の命を承ること、実は直に朕か命を承る義なりと心得よ』とあり、下級の者はたとえ殺人命令、強盗命令、強姦命令であっても、それを天皇陛下の命令として実施する必要があった。蓋山西らに対する性犯罪では、末端兵士は上官命令で強姦したのであって、末端兵士の暴走ではなかった。

本の紹介-【増補】日ソ国交回復秘録 北方領土交渉の真実2019年05月03日

  
松本俊一/著、佐藤優/著『【増補】日ソ国交回復秘録 北方領土交渉の真実』朝日新聞出版(2019/3)
 
 1956年の日ソ国交回復の時の外交の責任者の一人だった松本俊一は、十年後に「モスクワにかける虹」を朝日新聞社から出版した。この本は交渉経過を詳しく記したものである。
 その後しばらく絶版だったが、2002年「ゆまに書房」から復刻された。2012年、佐藤優は「モスクワにかける虹」に解説を付して、「日ソ国交回復秘録 北方領土交渉の真実」の書名で朝日選書より出版した。2019年、さらに解説を付して、増補版として出版したものが本書である。
 
 本書の内容は次の通り
  松本俊一/著「モスクワにかける虹」と同じ内容。p11~p264
  日露間領土問題の歴史に関する共同作成資料集(1992年版)(日本国外務省、ロシア連邦外務省)日本語版 p265~p330
  日露間領土問題の歴史に関する共同作成資料集(2001年版)(日本国外務省、ロシア連邦外務省)日本語版 p331~p364
  佐藤優の選書版解説 p365~p424 
  佐藤優の増補版解説 p425~p452
 
 安倍・プーチン会談以降、歯舞・色丹の二島返還で解決しそうな雰囲気がある。佐藤優の増補版解説はこれに対応したもの。
 松本俊一による日露国交回復交渉の過程を読めば、2島返還以外にはないことが分かるが、選書版解説もそのような立場での解説だ。増補版解説は選書版解説が現実的になった状況を説明するもの。
 
 なお、日露間領土問題の歴史に関する共同作成資料集(1992年版)(2001年版)は外務省のホームページで公開背れている。
  https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/hoppo/ryodo.html
   
また、北方領土問題の解説は以下をご覧ください。
http://www.ne.jp/asahi/cccp/camera/HoppouRyoudo/index.htm
http://www.ne.jp/asahi/cccp/camera/HoppouRyoudo/Yasashii.htm

本の紹介-オウム真理教事件とは何だったのか?2019年04月26日

 
一橋文哉/著『オウム真理教事件とは何だったのか? 麻原彰晃の正体と封印された闇社会』PHP研究所 (2018/7)
 
 2018年7月6日、松本智津夫らオウムの主だった幹部の死刑が執行された。本書は処刑後に緊急出版されたオウム事件の解説書。
 第1章・第2章で、松本智津夫の生い立ちから始まって、オウム真理教が凶悪化し、逮捕に至る状況を説明している。オウム真理教暴走の原因については松本智津夫の問題との説と、理系出身の高学歴幹部たちが暴走したとの説があるが、本書は松本原因説に立っている。松本智津夫は宗教を始める前から暴力団幹部と懇意だったこと、詐欺を指南した人がいたことなどの説明がある。第1章には松本智津夫逮捕の様子も詳しい。
 第3章はオウム真理教武装化に対するロシアコネクションの役割。エリツィン時代のロシア最高幹部の一人であるルスラン・ハズブラートフとの癒着関係が指摘されている。
 第4章は村井殺害の話、第5章は国松長官狙撃の話。どちらも詳しいことが明らかになっているわけではない。

本の紹介-増補 南京事件論争史2019年04月18日

 
笠原十九司/著『増補 南京事件論争史』(2018.12)平凡社
 
 2007年に出版された本の増補改訂版。
 2007年は「南京虐殺がなかった」とする説の破綻がほぼ確定的となった年だった。「南京虐殺なかった」説を唱える人は、匿名の怪しい人、神主、ギャグマンガ家など、歴史学者でない人たちが多かった。そうした中、亜細亜大学教授・東中野修道は「南京虐殺なかった」説を唱える歴史学者として脚光を浴びていた。しかし、東中野修道の南京事件研究にたいして、名誉棄損であるとの訴えがなされ、2007年に下された判決では「学問研究の成果というに値しないと言って過言ではない」との理由で、東中野修道に損害賠償支払いが命じられた。
 亜細亜大学教授・東中野修道の「南京虐殺なかった」説の手法は、彼の嫌う資料の中に、少しでも疑問点があると、それを誇張して、すべての資料が虚偽であるかのように吹聴し、彼の妄想が真実であるとの主張をするものだった。本書においても同様な指摘がなされている(P245)。また本書に指摘はないが、東中野修道の説は写真の検証に対する無知が露呈するなど、致命的な欠陥が明らかになり、東中野修道説は破綻した。
 
