東京科学大学(旧東工大)の数学入試問題 ― 2025年03月10日
問5
(1) 関数 f(t)=(t2-1)/t3 (t≠0) の増減を調べグラフの概形をかけ。
(2) 実数x,y,zが条件
x<y<z xyz≠0
x3y2-x3=x2y3-y3 y3z2-y3=y2z3-z3
<解説>
(1) は普通に易しい問題。この大学を受験する生徒ならば、できたと思う。
(2) は問題の式が何を言っているのか、にわかにはわからないだろうが(1)がヒントになっているに違いないと思えば易しい。
<解答>
(1) は易しいので割愛 (最初の図が答です)
(2) 要するに、x<y<z、xyz≠0でf(x)=f(y)=f(z)が成り立つxの範囲を求めるという問題。
(1)の解答の図から、x<-√3 -1<x<-√3/2
東京科学大学(旧東工大)の数学入試問題 ― 2025年03月09日
問4
<問題>
数列{an}を a1=1 a2=1 an+2=an+1+an {n=1,2,3,…} により定め、
数列{bn}を tan bn =1/an により定める。ただし、0<bn<π/2 とする。
(1) n≧2に対して、an+1an-1-an2 を求めよ。
(2) m≧1(mは整数)に対して、a2m・tan(b2m+1+b2m+2) を求めよ。
(3) 無限級数 Σb2m+1 (mの和は0~∞) を求めよ。
<解説>
東工大は東京医科歯科大と合併して、東京科学大学になった。しかし、入試は、旧東工大と、旧医科歯科とは別の問題。旧医科歯科の問題は(1)が(2)のヒントになっていて、(2)が(3)のヒントになっていることが多かった。旧東工大は、必ずしもそう言うことではなかったが、この問題は前の問題が次の問題のヒントになっている。ヒントがなかったらできっこないけれど、この問題は、順に解けば易しい。
<解答>
題意からanは次式となる。
an+1=αpn+βqn
ただし、p+q=1 pq=-1 α+β=1 αp+βq=1
すなわち、α=(1-q)/(p-q) β=(p-1)/(p-q)
(1) an+1an-1-an2=αβ(pq)n-2{(p+q)2-4pq}
ここで、αβ=1/5であるから、結局、
an+1an-1-an2=-1 (nは偶数)
an+1an-1-an2=1 (nは奇数)
(2) a2m・tan(b2m+1+b2m+2)= a2m・(tan b2m+1+tanb2m+2)/(1- tan b2m+1・tanb2m+2)
=a2m・(1/ a2m+1 +1/ a2m+2) / {1-1/ a2m+1 ・1/ a2m+2}=1
ここで、a2m+2a2m-a2m+12=1 a2m+2= a2m+1+ a2mを使った
(3) (2)より、tan(b2m+1+b2m+2)=tan(b2m)で、0<bn<π/2であるから、
b2m+1+b2m+2=b2mである。すなわち、b2m+1=b2m- b2m+2。
よって、Σb2m+1 (mの和は1~M-1)=b2-b2Mである。
明らかに、an→∞であるから、bn→0
Σb2m+1 (mの和は1~∞)= b2=π/4
Σb2m+1 (mの和は0~∞)=b1+ b2=π/2
大学入試の数学 京都大学理系問6 ― 2025年03月08日
<問題>
Nは2以上の整数とする。1枚の硬貨を続けてn回投げる。このとき、k回目(1≦k≦n)に表が出たらXk=1、裏が出たらXk=0として、X1,X2,…,Xnを定める。
Yn=ΣXk-1Xk (和はk=2からk=nまでとする)
とするとき、Ynが奇数である確率pnを求めよ。
<解説>
京都大学理系の問題らしく、簡単ではない。思考力と、勉強量の両方がないと、正解にたどりつかないだろう。なお、どちらかというと、勉強量よりも思考力が問われる問題。
Ynの値とXn+1の値がわかったとしても、Yn+1はわからないので、pnの漸化式は、すぐには立てられない。ここでは、Xnの値とともに、漸化式を立てる。
