本 -日本の海が盗まれる2019年10月03日

 
山田吉彦/著『日本の海が盗まれる』 文藝春秋 (2019/8)
 
 特に読むことを薦めはしない。
 新書本なので一般読者向け啓蒙書なのだろう。事前知識が大してなくても、読みやすく書かれている。
 
 本の内容は、日本近海に韓国・中国・北朝鮮が進出している事に警戒を主張するもの。このほか、北方領土問題に対する記述もある。何事も警戒するに越したことはないのだけれど、本書の内容は興味が持てるものではなかった。
 以前、中国漁船が大挙して尖閣周辺海域に出漁することがあった。本書の著者は、中国漁船が尖閣海域に出漁しているのは、中国政府が紛争を発生させるために漁民に金を払って漁をさせていると書いている。(『日本国境戦争』(2011.7)ソフトバンク新書 P30~31)
 その後、カワハギ漁が不漁になると、中国船は姿を消した。中国政府が紛争を発生させるために漁民に金を払って漁をさせた訳ではなさそうだ。本書でこの件についてどう書いているのかと思ったら、何も書かれていなかった。単に、著者の妄想で危機感を煽っただけだったのだろうか。本書にも、そんな面があるのかな。
 
 「危惧される北朝鮮からの難民渡航」の節で、北朝鮮から難民が大挙して押し寄せてきたときに対処のノウハウを日本は持っていないとしている。確かにその通りだろう。だから、北朝鮮から難民が生まれないようにしなくてはならないのに、そういう話はない。
 
 最終章で、北方領土に関して「北方四島を取り返すためには、計画的に住民社会、経済体制、自然環境などのひとつひとつに目を向け、日本化してゆく必要がある」としている。まあ、そうかもしれないけれど、現実は地元の根室の過疎化が進行していて、日本化どころではないだろう。日本の離島を見ると、対馬などは韓国化されつつあるのが実情だ。日本の周辺地域の過疎化が進んでいる中で、さらに外側を日本化する処方箋があるのだろうか。

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