 本書は2007年に出版された本に加えて、それ以降の状況が加筆されている。第7章「2007年」から第9章「2010年代後半」まで、ページ数にして74ページになる。
 
 「南京虐殺なかった」説の破綻が歴史学上は明白になった後、2007年以降は、自民党政府、特に安倍政権による、強引な政治介入の時代になった。南京大虐殺をモチーフとした映画を上映禁止としたり、教科書検定で政治介入するなど、政治主導による南京虐殺否定論がすすめられている。
 さらに、日中両国政府主導で実施された、北岡伸一・東大名誉教授らを中心とした日中歴史共同研究の成果の中で、日中共に南京虐殺を史実として認定されると、これを無視する態度をとるなど、明白となった史実を無視する傾向が続いている。
 このような右翼・自民党に対して、南京事件の真相解明の研究も進んでいる状況が示されている。
 なお、東中野修道が南京事件論争から退場した後、立命館大学名誉教授・北村稔が「なかった」派の論客となったと思っていたのだが、彼の言説も否定されたようだ。現在は、評論家の阿羅健一が論客のようだ。歴史学研究として南京虐殺が認定された後でも、評論ならば妄想でも何でもありなので、評論家ではちょっね。
 
 p325~p330に南京事件否定派が通州事件へシフトしているとの記述がある。通州事件とは、日本の傀儡政権に雇われた中国人が反乱を起こして、麻薬密売関係者等、日本人・朝鮮人を殺害した事件であるが、大日本帝国政府は、歴史全体を見ることなしに「中国人が日本人を殺した」として、敵愾心を煽り立てるのに利用した。
  
 日本軍は阿片を中国に密売して戦費を調達していたため、害毒の大きいケシの新種改良が行われた。現在、東京都薬用植物園では、このケシを見ることができる。美しい花で、一見の価値があります。5月中旬が見ごろです。
 
 
旧版については、以下に感想を書きました。
http://cccpcamera.asablo.jp/blog/2008/01/06/2548242
 
通州事件については以下に解説を書きました
http://cccpcamera.asablo.jp/blog/2018/07/29/8928254
http://cccpcamera.asablo.jp/blog/2018/08/06/8934331
http://cccpcamera.asablo.jp/blog/2006/09/10/518422
 
東京都薬用植物園のケシの花の写真はこちら
http://cccpcamera.asablo.jp/blog/2010/05/16/

本の紹介ー縄文の思想2019年04月14日


瀬川拓郎/著『縄文の思想』 講談社現代新書 (2017/11)

 アイヌ古代史が専門の瀬川拓郎教授による縄文文化の解説。アイヌ文化など北海道の文化と関係した記述が多い。
 本書に記載されている内容は、考古学の定説とはいいがたいものが多い。それらが、著者の思い入れなのか、定説に近いものなのか、考古学界の動向を知らないものには判断できない。
 縄文時代が弥生時代に代わっても、縄文文化をになった人たちの中には、弥生人にはならずに「海民」として、縄文文化を受け継いだとしている。4世紀から13世紀ごろの北海道北部海岸地域には、アイヌとは別な種属であるオホーツク人がいたことが知られている。縄文人の末裔である「海民」とオホーツク人との交流を指摘している。なかなか興味の持てる指摘だが、6世紀には、渡来系の人が群馬県など内陸部にも進出しているので、オホーツク人と交流があった人がいたとしても渡来系の可能性もあり、縄文人の末裔と考えるには無理があるような気がする。
 歴史素人の私には、なんとも判断できない本だ。参考のため、目次を掲載しておきます。


はじめに
 生き残る縄文/なぜ共通する神話・伝説があるのか/周縁・まれびと・修験者/アクチュアルな生の思想/なぜいま縄文なのか

序章 縄文はなぜ・どのように生き残ったか
 縄文はなぜ・どのように生き残ったか/文化とヒトの弥生化/縄文の継承と変革/閉ざしつつ開く/本書の構成第一章/本書の構成ー第二章/本書の構成-第三章/本書の構成ー第四章

