東工大の数学入試問題2022年03月06日

 東工大の問題は、難しすぎず、易しすぎず、適切なレベルだ。論考・論証が必要な問題や、計算力が必要な問題などが出題されるが、ヒラメキが必要な問題は少ない。この点では、東大と傾向的には似ており、京・名・阪大とは異なる。このため、駿台模試で、いつもそれなりの成績をとっていれば、本番で失敗することは少ないだろう。
 今年の問1、問2は論考・論証が必要とされる問題で、論理一貫した解答を作成するのに苦労した受験生も多かったことと思う。
 
問1
a, b を実数とし,f(z) =z^2 +az+b とする。
a, b が |a|≦1 |b|≦1 を満たしながら動くとき,
f(z)=0 を満たす複素数 z がとりうる値の範囲を
複素数平面上に図示せよ。
 
考え方:
解が実数の場合と虚数の場合に分けて考える。
こういう、訳の分からない問題は、オーソドックスに解くしか方法はないだろう。ただし、この問題では何がオーソドックスなのか、人によって異なるので、解答方針もいろいろあるだろう。ここでは、解の公式を使って考える。
 
解答
(テキストエディーターで書きにくいので√をRと書きます。R(5)は√5の意味です。)
解の判別式をDと書く。D=a^2-4bである
  
①D≧0のとき、この時は2つの実数解を持つ。
2次方程式の解はa=-1,b=-1の時に最大値、{1+R(5)}/2 a=1,b=-1のときに、最小値 -{1+R(5)}/2 をとる。
一方、b=0のとき、x=-aは解であるから、|a|≦1の範囲をaが動くとき、解をαと書くと、-1≦α≦1 となる。
b=-1のとき、x=(-a±R(a*a+4))/2は解であるから、|a|≦1の範囲をaが動くとき、解をαと書くと、-{1+R(5)}/2≦α≦-1 1≦α≦{1+R(5)}/2 となる。
すなわち、実数解αが取る範囲は、-{1+R(5)}/2≦α≦{1+R(5)}/2 である。
 
②D<0のとき、すなわち、a^2<4b の時は2つの虚数解を持つ。このとき、bは正である。解の実部をx,解の虚部をyと書くと次式が成り立つ。
x=-a/2 y^2=b-(a/2)^2
よって、-2x=a、 x^2+y^2=b
すなわち、|2x|≦1   x^2+y^2≦1 (y≠0) が求める範囲。
 
結局、次の2つが求める領域である。
  -{1+R(5)}/2≦x≦{1+R(5)}/2,y=0
  |x|≦1/2、x^2+y^2≦1
図示は省略します
  
 
問2
正の整数a,b,cの最大公約数が1であるとき、以下の問の答えよ
(1)a+b+c、ab+bc+ca、abcの最大公約数は1であることを示せ。
(2)a+b+c、a^2+b^2+c^2、a^3+b^3+c^3の最大公約数となる正の整数を全て求めよ。
 
考え方:
(1)はやさしい。
(2)を解くにあたって、(1)がヒントになっていることは、推測できるだろう。
a^2+b^2+c^2=(a+b+c)^2-2(ab+bc+ca)
a^3+b^3+c^3=(a+b+c)^3-3(a+b+c)(ab+bc+ca) +3abc
と書くと、2と3が曲者であることが分かる。(1)と同じ議論をして、5以上の素数は約数でないことを最初に示す。ここまでくると、4や9も約数でないことが分かる。すると、最大公約数は1,2,3,6のどれかということになる。最大公約数が、1 2 3,6となるa,b,cの組を見つけるのはたやすい。
解答 
  
(1)
rは素数で、a+b+c、ab+bc+ca、abcの約数であるとする。
rは素数でabcがrの約数なのだから、a,b,cのどれかはrの倍数である。
同じことだからaはrの倍数であるとする。
ab+bc+ca=a(b+c)+bcがrの倍数で、aもrの倍数なのだから、bcはrの倍数である。
よって、b,cのどれかはrの倍数であるので、同じことだからbはrの倍数であるとする。
a+b+cがrの倍数であり、a,bがrの倍数なのだから、cはrの倍数である。
よって、rはa,b,cすべての約数である。このため、r=1
すなわち、a+b+c、ab+bc+ca、abcの最大公約数は1である。
 
(2)
以下の2つの恒等式を使う。(①式、②式とする)
a^2+b^2+c^2=(a+b+c)^2-2(ab+bc+ca) …① 式
a^3+b^3+c^3=(a+b+c)^3-3(a+b+c)(ab+bc+ca) +3abc …②式
 
正の整数 r が、a+b+c、a^2+b^2+c^2、a^3+b^3+c^3 の公約数であるとする。
  
rが5以上の素数であるとする。②式から、3abcはrの倍数なので、abcはrの倍数である。
同様に、①式から、ab+bc+caはrの倍数である。
これは、(1)の結論に矛盾するので、5以上の素数は a+b+c、 a^2+b^2+c^2、a^3+b^3+c^3 の公約数ではない。
  
次に、r=9とする。
②式より、abcは3の倍数である。
また、①式より、ab+bc+caは3の倍数である。
これは、(1)の結論に矛盾するので、9は a+b+c、a^2+b^2+c^2、a^3+b^3+c^3 の公約数ではない。
  
同様に、4は a+b+c、a^2+b^2+c^2、a^3+b^3+c^3 の公約数ではない。
  
以上より、a+b+c、a^2+b^2+c^2、a^3+b^3+c^3 の公約数である可能性がある数は1,2,3,6である。
(a,b,c)=(1,1,3),(1,1,2),(1,1,1),(1,1,4)とすると、それぞれ、最大公約数は、1,2,3,6となる。
  
以上より、求める値は1,2,3,6

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