<解答>
以下のように定める。
an:Ynが奇数でXn=0の確率
bn:Ynが偶数でXn=0の確率
cn:Ynが奇数でXn=1の確率
dn:Ynが偶数でXn=1の確率
この時、以下の漸化式が成り立つ
an+1=(an+cn)/2
bn+1=(bn+dn)/2
cn+1=(an+dn)/2
dn+1=(bn+cn)/2
a2=0 b2=1/2 c2=1/4 d2=1/4
a3=1/8 b3=3/8 c3=1/8 d3=3/8
an+bn=1/2 cn+dn=1/2 であるから、
an+1=(an+cn)/2
an+1=(1/2)an-1+1/8
この漸化式をa2=0 a3=1/8のもとで解くと、次式となる。
an=(1/4)+αpn+βqnただし、p=1/√2 q=-1/√2
α=-(2+√2)/8 β=(-2+√2)/8
ここで、pn=an+cn=2an+1であるから、
pn=(1/2)+2αpn+1+2βqn+1
見やすいように、nが偶数のときと奇数のときに分けて書く。
・nが偶数のときan=(1/2)- pn+2
・nが奇数のときan=(1/2)-pn+1ただし、p=1/√2
東大 理系 の数学入試問題 ― 2025年03月02日
解説
(1)が(2)のヒントであることは容易にわかるだろう。つまり、(2)は挟み撃ちの原理を使い、上の評価はy=x-1を使うということ。
ところで、logは上に凸で、(1,0)でy=x-1に接するのだから、 (1)は自明。しかし、自明では解答にならないので、点を引かれないためにはf(x)=x-1-log(x)とおいて微分して増減を調べる解答にした方が無難だろう。
(2)で下から評価する方法は、いろいろあるだろうが、ここでは、(1,0)をとおり、傾きが1よりもわずかに小さい直線で評価する。
この問題は、論考のほかに、計算力も必要で、他大学、特に私立大学の問題に比べれば、易しい問題とは言えない。しかし、20年ほど前の東大の問題に比べると、易しい部類になる。この程度の問題で苦労した生徒が、東大理系に入ってくるとしたら、日本の将来は終わっている気がする。
解答 (1) f(x)=x-1-log(x)とおいて、増減を調べればよいので、解答は割愛する。
(2)
東大 理系 の数学入試問題 ― 2025年02月27日
注)累乗を ^ と書きます。
東京大学 理系 第4問
この問いでは、0以上の整数の2乗となる数を平方数と呼ぶ。aを正の整数として、
fa(x)= x^2+x-a とおく。
(1) nを正の整数とする。fa(n)が平方数ならば、n≦aであることを示せ。
(2) fa(n)が平方数となる正の整数nの個数をNaとおく。次の条件(i)(ii)が同値であることを示せ。
(i) Na=1である
(ii) 4a+1は素数である。
解説
前半の(1)は、整数の問題の標準的な解き方なので、普通に問題集に取り組んでいれば、容易だったと思う。後半の(2)は問題文がまだらっこしい。私の解答は、正解にたどり着こうとの意思で、いきなり4a+1を評価した。なんとなく、素直ではなくて気に入らない。ひょっとすると、この問題は生成AIが正解を出しにくいように作ったのかもしれない。
解答例
(1)
n>aとする。このとき、n^2+n-a>n^2であるから、n^2+n-aが平方数ならば次式が成り立つ。
n^2+n-a≧(n+1)^2
これは、n>a>0に反する。よって、n>aではない。
(2)
最初に、n=aのとき、n^2+n-aは明らかに平方数である。このため、Na≧1が成り立つ。
ここで、Na>1とする。すなわち、n≠a で、かつ、n^2+n-aが平方数となるnが存在する。
(1)より、n<aである。
このとき、次式が成り立つ0以上の整数mが存在する。
n^2+n-a=m^2 なお、n<a であるから、n>m である。