第一章 海民と縄文弥生化のなかの縄文
 1 残存する縄文伝統
 現代に残る縄文習俗/海民と抜歯/イレズミ・縄文・ケガレ/縄文人的な弥生人/隼人に似る人びと/糸満漁民と縄文/なぜ白人渡来説が唱えられたのか/九州西海岸のアイヌ語地名/アイヌ語は縄文語か/隼人言葉のなかのアイヌ語
 2 海民の誕生
 貝殻と縄文ネットワーク/海民の誕生/九州へむかう縄文人/非モノカルチャーとしての縄文/出雲方言と東北北部方言からみえること

第二章 海民とアイヌ 日本列島の縄文ネットワーク
 1 海民のインパクト
 生態系からみた北海道/「旧石器的生業体系」の社会/「あわい」に生きる/続縄文人の劇的な変化/なぜ命がけの漁なのか/量から質へ/威信の可視化/列島を往来する海民/海民のインパクト
 2 交差する北の海民・南の海民
 古墳社会との交流/交流を担ったのはだれか/礼文島でみつかった刀装具/海民の刀/南下する北の海民/オホーツク人と続縄文人/オホーツク人と古墳社会の祭器/オホーツク人と海民
 3 離島の墓に眠るのはだれか
 奇妙な墓/さまざまな時代と産地の玉/葬られたのはオホーツク人か/大陸起源説を疑う/海民独特の葬法/被葬者を推理する/奥尻島でおこなわれた海民の祭祀/阿曇氏との関係
 4 謎の洞窟壁画
 洞窟と古代の北海道/洞窟壁画の発見/定説化する大陸起源/壁画をみなおす/古墳壁画との一致/海民の古墳/なぜ余市周辺なのか/なぜ島喚と海辺なのか

第三章 神話と伝説 残存する縄文の世界観
 1 共通するモティーフ
 周縁の人びとの世界観/川をのぼるワニ/ワニとはなにか/エビスとワニ/アイヌ伝説との一致/海と山の神の往還/なぜ山頂に海があるのか
 2 他界の伝説
 なぜ会うことを拒否するのか/海民の他界観/他界の入口としての洞窟/南島と洞窟/具現化される他界/修験者との関係/洞窟と修験者/なぜ聖域をヤマとよぶのか/黄泉の国神話との関係/反転するモティーフ
 3 縄文神話とその変容
 縄文起源の神話/農耕民のなかの継承と断絶/変容のパターン/海の神と山の女神の婚姻/共通する海民の神話/『古事記』が伝わったのか
 4 伝播した海民伝説ーアイヌの日光感精・卵生神話
 渡来人の伝説/日本列島の日光感精説話と卵生説話/アイヌ神話とアメノヒホコ/なぜ二つの玉なのか/語られてきた異伝/海民としてのアメノヒホコ/九州の海民とアメノヒホコ/神話・伝説の歴史性

第四章 縄文の思想ー農耕民化・商品経済・国家のなかの縄文
 1 呪能と芸能
 縄文の思想/狩猟する海民/卜部・亀卜・卜骨/海民と占い/動物の供犠/海民と山民の呪能と芸能/王権と縄文/「蕃人」の思想としての「まれびと」/獣に仮装する「まれびと」/非定住民と芸能/古代アイヌの呪術/「化け物」としての縄文/現代に生きる呪術的世界/自然現象を操る
 2 贈与と閉じた系
 なぜ神隈を売買するのか/贈与への執着/無縁化の装置/申間的なるもの/イオマンテの機能/矛盾と葛藤/隔離的な婚姻関係/閉じた系
 3 平等と暴力
 神のまえの平等/共産主義者の村/排除される野心/自由と自治/海賊と傭兵/「余りにも古い精神の遺存」
 4 動的な生へ
 生の肯定/同化と排他の「あわい」/喧騒の思想/海民史観から縄文史観へ/平地人を戦傑せしめよ

おわりに
引用文献

本の紹介ー日本の戦争:歴史認識と戦争責任2019年04月13日

 
山田朗/著『日本の戦争:歴史認識と戦争責任』新日本出版社 (2017/12)
 
 著者は近代日本史学者で明治大学教授。岩波書店や吉川弘文館のような学術的な出版社からの学術的な本の他に、一般読者を対象とした啓蒙的な本も多い。著者は、リベラルな歴史学者で、右翼系のヘイトスピーチなど歴史修正主義に批判的である。

