パール富士2023年08月04日

2023年8月2日4時30分ごろ

本の紹介-創価学会2023年08月07日

 
櫻井義秀、猪瀬優理、粟津賢太/著『創価学会: 政治宗教の成功と隘路』法蔵館 (2023/4)
 
 本書は、宗教社会学の立場で創価学界を研究した専門書で参考文献なども詳しい。創価学会と社会の関係を論じたものであって、宗教上の教義などを扱ったものではない。3人の著者が6章を執筆している。各著者の著述に、深い相互関連はない。
 第1章で宗教社会学の概要と創価学会の簡単な歴史を示し、第2章で創価学会が拡大したきっかけとなった小樽問答・夕張事件を説明する。両事件は1950年代に北海道で起こったもので、創価学会の拡大につながる一方で、創価学会の独善性や創価学会が恐ろし新興宗教であることを世に知らしめることとなった。1960年代終わりから70年代初めにかけて、創価学会・公明党は出版妨害事件を起こし、それ以降、路線を変更し、独善性も薄れた。しかし、過去に池田大作が起こした小樽問答などを知っておくことは、現在の創価学会を理解する上で、忘れてはならないことだろう。
 第3章から第5章は創価学会員のアンケート調査などを使って、選挙活動・学会活動など、現在の学会員の意識を明らかにしている。
 かつての日本は、男は外で賃労働、女は家事との意識が多かった。そうした中で、婦人部員が家事を一部犠牲にすることで創価学会活動を担っていた。女性の社会進出が当たり前になってきた昨今、この点も曲がり角に来ているようだ。また、かつて野党として平和主義を唱えていた公明党が、与党になって久しい。こうした中、葛藤を抱える学会員もいるようだ。ただし、それが、公明党の得票にどれだけ影響しているのだろうか。
 第6章は「成長=成功神話」の章題で、最初に日本の政治経済一般の問題を記載した後、創価学界の世俗化問題や、創価学会の社会との関わり合いの歴史を踏まえて、創価学会と公明党との関係を展望しているようだ。

本の紹介―問題はロシアより、むしろアメリカだ2023年08月15日

  
エマニュエル・トッド、池上彰/著『問題はロシアより、むしろアメリカだ 第三次世界大戦に突入した世界』 朝日新書 (2023/6)
 
池上彰が質問してエマニュエルトッドが答える形での対談。池上は話の進行が上手なので、本は読みやすい。

 ウクライナ戦争では、ゼレンスキーを一方的に正義として、プーチンを一方的に悪とする論調が、西側世界で支配的である。本書の中で、エマニュエルトッドはこのような風潮を批判して、事実を正しく理解することを主張し、池上もその考えに同調している。ウクライナ戦争が、アメリカの世界戦略の中で生じたことは明らかなので、著者の見解は正しく世界を理解しようとする人のは重要だ。
 本書では、ウクライナ戦争にとどまらず、アメリカの没落や、西欧・アジアの家族の違いの言及もある。
  
 エマニュエルトッドは米国に対して次のように言っている。
 「アメリカは'悪'でもないけれど、いわゆる'完全な善'でもなくなっているということは確かだと思いますし、イラク戦争は思い返すと本当にひどかった戦争ですが、今はそれがヨーロッパで行われていると言えるわけです。(P125)」
 イラク戦争は、イラクに核兵器があるとアメリカが嘘を言って始めた戦争で、ウクライナ戦争は、ゼレンスキーによるドンバス地域での虐殺・人権弾圧をアメリカが推進したことにより始まった戦争なので、両者は類似点がある。イラク戦争で、多数のイラク人を殺害することに成功したアメリカは、その後石油利権を手にした。ウクライナ戦争では、アメリカがウクライナの穀物利権を手に入れられる可能性は高くなさそうなので、その点では類似していない。
  
ウクライナ戦争はいつになったら終結するのだろうか。この件について、かなり長引くと二人は予想している。
 「池上:私は、このウクライナ戦争はこの先10年は続く「10年戦争」になると言っています。
 トッド:私は5年だと思いますね。人口動態で見ると、ロシアの人口が最も減り始めるのが5年後であること、また第1次世界大戦、第2次肚界大戦ともに5年ほどで終わったということもあります。
 池上:おそらく私が推測するに、プーチン大統領の頭のなかは第2次世界大戦中のi941年6月から45年5月にかけて戦った「独ソ戦」があると思います。このとき、ドイツの侵略を受けてまさに現在のウクライナの土地で大戦車戦が展開され、4年かかってドイッを追い出した。だから、少なくとも4年ぐらいは続くだろう、くらいのことはプーチン大統領は考えているのではないかなと思っています。(P176)」

本の紹介-日本解体論2023年08月24日

 
白井聡、望月衣塑子/著『日本解体論』(2022/8) 朝日新書
 
 東京新聞記者の望月と政治学者の白井の対談。
 二人はともに、日本社会の劣化を嘆いている人なので、対談の息はぴったり合っていて、読みやすい。
 本書の内容は1章から5章までの大半が、日本の政治・日本社会・日本のマスコミ・日本の学界などが御用機関と化している状況を指摘するもの。
 第6章はロシアウクライナ戦争に関する内容でだがページ数も少ない。著者の白井はソ連崩壊期にロシアに滞在していたようだが、彼の知識は古すぎに感じる。望月はロシア問題には詳しくないようだ。

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