セシウム牛2011年07月21日

牛肉のセシウム汚染は始めから予想されたこと。

 最近、牛肉がセシウムに汚染されていることが話題になっています。
 餌の藁が汚染されていたので、こうなることは予見できたはず。稲藁の汚染を避けるためには、稲藁を屋外に放置してはならないのだけれど、そうすると、今度は、露地野菜は食べられなくなってしまうし、子供が外で遊ぶこともできなくなってしまう。それでは、広い範囲で、退避しなくてはならず、そのためには経費がかかりすぎるので、現実問題として不可能でした。

 牛が汚染されると困るので、稲藁は外に出すな。子どもが汚染されても良いから、野菜は気にしないで食べろ、外で遊ばせろ。。。とは言えないでしょう。

 牛肉のセシウム濃度の基準値は500ベクレル/kgだそうで、この値を越えたので大騒ぎになっています。でも、たとえば、牛肉が1000ベクレル/kgならば、子どもだって、1000ベクレル/kgになっているかもしれない。解体して人肉を測定しないので、詳しいことは分かりませんが。

 1000ベクレル/kgの放射性セシウムの内部被曝を、外部被曝に換算すると、どの程度になるのか、計算してみます。

 Cs137は、半減期30年、0.512Mevでβ崩壊して、Ba137mになり、Ba137mは、半減期2.6分、0.662Mevでγ崩壊して、安定なBa137になる。生体がCsを取り込むと、代射により減少するので、Cs137の生体内での半減期は70日~120日程度とされている。 γ線はすべて生体に吸収されるわけではないけれど、最悪の事態を想定して、β線、γ線エネルギーがすべて生体に吸収されるものとする。また、セシウムの生体での半減期を90日(7.8E6sec)とする。

①Cs137の原子核一つの崩壊エネルギー 0.512Mev+0.662Mev=1.88E-13J
 すなわち、1ベクレルのCs137のエネルギー 1.88E-13J/s
②生体内でのCs137のエネルギーを I(t) とすると、
  I(t)=I0×exp(-t/α) 
  (ただし、α=半減期÷log2、I0は初期エネルギー) 
となるので、生体が受ける1ベクレルのエネルギーの積算は次式となる。
 E=∫I(t)dt=I0×α=1.88E-13×7.8E6÷log2=2.1E-6 J
  (人が生きる時間は90日よりも十分に長いとした。) 
③1000ベクレル/kgのエネルギー
 2.1E-6×1000=2.1E-3J/kg=2.1mGy=2.1mSv (2.1ミリシーベルト)

 以上の計算で、1000ベクレル/kgの放射性セシウムの内部被曝を、外部被曝に換算すると、2.1ミリシーベルトになることが分かります。(γ線の漏出を考えると、もう少し小さくなる。)

 政府は、福島の子供たちが、被曝する線量の許容値を年間20mSvとして、学校の校庭の線量の基準を3.8μSv/hとしました。これは、批判が強くて、福島の学校は校庭の土を入れ替えています。
 政府が考えた福島の子供の安全基準は年間20mSvなのに対して、セシウム1000Bq/kgが体内にあっても、一生で2.1mSvにしかならない。この程度の被曝は、許容の範囲内と考える人も多いでしょう。

 今回の牛肉汚染騒ぎは、「牛は汚染させてはならないけれど、福島の子供は少しぐらい汚染させてもかまわない」と、言えなかったことに、原因があるように思います。

 以上、計算間違いがあったらごめんなさい。


注意:一生で2.1mSvになるのは、体のすべてが1000Bq/kgの割合で汚染された場合であって、汚染牛肉を1kg食べた場合ではありません。汚染牛肉を自分の体重よりもたくさん食べた場合は、一生で2.1mSvに相当するかもしれない。

注意:内部被曝を外部被曝に換算する方法は吸収エネルギーを使いました。そうすることになっているのですが、本当に、これで放射能の危険性が同じと考えてよいのか、異論があります。一生で2.1mSvだからといって、外部被曝2.1mSvと同程度の被害と考えてよいものか?

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