九州大学 理系・数学入試問題2022年03月05日

旧帝大7+1の中で、九大は易しい方のはず。それなのに、今年の数学入試問題は、易しくない。北大・九大、どうした。
 
問題2
nを3以上の整数とする。β、αをことなる実数とする。
(1)次を満たす実数A,B,Cと整式Qが存在することを示せ。
x^n = (x-α)(x-β)^2Q+A(x-α)(x-β) + B(x-α) + C
(2)A,B,Cをα、β、nを使って表せ。
(3)nとαを固定した時、β→αとしたときの、Aの極値を求めよ。
 
コメント:
 これが東大の問題だったならば、普通の難易度だったかもしれない。でも、これ九大の問題ですよ。多くの受験生には、計算量も多くて、かなり難しかったのではないだろうか。
 
方針:
(1)は当たり前すぎて、どのように解答したらよいのか。『自明です』では答えにならないので、ここでは『解答の書き方に困った時は数学的帰納法』で答えを書いてみる。
(2)のうち、B,Cはxにα、βを代入すればよいが、Aはそうはゆかないので、ここでは漸化式を使って、もとめる。
 A(n)の数え間違いをしないように、n=2,3の時に正しいかどうかを検算するとよい。
 階差数列の求め方を知らないとこの手法は無理。
(3)は(2)の結果から求める方法と、漸化式から求める方法がある。(2)の結果から求める方法ではロピタルの定理を使うと楽。ここでは漸化式から求める方法にしました。
 
解答:
(1)数学的帰納法を使って、n≧1のとき、Q,A,B,Cが存在することを示す。ただし、Qは整式で、n≧3のときはn-3次整式、n≦2の時はQ=0。
n=1のとき、Q=0,A=0,B=1,C=αとすればよい。
x^n = Q(n)(x-α)(x-β)^2+A(n)(x-α)(x-β) + B(n)(x-α) + C(n) とする。このとき、
x^(n+1) = xQ(n)(x-α)(x-β)^2+xA(n)(x-α)(x-β) + xB(n)(x-α) + xC(n)
={xQ(n)+A(n)}(x-α)(x-β)^2 + {βA(n)+B(n)}(x-α)(x-β)+{βB(n)+C(n)}+αC(n)
よって、題意は証明された。
 
(2)(1)から、次のことが分かる。
A(n+1)=βA(n)+B(n)
B(n+1)=βB(n)+C(n)
C(n+1)=αC(n)
A(1)=0,B(1)=1,C(1)=α
 
以上より、C(n)=α^n
B(n)=Σβ^(k-1)C(n-k) (1≦k≦n-1で和をとる)
=Σβ^(k-1)α^(n-k) = (β^n-α^n)/(β-α)
注)B,Cを求めるのならば、x=α、βを代入した方が楽に求められる。 
A(n)=Σβ^(k-1)B(n-k) (1≦k≦n-1で和をとる) 
=nβ^(n-1)/(β-α) - (β^n-α^n)/(β-α)^2 
={n(β-α)β^(n-1) - β^n + α^n} / (β-α)^2
 
(3) A(n)={n(β-α)β^(n-1) - β^n + α^n} / (β-α)^2 において、β→αとしたときの極限を直接求めても良いのだが、A(n+1)=βA(n)+B(n)から求めることもできる。ここでは、漸化式から求めることとする。
n≧2とする。また、β→αのとき A(n)→a(n) とする。
a(2)=1である。
B(n)=Σβ^(k-1)α^(n-k) であるから、β→αのとき、B(n)→nα^(n-1)
よって、a(n+1)=αa(n)+nα^(n-1) が成り立つ。
すなわち、a(n)=(1/2)n(n-1)α^(n-2)
 
 
 
 
問題3
自然数n,mが次の①式を満たすときに、(1)(2)(3)を答えなさい
  ① n^4=1+210m^2  (累乗を^と書きます)
(1)(n^2-1)/2,(n^2+1)/2は互いに素な整数であることを示せ
(2)n^2-1 は168の倍数であることを示せ
(3) ①を満たすn.mの組を、一つ求めよ

コメント:
これが京大の問題だったならば、まあこんなものかと思うのですが、九大にしてはかなり難しい。
 
方針
(1)はやさしい。(2)も落ち着いて考えれば、それほど難しくないが、整数問題に慣れていないと無理だろう。(3)は四則演算が苦手だと、歯が立たない。
 
解答
 
(1)
nは明らかに奇数だから、n^2-1,n^2+1は偶数。よって、(n^2-1)/2,(n^2+1)/2は整数。
(n^2+1)/2=(n^2-1)/2+1だから、互いに素。
 
(2)
最初に、n^2-1が8の倍数であることを示す。
nは奇数だから n=2k+1 と書く。
このとき、n^2-1=4k(k+1)
k,k+1のどちらかは偶数なので、4k(k+1) は8の倍数。
よって、n^2-1は8の倍数である。
 
次に、n^2-1が3の倍数であることを示す。
①から、(n^2-1)(n^2+1)=210m^2 であるから、
n^2-1、n^2+1 のいずれかは3の倍数である。しかし、n^2+1が3の倍数になることはない。
よって、n^2-1 は3の倍数である。
 
同様にして、n^2-1 は7の倍数である。
 
結局、n^2-1 は 8*3*7=168 の倍数である。
 
(3)
n=41,m=116 は①を満たす。

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