すなわち、次式が成り立つ。
4a+1= 4n^2+4n-4m^2+1=(2n-2m+1)(2n+2m+1)
ところで、n>mであるから、この数は素数ではない。
すなわち(i)でないときは(ii)でないことが示された。
一方、4a+1が素数でないとする。
このとき、4a+1は奇数であるから、4a+1は1でない、2つの正の奇数の積として書くことができる。
すなわち 4a+1=(2p+1)(2q+1) p,qは正の整数でp≦qとする。
4a=4pq+2(p+q)であるから、p+qは偶数である。
ここで、m=(q-p)/2、n=(q+p)/2とおくと、mは0以上の整数で、n^2+n-a=m^2が成り立つ。
すなわち(ii)でないときは(i)でないことが示された。
本の紹介-学力喪失 ― 2025年01月30日
今井むつみ/著『学力喪失 認知科学による回復への道筋』(2024/9)岩波新書 新赤版 2034
横書きの本。
算数ができない子供、特に数直線の概念や、分数が理解できでいない、あるいは単位付き数が理解できていない原因を認知科学の立場で解明し、指導方法を提案している。理解できていない子供の中では、どこで躓いているのかは、子供によって異なる。これを解明するテストをいろいろと提示する。
算数の文章題ができない子供は、大きく分けて、算数ができない子供と、問題文が理解できない子供がいる。本書は、算数ができない子供に寄った対策で、問題文が理解できない子供対策は薄いように感じる。算数教育に特化したものならば、これもいいだろう。しかし、分数概念が理解できないことよりも、2~3行の文章が正しく理解できない方が、実社会では不都合が多いだろう。最近のネット右翼には、文書を理解する能力に欠けるため、他人の文を勝手解釈して、誤った言説を振りかざす者も多い。このような社会の弊害を少なくするためにも、2~3行の文章が正しく理解できる能力を養ってほしい。
本の紹介-学校に入り込むニセ科学 ― 2023年03月17日

左巻健男/著『学校に入り込むニセ科学』平凡社新書 (2019/11)
著者は理科教諭経験のある教育学者で法政大学教授などを務める。
本書では、最初に、「水伝(水にやさしい言葉を掛けると結晶が美しくなる)」「EM菌」のようなニセ科学が、一部の学校で、事実であると教えられていた実態を説明する。こんな、噴飯物を信じる低能教師の存在には驚かされる。
また、「親学」をはじめとする、脳科学のインチキ理解や健康・栄養に対するインチキ理解によるトンデモ説と、それが真実のように教えるている教育現場があることを説明する。「親学」とは新興宗教「成長の家」系の学者が唱えた説で、自民党安倍派や維新によって信奉された。
京都大学 理系 数学入試問題 ― 2023年03月08日
京都大学の数学入試問題は一癖あるものが多い。受験勉強に取り組み、かつセンスがないとできないような問題が出題される。今年の、理系問6もそんな感じがする問題。
問6
(1) cos3θ、cos4θをcosθの式で表せ。
(2) pを3以上の素数とする。cosθ=1/pのとき、θ/πは無理数か。
方針:(1)が(2)のヒントになっていることは容易にわかるだろうけれど、私には、どうヒントなのかわからなかった。そこで、cos5θとsin3θ~ sin5θまで書いてみたら、ようやく解答方針がわかってきた。 (1)のヒントだけで方針を立てろと言われたらつらい。
cos2θ=2cos2θ-1
cos3θ=4cos3θ-3cosθ
cos4θ=8cos4θ-8cos2θ+1
cos5θ=16cos5θ-20cos3θ+5cosθ
sin2θ=2cosθsinθ
sin3θ=(4cos2θ-1) sinθ
sin4θ=(8cos3θ―4cosθ) sinθ
sin5θ=(16cos4θ-12cos2θ+1) sinθ
(2)の解答