 本書は日本の近代史に対する歴史認識を扱ったものであり、テーマは堅苦しいが、本書はかなり平易に書かれており、歴史知識が少ない人にも容易に読める内容になっている。


まえがき

第一部 近代日本はどんな戦争をおこなったのか

第一章 日露戦争とはどういう戦争だったのか
 一 近代日本の国家戦略-日露戦争への道
 1 明治維新以来の日本の対外戦略
 2 北進=日英同盟か、南進=日露協商か
 3 日露の膨張戦略 利益線=勢力範囲の拡大をめぐる衝突
 4 日本の軍事的課題とそれへの対応
 二 日露戦争の実像と世界史的意味
 1 日英同盟の役割日露戦争遂行の大前提
 2 日露戦争が世界政治に与えた影響
 三 日本陸軍の戦略口成功と失敗
 1 日本陸軍の基本戦略
 2 日本陸軍の戦略の成功(戦争前半)
 3 日本陸軍の戦略の失敗(戦争後半)
 四 日本海軍の戦略の成功と失敗脅
 1 日本海軍の基本戦略脅
 2 日本海軍の戦略の失敗(戦争前半)
 3 日本海軍の戦略の成功(戦争後半)
 五 『坂の上の雲』の歴史認識の危うさの
 1 歴史上の人物になりきる司馬遼太郎の技法の
 2 司馬史観の問題点H明治と昭和の連続性を無視する歴史認識

第二章 満州事変と「満州国」の実態
 一 「満州国」における「五族協和」の理念と実態面
 1 「満州国」の建国
 2 「満州国」の建国の理念としての「五族協和」
 3 憲法.国籍法がなかった「満州国」
 4 満州国協和会と「五族協和」の結末
 二 反満抗日運動と「討伐」の実態
 1 反満抗日運動の諸相
 2 「満州国」側の「討伐」部隊
 3 「満州国」軍警による「討伐」

第三章 日中戦争と南京事件の真実
 一 アジア太平洋戦争の原因・重要な構成要素としての日中戦争
 1 アジア太平洋戦争への道のり
 2 世界戦争への第一段階 山東出兵・満州事変
 3 世界戦争への第二段階一華北分離・日中戦争
 4 日中戦争泥沼化の二つの要因
 5 世界戦争への第三段階 日独伊三国同盟
 二 日中戦争の性格を浮き彫りにする南京事件の真実
 1 南京大虐殺をめぐる争点
 2 その時、南京にいた日本兵は何を見たのか
 3 虐殺は組織的におこなわれていた
 4 南京事件は慰安婦問題の原点でもある

第二部 今、問われる歴史認識と戦争責任

第四章 真珠湾攻撃とは何であったのか
 一 真珠湾攻撃への道
 二 一九四一年一二月八日における日本軍の軍事行動
 1 軍事行動の始まり
 2 一二月八日の軍事的意味

第五章 戦争責任論の現在と今後の課題
 一 戦争責任論の変遷
 1 誰の何に対する責任か
 2 〈記憶〉の時代:戦争体験者から非体験者へ
 二 歴史修正主義の台頭認
 1 戦争責任論の展開と歴史修正主義台頭の関係性
 2 政府答弁書による歴史修正主義的言説の権威化
 三 戦争責任論の課題一戦争の〈記憶〉の希薄化のなかで
 1 戦争の〈記憶〉の希薄化
 2 戦争の〈表の記憶〉と〈裏の記憶〉
 3 戦争責任論の課題一〈裏の記憶〉継承の契機として

第六章 「植民地支配と侵略」の計画性と国家の責任
 1 「日本だけではない」「良いこともした」という言説の問題点
 2 「アジアの独立に役立った」という言説の問題点 
 3 「領土的野心なし」という言説の問題点 

第三部 歴史修正主義をどのように克服するか

第七章 日本は過去とどう向き合ってきたか
 一 靖国神社問題と歴史認識吻
 1 靖国神社とは
 2 英霊サイクルの要としての靖国神社
 3 慰霊の問題が、どうして国際問題になってしまうのか
 二 日本人にとって〈歴史認識〉はなぜ大切なのか

第八章 政界における歴史修正主義
 一 安倍晋三首相の歴史認識と「教育再生
 1 「国に対して誇りをもつ」ための歴史教育
 2 河野・村山・宮沢談話排除のうごき
 二 「河野談話」排除のうごきと二〇〇七年政府答弁書の問題点
 1 「河野談話」とは
 2 慰安婦=合法」論の問題点
 三 「村山談話」排除のうごき
 1 戦後七〇年「安倍談話」にむけて
 2 安倍首相の「侵略」認識⑳
 四「宮沢談話」(近隣諸国条項)の撤廃と靖国問題
 1 近隣諸国条項撤廃へのうごき
 2 靖国問題との連動
 五「安倍談話」の歴史認識 その特徴と問題点
 六 戦後を否定する日本会議の虚構
 1 明治時代への郷愁
 2 偽造された「伝統」
 3 米国に助けられた右派

あとがき
日本の戦争略年表
初出一覧

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