最初に、n≧2のとき、cos(nθ)、sin(nθ)は以下のように書き表せることを数学的帰納法によって示す。
cos(nθ)=2n-1cosnθ+fn-2(cosθ)
sin(nθ)={2n-1cosn-1θ+gn-2(cosθ)} sinθ
ただし、fn-2(x)、gn-2(x) はn-2次以下の整式
(示し方は簡単なので割愛)
cosθ=1/p θ=(m/n)π (pは3以上の素数、m、nは整数)とする。
このとき、cos(nθ)は明らかに整数であり、cos(nθ)=2n-1cosnθ+fn-2(cosθ)であるから、
両辺にpn-1を掛けると、fn-2(cosθ)×pn-1は整数であるから、2n-1/p は整数となる。
これは、pが3以上の素数であることに矛盾する。
すなわち、cosθ=1/pのとき、θ/πは無理数です。
東大の数学入試問題 ― 2023年03月07日
例年、主要大学の数学入試問題を見ているのだけれど、今年はやる気がしない。そうは言っても、頭の体操に、東大理系の数学入試問題を一部解いてみた。
問題5
整式
f(x)=(x-1)2(x-2) を考える。
(1) g(x)を実数係数とする整式とし、g(x)をf(x)で割った余りをr(x)とおく。{g(x)}7をf(x)で割った余りと、{r(x)}7を f(x)で割った余りが等しいことを示せ。
(2) a、bを実数とし、h(x)=x2+ax+bとおく。{h(x)}7をf(x)で割った余りをh1(x)とおき、{h1(x)}7をf(x)で割った余りをh2(x)とおく。h2(x)がh(x)と等しくなるようなa,bの組を全て求めよ。
解答と解説
東大らしい問題だ。それほど難しくはないけれど、かといって易しくもない。手際よく進めないと時間内には正解にたどり着けないだろう。日頃の受験勉強がものをいう、そんな問題だ。
(1) は自明なので割愛。
(2) の解答
この問題はh1を評価して、次にh2を評価してもよいが、(1)がヒントになっているのだと思えば、{h(y)}49を評価した方が楽になるような気がするだろう。また、y=x-1と置き換えると、若干答案を書く量が減るが、本質的ではない。
<(2)の解答>
(1) より、h49を多項式fで割った余りがh2である。
y=x-1とする。すなわち、f(y)=y2(y-1)
ここで、h(y)=y(y-1)+By+Cとする
{h(y)}49=P(y)y2(y-1)+49C48y(y-1)+(By+C)49と書ける。ただしP(y)はyの多項式。
(By+C)49=y2(y-1)Q(y)+μy(y-1)+βy+γ とおく。ただしQ(y)はyの多項式。
y=0を代入して、γ=C49
y=1を代入して、β+γ=(B+C)49
(By+C)49-γ=y2(y-1)Q(y)+μy(y-1)+βyの両辺をyで割って、y=0を代入すると次式を得る。
49BC48=-μ+β
以上より、
h2(y)=αy(y-1)+βy+γ
ただし、α=(B+C)49-C49-48BC48+48C48
β=(By+C)49-C49γ=C49
α=1, β=B, γ=C となる条件を求める。
γ=C49 であるから、C=-1,0,1のいずれかである。
C=1で、q=Bとすると、
(B+1)49-1=Bが成り立つので、B=-2,-1,0のいずれかである。
C=0で、q=Bとすると、
B49=Bが成り立つので、B=1,-1,0のいずれかである。
C=-1で、q=Bとすると、
(B-1)49+1=Bが成り立つので、B=2,1,0のいずれかである。
以上、解の候補として、B,Cの組が9通り見つかった。この中で、α=1となるものが解である。
このとき、(B+C)49=B+C C49=C に注意して、9通り試すと、
B=1,C=0およびB=1,C=-1 が解であることがわかる。
すなわち、h(x)=x2-2x+1 h(x)=x2-2x